番なんて要らない

桜 晴樹

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気になるあいつ

気になるあいつ。でも嫌い20

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固まったままの俺を放置して、拓人と瑠衣が、言い合いを続けている。

「あおいもそう思うだろ!?」

何がどうなったのか、聞いていなかった。
そのくらい、瑠衣の言った事と拓人の態度に衝撃を受けていたらしい。

「おれは‥。」

2人の視線に、耐えかねて俯いてしまう。

「兎に角、あおいと俺は離れる事はない。瑠衣も悪い冗談は止めろ。」

拓人が怒っている。また、俺がどうしようか、考えあぐねていると、瑠衣が言い返していた。

「そうは言っても、拓人の片想いにしか見えないんだよね。あおいと恋人でも無いんだったら黙っていてくれない?」

どうしてだろうか。瑠衣とは、今日会ったのが初めてなのに、どうして俺に迫ってくるのだろう。

「ねえ、あおい。あおいは、拓人とどうなりたいの?」

いや、違った。
瑠衣は、俺の気持ちを言わせようとしている。その為に、敢えて悪者になろうとしているんだ。
それは何の為?拓人の為だろう事は分かる。
その為に敢えて、憎まれ役になろうとしている。
瑠衣は、もしかしなくても、拓人の事を好きなのでは無いのか。

「瑠衣は‥、瑠衣こそ、拓人の事が‥。」

「今は、あおいに聞いているんだよ。」

瑠衣は、にこりと笑って俺の返答を待つ。
もし、瑠衣が拓人を好きなら、俺は‥。
その後の言葉が出てこなかった。それは、瑠衣が真剣に拓人の事を思っていて、俺達の仲を取り持とうとしているのだろう。
だから、どうなりたいのか聞くのだ。
俺は、真剣に拓人と向き合えない。それは、俺が俺の気持ちが分からなくなったからだ。

「ごめん‥。今はまだ言えない。」

俺は、俯きながら2人に頭を下げた。

「いい。俺は待つから。」

拓人からは、何時もの返事が返ってきた。

「拓人は、それで良いの?」

瑠衣は、まだ納得してなさそうだ。

「まあ、2人がそれで良いなら良いけど。」

溜息を付いた瑠衣は、次の瞬間には笑顔になった。

「しょうがないな。2人の問題に首を突っ込んだこっちも悪いし、悩ませてごめんな!」

そうして、俺達に頭を下げてきた。

「いや、こちらこそすまない。」

拓人が返事をした。俺も、と顔を上げて類を見た。

「あ、ううん大丈夫だよ。俺も迷惑かけてごめん‥。」

手が震えてる俺の手に、いつの間にか拓人が握ってきた。その上を瑠衣が手を置いた。

「ふふっ、なんかお互い謝ってて可笑しいな!」

あ、笑った。と、思った。ずっと瑠衣は俺に作り笑いしかしていなかった。それが漸く普通の笑顔になった気がした。


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