番なんて要らない

気になるあいつ

気になるあいつ。でも嫌い21

なんだかんだと瑠衣は、俺達の事を心配しているのが伝わり、拓人は良い友人を持ったものだ。
あとは、色んな話をしお店を出た。
結論からいうと、瑠衣はとても良い人だった。初めは、親友をとった俺の事を恨んでいるのかと思ったがそうじゃない。親友の拓人とその相手の俺までも気にかけてくれるなんて、良い人認定するしかない。
それにしても問題は俺の方だった。初めて会った人とこんなにもずっとお喋りするのは久しぶりだった。
間違いなく、引きこもりに拍車がかかっていた事は否定しないが、自分やばすぎる。

「あおい。疲れたよな。ごめんな、付き合わせて‥。」

瑠衣と別れてから、俺の顔色が悪くなってきているのを察して、拓人が謝ってきた。
どうして謝られるんだと思ったが、自身の引きこもり具合の悩みに、何時の間にか顔を青ざめていたらしい。

「いや、瑠衣さんの事で疲れたんじゃないから‥。その、俺が‥。」

俺が言い辛いのを「うん。」って、拓人が話の腰を折らずに待っていてくれる。
まるで、幼い子にする様な感じなのが気に入らないがしょうがない‥。

「俺が、他人とこんなに話す事って久しぶりで‥自分の‥ひ、ひきこ、引きこもり具合にやばさを感じて‥。」

チラリと拓人を見れば、目蓋をパチパチと音がしそうな勢いで瞬きしている。そして、「え、そんな事で‥。」って、小声で呟いた。引きこもりにそれは無い。こっちは何気に人と会う事自体が大変なんだぞ。思わず睨み付けると目が合う。

「ふっ。すまない。そう思えるなら、引きこもりもなくなるんじゃ無いか？」

俺の頭を撫でて優しく拓人はいうが、引きこもり甘く見るなよ。空回りして人が怖くなりすぎて、一生引きこもりになるケースもあるんだからな。

「まあ、あおいが外に出れなくなっても、俺の番になれば一生面倒は見るけどね。」

ニッコリと笑顔で近寄り、俺の耳元で怖い事を、事もな気に言い切った。