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①
しおりを挟む「アルフレッド様、離縁してください!!」
私の言葉に、金の瞳が向けられた。
それだけで、私の胸は勝手に高鳴りだす。
今日も今日とて、アルフレッド様は誰よりもかっこいい。
「何度も言うが、そのつもりはない」
「それじゃ、困るんです。アルフレッド様の運命の相手は、私じゃないんです!!」
このやり取りを何回繰り返しただろう。婚約者の時からだから、優に100回は超えている。
それでも、諦めきれないのだ。
推しの幸せが私の幸せ。
残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。
既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったが、現実はその先も続いているのだ。ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。
アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。
その時のためにも、私と離縁する必要があるんだよ。
「そんな運命なら、俺には必要ない」
アルフレッド様は、大きな手で私の頭をなでる。
頭をなでてもらえるなんて、ご褒美が過ぎる。ファンサ、ありがとうございます!!
でも、言いたいことは言う!!
私は、推しと恋愛したいんじゃない。誰よりも、推しに幸せになってほしいのだ。
「それは、まだ本物の運命に気がついてないから言えるんです!!」
「俺の運命は、俺が決める。カタリナが、俺に不満があるなら直そう。離縁は諦めてほしい」
少し困ったようにアルフレッド様は言う。
困らせたいわけじゃないのに……。
アルフレッド様に不満なんてあるわけない。
ひとつに結われている長い黒髪も、金の瞳も、ちょっとぶっきらぼうな話口調も、時々見せる冷やりとした空気も好きだ。
どこをどう切り取っても、私にとって完璧で素敵な人。
誰よりも大好きで、愛してる。
「アルフレッド様より素敵な方なんて、この世に存在しません。直すところなんか、あるわけないです」
きっぱり、ハッキリと言えば、もっと困らせてしまったらしい。
ただ、大好きな推しに世界一幸せになってほしいのだ。
伝われ、私の想い!!
「カタリナは俺のことが好きか?」
「当り前じゃないですか! この世はアルフレッド様中心に回ってるんです。アルフレッド様をお好きじゃない人はいません!」
「そんなことはないが……」
アルフレッド様は謙虚だなぁ。世界の中心はアルフレッド様に決まってるのに。
「とにかく、離縁はしない。俺にはカタリナがいる」
「……うっ」
じわりと体温が上がったのを感じた。
推しに甘い言葉を言ってもらえて、嬉しくないわけがないのだ。今なら、どんな不可能も可能にできそうだ。
だけど、私は悪役令嬢なのだよ。
すっごい性格が悪くて、みんなから嫌われる役なの。
実際、学園時代はヒロインをいびり倒すために、ちょっとのミスを指摘しまくった。
リリアンナが攻略対象者へと作ってきたクッキーを全部私が食べちゃったこともあったし、リリアンナお手製のお弁当と私のランチを許可も得ずに交換したこともあった。
かなり、悪いことをしてきた。
それなのに、何故かリリアンナに懐かれてしまった。
ヒロインって、果てしなく心が広くて、何でも許せるらしい。
ゲームの画面越しでは伝わりきらなかったリリアンナの魅力を実感して、アルフレッド様と結ばれたいと思ってしまった、私の中に芽生え始めていた欲望は消えたのだ。
アルフレッド様に相応しいのは、リリアンナだ。私じゃない。
リリアンナの魅力をもっとアルフレッド様に理解してもらわないと……。
「アルフレッド様! 今度、ダブルデートをしませんか?」
「ダブルデート?」
「はい。私とアルフレッド様、リリアンナとリリアンナの婚約者でデートに行きましょう!!」
「……わかった。リリアンナ譲とロバートは邪魔だが、行こう」
うん? リリアンナのことを邪魔って言った?
親密度が足りてないのかな……。学園で、あんなにふたりが一緒にいられる時間を作ったんだけどなぁ。
私もその場にいたから駄目だったの? でも、私が席を外すとふたりとも何も話さなくなっちゃうんだよね……。
まぁ、過ぎてしまったことを気にしても仕方がない。
「楽しみですね!!」
「そうだな」
よし。アルフレッド様にリリアンナの良さを全力でアピールして、巻き返して見せるんだから!
目指せ! 私と離縁からのヒロインとの恋だよ。
絶対に、アルフレッド様を幸せにするぞー!!
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