続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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わからせと後始末

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「イオリさんっ!」

 ギルマスの部屋から出て階段を降りて来たイオリに1組の冒険者パーティーが駆け寄ってきた。

「こんにちわ。」

 買い物途中の主婦の様に穏やかなイオリに対して若き冒険者達は緊張した面持ちだった。

「今回は有難う御座いました!」
「「「有難う御座いました!」」」

 1人が頭を下げると残りの3人も頭を下げてくる。

「ん?
 俺、何かしました?」

 目の前の相手に心当たりのないイオリは考え込むように首を傾げた。

「あのっ!
 あの日、クラウン達に喧嘩売られて燻ってたの俺達ですっ!!」

 不名誉を声高に叫ぶ若き冒険者にイオリは思い出した様に頷いた。

「・・・あぁ。あの時の。」

「ご迷惑をお掛けしました!」
「「「すみませんでしたぁ!!」」」

「いやいや、謝られる事なんて1つもないんですけど・・・。」

 戸惑うイオリに助け舟を出したのは受付係のラーラだった。

「ゴンゴさん。
 イオリさんが困ってますよ。」

 ゴンゴと呼ばれるのがリーダーらしい。
 ラーラが謝罪を止めると、ゴンゴ達は困った様に眉を下げた。

「俺達、何も出来なくて・・・。」

「イオリさんにはギルドから報酬が出ますから大丈夫です。
 魔の森の問題解決はポーレットにとって最優先事項です。
 当然、関わって下さった冒険者の皆さんにはギルドが誠意を持って対応いたします。」

 ラーラの言葉にもゴンゴ達パーティーは顔色が暗い。

「俺達がフレイムディア如きの討伐依頼に失敗したから、皆んなに迷惑掛けて・・・。」

「ん?」

 ゴンゴの言葉から疑問を感じたイオリがラーラに視線を向けると、ラーラは困った顔で頬に手を当てた。

「事が事なだけに、今回の調査報告は正式に公表されていないんです。
 参加した冒険者には、まだ箝口令が出ていますが、いつまで持つかは分かりません。」

「あぁ・・・。」

 どうやら冒険者が意外とおしゃべりである事は共通認識らしい。

「ゴンゴさん。
 申し訳ありませんが、今ギルドとしては発表できない事も多いです。
 でも、今回の原因はゴンゴさん達にない事だけは確信を持ってお伝えできます。
 依頼失敗のペナルティが消されるかはギルマスの判断によりますが、何かしらの補填はされると思われます。
 どうか、それまでお待ち下さい。」

「・・・えっ?」

 驚くゴンゴであったが、ラーラの目力に圧倒されたのか最終的にはコクコクと頷いた。

「だから、俺に謝罪なんて無意味なんですよ。
 気にしないで下さい。
 あっ、でもフレイムディアを如きと侮っては駄目ですよ。
 小さな子猫にだって、ひっかかかれて血が出る事もあるでしょう?
 どんな生き物だって生存を掛けて必死なんです。
 魔物相手に大丈夫なんて事は1つだってないって事を覚えておいた方が良い。
 今回は大きな怪我にならなくて良かったですね。」

 優しく微笑むイオリにゴンゴと残りの3人も真剣な顔で頷いた。

「「「「はい。」」」」

「イオリさん。有難う御座います。」

 ラーラにまで御礼を言われてイオリは恥ずかしいのを誤魔化す様に肩に乗っていたゼンの頭を撫でた。

「で?ラーラさん。
 この惨状は?」

 周囲を見渡したイオリの言葉にラーラを含めゴンゴ達も苦笑するしかなかった。


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