【完結】平安の姫が悪役令嬢になったなら

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中

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本編 平安の姫が悪役令嬢になったなら

1 平安姫、悪役令嬢になる

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 平安時代の姫が乙女ゲームである『キミ☆コイ』の悪役令嬢に人知れず転生していた。
 その平安時代のお姫様が前世の記憶を思い出したのは昨日のこと。


 恨みをかいまくっていた彼女は階段から押され、転げ落ちた。その時に頭を打ってしまった衝撃で前世を思い出したのだが、彼女にとっての問題はそこではない。

 一晩明けて鏡を見た彼女は、その姿に絶望の底に叩きつけられたような気持ちであった。


 (われは、このような姿をうつくしゅうと信じておったのか……)

 震える手で鏡を触り、今世での自分の記憶に頭を抱えたいような気持ちになった。

 (何という、醜女しこめなのじゃ。
 われの切れ長の細い目もふっくらした頬もサラサラの長い黒髪もなくなってしもうた。何じゃ、この面妖めんような髪色は、しかもうねうねしていて気味が悪い。
 絶世の美女と呼ばれたわれはもうおらぬのか……)

 彼女の美女というのは、おかめ顔のこと。
 この悪役令嬢に転生した平安のお姫様は前世の美の基準こそが正しいのだと疑いもしていない。
 悪役令嬢として振る舞っていた彼女の人格は前世のおかめ姫によって完全に消失していた。

 悪役令嬢である彼女の名は『イザベル』。公爵家のご令嬢であり、皇太子殿下の許嫁でもある。
 国一番の美女と言われ、美しい白い肌、小さな顔に、ハッキリとした目鼻立ち。手足は細く長く、スタイルも申し分ない。
 ブロンドの髪は美しく、彼女が微笑めば大概の男性は落ちるとさえ言われている。

 今世においての絶世の美女である。だが、何度も言いようだが彼女の基準は平安。平安なのだ。

 (恥ずかしゅうて、表にはもう出られぬ。ここは、気をわずらったことにして、生涯をこの部屋で過ごすわけにはいかぬだろうか)

 一瞬、そのような考えが頭の中でもたげたが、育ててくれた両親に面目が立たないと考えを改める。

 (今世での両親も蝶よ花よとこんなに醜女なわれを育ててくれたのじゃ。少しでもお役に立たねばならぬ。じゃが、この顔で表に出るのものぅ……。
 そうじゃ!!顔を隠せば良いのじゃ!!)

 名案ではなくを思い付いた彼女は筆と墨はなかったので万年筆を使って絵を描き始めた。

 (しかし、何と便利な世になったものじゃな。墨がなくとも書けるとは、妖術か何かではあるまいな……)

 昨日まで毎日のように使っていたものにまで感心をしながら、一枚の絵を書き上げた彼女は満足げに笑った。


 (さて、絵もできたことじゃ。従者を遣いに出さねばならぬな)

 しかし、従者を呼ぶということは顔をみられてしまう。彼女は少し躊躇ったが、顔の半分は扇で隠すのだから大丈夫だと自分を納得させて侍女を呼んだ。

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