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本編 平安の姫が悪役令嬢になったなら
7 平安姫、無念!!
しおりを挟む一方その頃、目を覚ましたイザベルは恥ずかしさのあまり のたうち回っていた。
(なんということじゃ、殿方に抱き締められてしもうた。しかも、われと婚姻を結ぶと申してくださった……。
じゃが、こんな見目のわれでは るいす皇太子殿下が笑われてしまう。いち早く、みーあにあれを持ってきて貰わねば!!)
それから一週間後、イザベルのダメ出しにより何度も作り直させたそれは遂に完成した。
「みーあ、どうじゃ?」
「変です」
嬉しそうに それを着けているイザベルをミーアはバッサリと切り捨てた。
「何でじゃ?どこがおかしいと申すのじゃ……」
「どこがって全てですよ。何ですか その変な顔は。これの何処が世界一美しい顔なんですか!!」
「みーあ、そち 目が悪いのか?この切れ長の目も ふっくらとした頬も黒髪も素晴らしいではないか。これこそ、至上の美しさじゃ」
「絶対に変です!!皇太子殿下にもお聞きになったらどうですか?絶対に私と同じ事を言いますよ」
この一週間で、前世の記憶を思い出したことにより苛烈で傲慢な悪役令嬢から平安おかめ姫へと中身が変わった主にすっかり慣れたミーアは全力で反対していた。
「うむ……。みーあがそこまで申すのであれば、るいすの意見も聞いてみるかの」
「噂をすれば馬車が到着なさったみたいですね」
まだ一週間ではあるが、毎日通いつめたおかげでルイスは敬称なしで呼んでもらえるほどにイザベルと距離をつめていた。
そして今日もいそいそと会いに来たのだ。
「るいす、よく来てくれたの!!」
最初は少し強ばっていたイザベルの顔も今では笑顔でルイスを出迎える。そして、今日も輝かしいばかりの笑顔を想像していたルイスはイザベルを見て固まった。
「……あー……えっと、何だ…………。イザベル、そのお面はどうした?」
「職人に頼んで作ってもらったのじゃ!!美しかろう?」
自信満々のイザベルにルイスは困惑した。
(最近、自身のことを不細工だとやたら言うと思ったら、このお面が美しいだって!?価値観の違いだろうが、これはない。
だが、否定してがっかりした姿も見たくはないし……)
「ほら、皇太子殿下も黙ってらっしゃるじゃないですか。変だってことですよ」
「あまりの美しさに声を失っているだけかもしれぬではないか!!」
「いーえ、あれはお困りの顔ですよ」
「そうとは限らぬ!!」
「どっちですか?」
「どちらじゃ?」
(うわっ!!止めてくれ。私に聞かないでくれ!!)
二人同時に聞かれたルイスは生きてきたなかでこんなに困ったことはない……と思うほど迷っていた。
しかし、その迷いはこの後のミーアの一言で完璧に払拭される。
「イザベル様、その変なお面をつけてこれから生活されるおつもりですよ」
「イザベル、残念ながらそのお面は一般的に受け入れられない。諦めよう」
「そんな……」
(何故じゃ何が悪いのじゃ。こんなに美しゅうできておるのに。やはりあれか?ちと目が大きすぎたかの……)
「やはり目はもつ少し細くした方が良かったじゃろうか」
「違う!!」
「違います!!」
小さく呟いたイザベルに対し、ルイスとミーアは全力で即座に否定したことで声が重なった。
「そこまで否定しなくとも……」
「いいか、イザベル。この世で一番美しい女性は貴女だ。この変なお面は一般的な美から程遠い。
頼むから可愛い顔を私に見せてくれないか。ころころと変わるイザベルの表情が好きなんだ」
「そうですよ!!イザベル様のお顔は最強です。武器ですよ。それを隠すなんてもったいない!!」
(へっ変……とな?このお面こそが美じゃと信じておった われは一体……)
ルイスが好きだと言っていることも『変』の一言でイザベルの耳に全くと言って良いほど入ってこない。
「われはこれからどうすれば……」
「「つけなければ良い(んですよ)」」
「うぅ……無念」
胸に『おかめ』な お面を抱き締めてイザベルは肩を落としたのだった。
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