続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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王都 〜再会〜

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 ポーレット公爵一家と騎士団が王都の市民達の歓声に迎えられていた頃。
 小さな馬車は一行から離れ、王都の街をゆっくりと馬車で進んでいた。

「凄い歓声だね。」
「ふふふ。今まで馬車は空だったのに。」

 スコルとパティは顔を見合わせると、イタズラが成功した時の様にクスクスと笑った。

「さすがナギだね。
 上手にやってくれだんだね。」

 王都入り直前で目覚めたイオリは嬉しそうに肩に載っていたゼンの頭を撫でる。

「予定通り、冒険者ギルドに向かうぞ。」

 ヒューゴが御者席から振り返れば、イオリと双子が親指を立てた。

 イオリにとって久しぶりの王都だ。
 周囲を見渡せた街並みに変わりはないようだ。

 ポーレットよりも大規模な街には多くの人が暮らし、国中からも人が集まっている。

 街が活気溢れる様子を見れば、国王アルフレッドの統治が結果を齎していた。

 ポーレット公爵一家の到着を見ようと今も走っている人々にイオリはクスッとした。

「俺の事を人たらしだか何だか言うけれど、テオさんも大概に人たらしだと思うんだけど。」

 思わず口に出た感想に双子やヒューゴは肩を震わせて笑った。

「確かにな。
 王都を離れて随分経つのに、今もあんなに人気なんだ。
 現役で王子をされていた時代なんて、アルフレッド様と人気を二分したと聞いた事がある。」

 ヒューゴがそう言えば、驚きながらパティが身を乗り出した。

「えっ?だって、その時にはオルガちゃんと婚約してたんじゃないの?」

「だからだよ。
 幼くして婚約したオルガ夫人を大層大切にされている姿に多くの淑女や令嬢達が憧れ、自分に重ねたんだそうだ。」

「自分のものにならないのに、ご苦労な事だね。」

 スコルが呆れたように言うとヒューゴは苦笑した。

「まぁな。
 現に王弟の妃の座を狙って御2人の結婚を阻止しようとした家もいた。
 勿論、テオルド様もお怒りになったが、何よりも先王フェラーデ様の逆鱗に触れたそうだ。」

 ヒューゴはかつてアースガイルの社交界で巻き起こった騒動を話した。

「フェラーデ様って、確かアルとテオのパパ?」

 興味が出てきたのかスコルまでヒューゴに纏わりついて続きを急かした。

「そうだ。
 俺も聞いた事があるだけだが、当時は相当話題なった事件らしい。
 オルガ様を気に入ってテオルド様の婚約者に決めたのは先王だ。
 国と息子を想って考え抜いた自分の決定を、何処ぞの貴族の欲望に汚されて激怒したって。」

「「おぉぉ。」」

 双子は何をそんなに感動する事があるのか、手をパチパチと叩いた。

「その貴族や、当事者の令嬢はどうなったんですか?」

 イオリが聞けばヒューゴは頭を掻いた。

「う~ん。
 何かしらの罰は与えられたのだうが、どうだったかな。」

 王都の市民の歓声を聞きながら、昔の話を聞いたイオリは「やっぱり貴族は面倒だな。」と王城を見上げた。

 ゆっくりと揺られていた馬車は冒険者ギルドの大きな扉の前で停まった。

 

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