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その後のあれこれ
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悲しみを携えた顔のサツキ・ミーナをマルト・ジュンは訝しげに見つめた。
「確かに我らは先帝ハイゴール・ウィリの実の子だ。
だが、忘れてはいけない。
我らの父は帝国民を虐げ、他国の利益を盗み取っていた大犯罪者だ。
これも覆す事のできない事実だよ。
兄様。
我らは成人し、この帝国に対して責任ある立場だった。
本来であれば、長兄や姉君と同じく厳しい処分が課されてもおかしくなかった。
でも我らは身一つ傷つけられる事なく母達の祖国に送られた。
帝国民の・・世界中の悪意をこれ以上受けなくて済むように。
そして、ルカ兄様は崩壊寸前だった帝国を背負ってくれたんだ。
ルカ兄様は私達に、どう生きるのか選択肢をくれた。
もっと残酷な処分から、私達は助けれらたのではないか?」
マルト・ジュンは妹の言葉に驚愕した。
「助けられた?」
「兄様。
私の母の様な過ちを犯さないでくれ。」
女にも関わらずドレスを着ずに式典用の騎士の姿でマントを翻し去っていくサツキ・ミーナをマルト・ジュンは見送る事しか出来ずにいた。
そんなマルト・ジュンの背に声を掛けた者がいた。
「サツキ・ミーナ殿は成長されましたね。」
その男の出現にマルト・ジュンは気まずさを感じていた。
「・・・ノルディン公」
ノルディン公国国主カーライル・ザッツ・ノルディンは、にこやかに微笑んでいた。
マルト・ジュンにとってノルディン公は、挨拶するだけの親戚であった。
ましてや新たな皇帝と親密な関係とくれば、先程の話を聞かれて気まずくないはずがない。
ただ、兄弟が皇帝となった者としての共通点がある。
カーライル・ザッツ・ノルディンは、生きる道筋を見失っている若者を揶揄う様に見つめた。
「自分の立場に納得がいっていないのか?」
もはや親戚のおじさんとして話しかけるカーライル・ザッツ・ノルディンは、誤魔化しを許さずに直球に問い掛けた。
ギョッとしたのはマルト・ジュンである。
皇族である自分に不遜な物言いをする怒りが生じるよりも驚きの方が増していた。
よく考えれば、今のマルト・ジュンはバルカン公国の僻地の子爵であり、目の前の男はノルディン公国の国主である。
互いの立場を考えれば、頭を下げるのはマルト・ジュンの方であるが、皇族として生きてきた彼には、この状況すら慣れないのだ。
「妹殿の言葉を貴殿は、どう捉えた?
愚帝と烙印を押され、皇帝の座を引きずり下ろされた男の息子。
中々に厳しい物言いだったが、それが現実だ。
貴殿はバルカンの地の果てで、この一年何を考えていた?」
「・・・何を考えていた?
それは、帝国の正当な後継者としての・・・。」
思わず声に出したマルト・ジュンは自分が何もしていなかった事に気がついた。
バルカンの僻地で朝から酒を欲し、理不尽な状況に不平不満を口にする日々。
「貴殿が立ち止まろうと、世界は勝手に動いていく。
例え望み通りにいかなくても、貴殿を取り巻く環境は変化していくのだ。
最早、ファヴィリエ・ルカ陛下が皇帝であると世界が認めてしまった。
貴殿の不満は他の者に望まれてすらいない。
それとも、世界を敵に回してでも貴殿は龍と戦うかね?」
「龍と戦う・・・?」
マルト・ジュンは目の前の男の言っている意味が分からずにいた。
「確かに我らは先帝ハイゴール・ウィリの実の子だ。
だが、忘れてはいけない。
我らの父は帝国民を虐げ、他国の利益を盗み取っていた大犯罪者だ。
これも覆す事のできない事実だよ。
兄様。
我らは成人し、この帝国に対して責任ある立場だった。
本来であれば、長兄や姉君と同じく厳しい処分が課されてもおかしくなかった。
でも我らは身一つ傷つけられる事なく母達の祖国に送られた。
帝国民の・・世界中の悪意をこれ以上受けなくて済むように。
そして、ルカ兄様は崩壊寸前だった帝国を背負ってくれたんだ。
ルカ兄様は私達に、どう生きるのか選択肢をくれた。
もっと残酷な処分から、私達は助けれらたのではないか?」
マルト・ジュンは妹の言葉に驚愕した。
「助けられた?」
「兄様。
私の母の様な過ちを犯さないでくれ。」
女にも関わらずドレスを着ずに式典用の騎士の姿でマントを翻し去っていくサツキ・ミーナをマルト・ジュンは見送る事しか出来ずにいた。
そんなマルト・ジュンの背に声を掛けた者がいた。
「サツキ・ミーナ殿は成長されましたね。」
その男の出現にマルト・ジュンは気まずさを感じていた。
「・・・ノルディン公」
ノルディン公国国主カーライル・ザッツ・ノルディンは、にこやかに微笑んでいた。
マルト・ジュンにとってノルディン公は、挨拶するだけの親戚であった。
ましてや新たな皇帝と親密な関係とくれば、先程の話を聞かれて気まずくないはずがない。
ただ、兄弟が皇帝となった者としての共通点がある。
カーライル・ザッツ・ノルディンは、生きる道筋を見失っている若者を揶揄う様に見つめた。
「自分の立場に納得がいっていないのか?」
もはや親戚のおじさんとして話しかけるカーライル・ザッツ・ノルディンは、誤魔化しを許さずに直球に問い掛けた。
ギョッとしたのはマルト・ジュンである。
皇族である自分に不遜な物言いをする怒りが生じるよりも驚きの方が増していた。
よく考えれば、今のマルト・ジュンはバルカン公国の僻地の子爵であり、目の前の男はノルディン公国の国主である。
互いの立場を考えれば、頭を下げるのはマルト・ジュンの方であるが、皇族として生きてきた彼には、この状況すら慣れないのだ。
「妹殿の言葉を貴殿は、どう捉えた?
愚帝と烙印を押され、皇帝の座を引きずり下ろされた男の息子。
中々に厳しい物言いだったが、それが現実だ。
貴殿はバルカンの地の果てで、この一年何を考えていた?」
「・・・何を考えていた?
それは、帝国の正当な後継者としての・・・。」
思わず声に出したマルト・ジュンは自分が何もしていなかった事に気がついた。
バルカンの僻地で朝から酒を欲し、理不尽な状況に不平不満を口にする日々。
「貴殿が立ち止まろうと、世界は勝手に動いていく。
例え望み通りにいかなくても、貴殿を取り巻く環境は変化していくのだ。
最早、ファヴィリエ・ルカ陛下が皇帝であると世界が認めてしまった。
貴殿の不満は他の者に望まれてすらいない。
それとも、世界を敵に回してでも貴殿は龍と戦うかね?」
「龍と戦う・・・?」
マルト・ジュンは目の前の男の言っている意味が分からずにいた。
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