続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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言葉無き者たちの怒り

100 〜記念〜 黒の英雄譚・剣豪の章

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 それは不撓な魂であった。

 何処で生まれ何処で生きてきたのか誰1人、その男の素性を知らなかった。

 時は世界がダークエルフとの戦いを終えてから暫く経った頃だった。

 戦いが終わってもダークエルフは世界中に大きな傷跡を残していた。
 “混沌とした時代”
 人々は、この時期の事をそう呼ぶ。

 荒んだ長い髪を1つに結び、腰に彼自身“カタナ”と呼ぶ武器をぶら下げた不思議な男。

 その男は突如、海に面した入り江の浜辺に姿を見せた。

 先に住んでいた者達は見知らぬ男に警戒し、共闘して襲うも軽々と伸されてしまった。

 男は自分を襲った者達に住む場所を借り受けたいと言った。

 てっきり出ていけと・・・戦いに負けて場所を奪われると思っていた先住の者達は、男の強さを前に頷くしかなかった。

 先住の者達から許可を得た男は1人の女を連れ帰った。
 妻だと紹介された女もまた人とは違う雰囲気を持っていた。

 何もない入り江を夫婦は何がそんなに気に入ったのか長い事棲みつく事になる。

 男はフラっと数日いなくなる事があった。
 その妻は文句も言わずに男の帰りを待つのだ。

 男は生活に困った者や身寄りのない子供を連れ帰っては妻に預け、暫く滞在したのちに再び何処かへ消えて行った。
 
 男が入り江に滞在している間。
 先住の者達は男に戦い方と賊に襲われた時の対処を学んだ。

 男は砦を設計し、住人達の逃げ道を用意した。

 男達は魚を獲る為に海に潜り、女達は魚を裁き、子供達は浜辺に流れ着く海藻や貝を拾った。

 いつの間にやら男を中心として入り江の浜辺の砦は一致団結し生きる為に協力し合うようになった。

 何処からか連れてこられた者は、砦の活気に最初は圧倒された。

 毎日決まった時間に人々は起き、拾ってきたお気に入りの棒を振る。
 海に潜ったり、砦作りをしたり、魚を捌いたりと、そこに生きる住人達は生き生きとしていた。
 
 男に連れて来られた者達は、奪われ続けてきた人生故に何をしたら良いのか分からない。

 余計な言葉を持たない口数の少ない男は、戸惑う者達に助言などしなかった。
 
 最初こそ動けずにいた者達は次第に自分も何処からか拾ってきた棒を振り始めた。
 魚獲りや魚を捌く作業に参加した。

 何も出来なかった者達が己の意志で働き始めるのを確認すると、男は再び姿を消し何処からか、また人を連れて帰ってくるのだ。

 男はある時、1人の若者を連れ帰ってきた。
 ウサギの獣人の子供を守るように警戒していた若者であったが、砦の住人達の姿に驚いていた。

 ウサギの獣人の子供は妻に預けられ、瞬く間に先住の子供達に打ち解けた。

 若者は安堵したのか、子供達と離れ他の者と同じように棒を振り始めた。

 強さを求めた若者は男にカタナの使い方を教えて欲しいと願ったが男は固くなに首を縦に振らなかった。

 無力な自分に葛藤する若者を住人達は見守っていた。
 無心に棒を振る若者は己が何をするべきなのか悩み続けた。

 その歳月は無駄ではなかった。
 男と若者の間で何があったのか分からない。
 
 ある日を境に、男は若者にカタナの修行をつけ始めた。

 他の者とは違い激しい修行を受ける若者は毎日の様に気絶する始末だ。

 そんな若者がのちに国を興す英雄になるとは、この時誰にも分からなかった。
 
 砦の住人達が分かっているのは、自分達に生きる方法を教えてくれた男こそが本当の意味の英雄であると言う事だ。

 何もない。何も持たない男であったが、男は全ての苦境に争った。

 その不撓の魂こそが絶対神に愛されたのだ。

 建国の英雄を助け、弱き者達の生きる場所を作った男。

 その名をジュウゾウと言う。

《黒の英雄譚・剣豪の章一文より》

 
 
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