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王都へ 〜王家領〜
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「失敗しただとっ!?」
ズタボロになりながら帰還した魔法使いの報告を聞いた男はギリっと歯を食いしばった。
「・・・まぁ、良い。
そんなに簡単な事ではないと思っていた。
私に疑いの目が向くまでに、これからも幾らでもチャンスはある。」
握り締めた手を置くソファーは最高級な作りで金糸模様が使われていた。
「面目もない・・・。」
魔法使いの男は神妙な顔で自分の失態を反省している様子を見せる。
スン スンスンスン スン
「おい・・・。
何か?匂わないか?」
「??
いや、私には分からないが?」
ソファーに座っていた男は顔を顰めた。
「間違いない。
何かの匂いが・・・腐臭がする。」
「野山を駆け巡っていたからな。
何処ぞで何かを拾って来たやもしれない。
しばし湯殿に入ってくる。」
「あぁ・・・。それが良い。」
魔法使いが部屋を出ると、男はソファーから立ち上がり、窓から見える王都マテオールの街並みに視線を向けた。
アースガイルは良い国だ。
事が露見すれば、己の安寧も崩れる事を男は知っていた。
男はこれから巻き起こるやもしれない台風の目に自分がいる事を理解していた。
足を踏み入れると決めた時の己の判断は正しかったのか・・・。
男は厳しい顔付きで窓を開けると新しい空気を部屋に入れた。
「・・・臭いな。」
_______
「終わったそうだ。」
アースガイル国・王都マテオール・王城の国王の執務室でポーレット公爵テオルドがポツリと言えば、集まった者達は安堵の表情をした。
彼が終わったと言っているのは、自分を襲ってくる者への対処の事であり、短い言葉には自軍に被害がない事も表されていた。
「本当に襲われたのね・・・。」
終始不満そうな顔をしていた妻オルガの言葉にテオルドもウンザリした顔で頷いた。
「何はともあれ味方に被害が出なくて良かった。」
そう言ったのは、今回の結婚式の主役の1人である第2王子のディービットだ。
隣に座していた婚約者のココ・リード伯爵令嬢を安心させる為に長い間、彼女の手を握り締めていた。
「これで、イオリの仕掛けた罠が発動すれば最終的に指示をした人間が分かるって事だね?」
もう1人の主役である王太子ギルバートがポーレット公爵家嫡男のニコライに顔を向けた。
「あぁ、その通りだ。
“デーゾルド”という魔力に反応して匂いを発する魔花の種を仕込む手筈になっている。」
ニコライが頷くと一同が顔を見合わせた。
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「いや、何で臭い匂いを撒き散らす罠を張るかなぁ~!
他に何か無かったの?
色が落ちない実をぶつけるとか、クシャミが止まらなくなる粉を振りまくとかさぁ。」
黙り込んでいた皆を代表してギルバートが天井を仰いだ。
「確かに・・・匂いがな・・・。
凄い臭いらしいんですよ。」
ヴァルトが頭を顔を顰めると、宰相グレン・ターナーが頭を抱えた。
「イオリちゃんらしいと言えばらしいわね。」
困った顔をしながら笑ったのは王妃シシリアだ。
そんな中、国王アルフレッドは神妙な顔で疑問を口にした。
「なぁ。
“デーゾルド”って遥か遥か昔の言葉だっていうけど、それにしたって“混乱を招く臭さ”って言葉はいつ使う言葉なの?
この言葉自体必要なの?
皆んな、どう思う?」
国王のどーでも良い疑問に皆が溜息を吐いたのは言うまでもない。
ズタボロになりながら帰還した魔法使いの報告を聞いた男はギリっと歯を食いしばった。
「・・・まぁ、良い。
そんなに簡単な事ではないと思っていた。
私に疑いの目が向くまでに、これからも幾らでもチャンスはある。」
握り締めた手を置くソファーは最高級な作りで金糸模様が使われていた。
「面目もない・・・。」
魔法使いの男は神妙な顔で自分の失態を反省している様子を見せる。
スン スンスンスン スン
「おい・・・。
何か?匂わないか?」
「??
いや、私には分からないが?」
ソファーに座っていた男は顔を顰めた。
「間違いない。
何かの匂いが・・・腐臭がする。」
「野山を駆け巡っていたからな。
何処ぞで何かを拾って来たやもしれない。
しばし湯殿に入ってくる。」
「あぁ・・・。それが良い。」
魔法使いが部屋を出ると、男はソファーから立ち上がり、窓から見える王都マテオールの街並みに視線を向けた。
アースガイルは良い国だ。
事が露見すれば、己の安寧も崩れる事を男は知っていた。
男はこれから巻き起こるやもしれない台風の目に自分がいる事を理解していた。
足を踏み入れると決めた時の己の判断は正しかったのか・・・。
男は厳しい顔付きで窓を開けると新しい空気を部屋に入れた。
「・・・臭いな。」
_______
「終わったそうだ。」
アースガイル国・王都マテオール・王城の国王の執務室でポーレット公爵テオルドがポツリと言えば、集まった者達は安堵の表情をした。
彼が終わったと言っているのは、自分を襲ってくる者への対処の事であり、短い言葉には自軍に被害がない事も表されていた。
「本当に襲われたのね・・・。」
終始不満そうな顔をしていた妻オルガの言葉にテオルドもウンザリした顔で頷いた。
「何はともあれ味方に被害が出なくて良かった。」
そう言ったのは、今回の結婚式の主役の1人である第2王子のディービットだ。
隣に座していた婚約者のココ・リード伯爵令嬢を安心させる為に長い間、彼女の手を握り締めていた。
「これで、イオリの仕掛けた罠が発動すれば最終的に指示をした人間が分かるって事だね?」
もう1人の主役である王太子ギルバートがポーレット公爵家嫡男のニコライに顔を向けた。
「あぁ、その通りだ。
“デーゾルド”という魔力に反応して匂いを発する魔花の種を仕込む手筈になっている。」
ニコライが頷くと一同が顔を見合わせた。
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「いや、何で臭い匂いを撒き散らす罠を張るかなぁ~!
他に何か無かったの?
色が落ちない実をぶつけるとか、クシャミが止まらなくなる粉を振りまくとかさぁ。」
黙り込んでいた皆を代表してギルバートが天井を仰いだ。
「確かに・・・匂いがな・・・。
凄い臭いらしいんですよ。」
ヴァルトが頭を顔を顰めると、宰相グレン・ターナーが頭を抱えた。
「イオリちゃんらしいと言えばらしいわね。」
困った顔をしながら笑ったのは王妃シシリアだ。
そんな中、国王アルフレッドは神妙な顔で疑問を口にした。
「なぁ。
“デーゾルド”って遥か遥か昔の言葉だっていうけど、それにしたって“混乱を招く臭さ”って言葉はいつ使う言葉なの?
この言葉自体必要なの?
皆んな、どう思う?」
国王のどーでも良い疑問に皆が溜息を吐いたのは言うまでもない。
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