続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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王都 〜再会〜

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 この世界に米酒が誕生した。

 何よりも喜んだのはイオリであり、その喜び様に周囲の者達も同じように喜んだものだった。

 米酒が出来てからは話が早かった。
 
 バートがイオリから米酒を蒸留したら焼酎が出来ると聞けば、その原理を伝え聞いたアンティティラの職人達が動き出した。
 口頭での説明だけで想像を膨らまし、一気に蒸留機を作り出してしまったのだ。

 この仕事の速さにはイオリも驚く事になったが、アンティティのグラトニー商会を預かる、アーベルの長女でありロスの姉であるアンナによれば、アンティティラの職人達の多くが酒好きのドワーフである為、酒に関しての探究心は人のそれとは違うらしい。
                                                       
 バートが依頼した工房に限らず、その他の多くの工房が蒸留機の製作に協力を申し出て、本来の依頼を疎かにしたほどだそうだ。

 宝石の職人である自身の夫キーリまで蒸留機の製作に混ざり込んでいたらしく、流石にアンナも呆れ顔だったとか。

 そんな訳で、アンティティラの職人が一丸となって作り上げた蒸留機により、焼酎の製造が可能になり、その勢いで味醂の製造にまで着手した。

 加えて、蒸留に関して言えば、イオリが提案しなくとも、いつの間にやらアンティティラの職人達はワインでも試したらしく、早くもブランデーの原型が誕生したらしい。

 熟成させれば、より芳醇な酒が完成すると聞き付けたアンティティラのドワーフ達だけでなく大人達は、嬉々として大量に仕込み始めた。

 1番望んでいたイオリはと言うと飲酒を好まず、あくまでも料理に活用したい欲が強い。

 しかし、どこぞの武防具屋をはじめとして酒好き共の渇望は留まるところを知らなかった。

 日々、良質になっていく酒事情にイオリは笑うしかなかった。

 イオリの故郷で米酒に使われる言葉にあやかって“ポンシュ“と名付けられた酒ブランドは、何と全てをホワイトキャビンで扱う流れとなった。
 イオリが関わったとは言え、開発の経費や時間はロスが費やしたのを鑑みればグラトニー商会が扱えば良いとイオリは主張したが、それは頑なに拒否をされた。

 酒は売れる。
 だが、時に酒は善人の身も滅ぼす事にも繋がるだろう。
 もし、酒が誰かにとっての悪となりうる存在なのだとしたら、その金は一つの商会が得て良い利益ではない。
 どうせ儲けが生まれるのなら、人の為に使う金として利用される方が、よっぽど健全だ。ロス談。
 
 そうして、新たに生み出された米酒や焼酎、ブランデーなどの利益はホワイトキャビンが扱う公共事業へと利用される事となった。

 最初はポーレットの街の為の公共事業であったが、今では多くの街が導入を始めているらしい。
 既にバート1人だけでは抱えきれない案件も増え、今ではそこそこ大所帯となっていると聞いているが、イオリは変わらず興味はないらしい。

 バートが後退してきた額に汗を浮かべながら愚痴を言う姿に「お疲れ様です。」と笑顔で躱している様子にヒューゴや子供達は可笑しそうに笑うのだった。
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