9 / 16
本編 平安の姫が悪役令嬢になったなら
9 平安姫、捕まえる
しおりを挟む着物風のドレスを纏い、髪を結い上げ、今までとは違う薄めの化粧をし、低めのヒールの靴を履き、装飾品は髪以外はあえて外した。
しっかりと準備が終えた頃、ルイス皇太子殿下が迎えに来た。舞踏会に参加するのに迎えに来たのは実は始めてのこと。
イザベルを面倒に思っていたルイスは現地集合、現地解散を基本としていた。
今までのイザベルとは違う。そう分かっていたルイスだが、イザベルの姿を見て度肝を抜かれた。
「あの、いかがでしょうか?」
恥じらいながら俯くイザベルのうなじが艶かしくて、視線が外せない。
「……あぁ、いいんじゃないか?」
何とも気の利かない答えに、しゅんと落ち込むイザベルも可愛くて、このまま閉じ込めて朝まで二人で過ごしたいという欲求が沸き上がる。
だが、これから行く舞踏会でイザベルとの仲を見せつけ、周りを牽制し、さっさと婚姻まで漕ぎ着けることが先決だと気持ちを切り替える。何より、イザベルを落ち込ませたままでいるわけにはいかない。
「すまない。あまりの美しさに緊張してしまい、冷たい態度をとってしまった。
イザベル、きれいだよ。可愛すぎて誰にも見せたくないくらいだ」
その言葉に、パアッとイザベルは無邪気な笑顔を見せた。始めて見るイザベルの表情にルイスは胸の高鳴りを感じた。
けれど、それに気が付かないふりをして、イザベルが馬車に乗るのをエスコートしてから隣に座る。
「見たこともないドレスだ。とても似合っている。誰のデザイン?」
「われと、みーあで考えて職人に作って頂いたのじゃ」
「イザベルと侍女のミーアで?」
「われはもっと露出の少ないのが良かったのじゃが、みーあがこの方が良いとアドバイスをくれての。るいすは、その肌が見えているのは好きか?」
打算のない上目遣いの破壊力は凄まじい。このことをルイスは初めて知ることになった。
「それは、その人の好みによるんじゃないかな」
「われは、るいすの意見を知りたいのじゃ!!」
逃げの一手をとったルイスだが直球のイザベルは真っ直ぐに再度問いかける。
「どうして、イザベルは私の好みが知りたがるんだ?」
「……るいすが喜んでくれなければ意味などない。われは、少しでも るいすに好いてもらいたいのじゃ。
迷惑かの?」
(これは、もう逃げられない。捕まってしまったな)
散々イザベルを自分のものにしようと今日まで計画を立て、ヒロインを捨て、外堀を埋めてきたにも関わらず、ルイスは自身の判断が鈍るのではないかと気が付かないふりをし続けてきたのだ。
(まさか、私が恋をするとはな)
自嘲気味に笑いながらも満更ではないことが自身でも分かっていた。
「イザベル、とても私の好みだ。もう、離してやれないから覚悟しておけ」
そう告げるとルイスはイザベルに口付けた。
26
あなたにおすすめの小説
光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
聖女の力は使いたくありません!
三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。
ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの?
昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに!
どうしてこうなったのか、誰か教えて!
※アルファポリスのみの公開です。
【短編】その婚約破棄、本当に大丈夫ですか?
佐倉穂波
恋愛
「僕は“真実の愛”を見つけたんだ。意地悪をするような君との婚約は破棄する!」
テンプレートのような婚約破棄のセリフを聞いたフェリスの反応は?
よくある「婚約破棄」のお話。
勢いのまま書いた短い物語です。
カテゴリーを児童書にしていたのですが、投稿ガイドラインを確認したら「婚約破棄」はカテゴリーエラーと記載されていたので、恋愛に変更しました。
【完結】離縁など、とんでもない?じゃあこれ食べてみて。
BBやっこ
恋愛
サリー・シュチュワートは良縁にめぐまれ、結婚した。婚家でも温かく迎えられ、幸せな生活を送ると思えたが。
何のこれ?「旦那様からの指示です」「奥様からこのメニューをこなすように、と。」「大旦那様が苦言を」
何なの?文句が多すぎる!けど慣れ様としたのよ…。でも。
完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
水鳥楓椛
恋愛
わたくし、エリザベート・ラ・ツェリーナは今日愛しの婚約者である王太子レオンハルト・フォン・アイゼンハーツに婚約破棄をされる。
なんでそんなことが分かるかって?
それはわたくしに前世の記憶があるから。
婚約破棄されるって分かっているならば逃げればいいって思うでしょう?
でも、わたくしは愛しの婚約者さまの役に立ちたい。
だから、どんなに惨めなめに遭うとしても、わたくしは彼の前に立つ。
さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
【完結】悪役令嬢とは何をすればいいのでしょうか?
白キツネ
恋愛
公爵令嬢であるソフィア・ローズは不服ながら第一王子との婚約が決められており、王妃となるために努力していた。けれども、ある少女があらわれたことで日常は崩れてしまう。
悪役令嬢?そうおっしゃるのであれば、悪役令嬢らしくしてあげましょう!
けれど、悪役令嬢って何をすればいいんでしょうか?
「お、お父様、私、そこまで言ってませんから!」
「お母様!笑っておられないで、お父様を止めてください!」
カクヨムにも掲載しております。
ある日、悪役令嬢の私の前にヒロインが落ちてきました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【どうやら私はこの世界では悪役令嬢と呼ばれる存在だったらしい】
以前から自分を取り巻く環境に違和感を覚えていた私はどうしても馴染めることが出来ずにいた。周囲とのぎこちない生活、婚約者として紹介された相手からは逃げ回り、友達もいない学園生活を送っていた私の前に、ある日自称ヒロインを名乗る人物が上から落ちてきて、私のことを悪役令嬢呼ばわりしてきた――。
※短めで終わる予定です
※他サイトでも投稿中
わたくしが悪役令嬢だった理由
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、マリアンナ=ラ・トゥール公爵令嬢。悪役令嬢に転生しました。
どうやら前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したようだけど、知識を使っても死亡フラグは折れたり、折れなかったり……。
だから令嬢として真面目に真摯に生きていきますわ。
シリアスです。コメディーではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる