一匹猟犬とフラワーギフト

椿原 ジン

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0世界

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 見晴らしのいいビル、最上階に設けられた部屋は、一人の女性専用に作られている
 コンコン
 その扉をノックする者がいた、数少ない人物しか、扉の前に立つこと、この階に立ち入ることも許されないにも関わらず
 サラリとした緑の長い髪に白いリボン、翡翠のような瞳をした成人女性だ
「どうぞ」
 その言葉を合図に、その女性は扉を開ける
「栗花落さんご要件は」
 室内で社長椅子のようなものに座っている女性に声をかける
 ふわりとした白銀の髪に、透き通った海のような瞳、かなりスタイルがいいが、見た目は十代くらいの少女は栗花落と呼ばれた
「貴女も忙しいでしょうに突然呼び出してごめんなさい、森谷・翡翠さん」
 少女に対し本気で緊張する女性
「少しお話しましょうか」
 時は遡ること前日の夕方、香が柊から授業を受けていたときのこと
「森谷・翡翠?」
「っそ、そいつにあったら逃げるのが一番いい、バレずにね、気づかれればまず逃れられないから」
 柊のパソコンには一人の女性が表示される
「この森谷さんって何者なんですか?」
「裏で息を潜めるも、表で犯罪をするにも警戒しないといけない相手、サットだよ」
 サットとは本来、テロなどが起きた際に行動する特殊部隊だが、人々がギフトを持つこの世界では、パトロールなどでかなり身近になっている
 隊員は組織に偽名で登録し、家族にも自身がサットであることを打ち明けてはならない
 犯罪対策や戦闘のスペシャリストである
「本名まではわからないけど、森谷・翡翠はサットの実力No.1正真正銘天才だ」
 香は画面の女性をもう一度見る、サットという前線で戦う組織の実力一位、そんなふうには見えない至って普通の女性だ
「でも、サットっていつも顔隠してますよね、こんな写真どうやって?」
「あ~それ、警察のネットワークハッキングしたんだよ、バレたら逆ハッキングされるから危ないけど、得られる情報多いから」
(え~?!)
 楪はもう一度パソコンに向き直しまた真剣な表情に戻る
「マイさんってさ~、情報が無いんだよ、犯罪歴とか、行方不明歴とかさ、偽名なの分かったうえで探してるけど尻尾がつかめない」
 犯罪歴の情報がない、楪は天国・舞=白狼・血霧である事実を知らない、それを香は初めて認識した
(言ったほうがいいのか?)
 香は一瞬迷ったが、選んだのは沈黙だった
(きっと白狼さんは、僕は言わないって思ってここを紹介してくれたんだ、期待は裏切れない)
「そう言えば…」
 話をそらそうとした香が選んだ話題は
「楪さんって、どんなギフトなんですか?」
 楪が黙る、沈黙が長く感じた
(なんか、いけないこと聞いた?)
バタン!
「兄さんたっだいま~!」
 勢いよく扉が開き、誰かが入ってきた
「もう少し静かに扉を開けろ柊」
 片目だけ隠した白い髪、紺色の瞳、兄さんと呼んでいてことと似たような外見、二人は兄弟かなにかなのだろう
「兄さんお客さん、この部屋に入るの珍しいね?」
 注意されたことなど無かったかのように、柊は楪の座る椅子に寄ってくる
「マイさんの弟子だよ、先日マイさんが連れてきた」
「マイさん来てたんだ、弟子ってことはもしかしてその子も?」
「いや、彼は違うよ」
「そっか~珍しいね、ところでカーイン宗教の情報つかめた~?」
 訳が分からないまま話を聞いていた香には、二人がカーイン宗教について調べていることだけしか、理解できなかった
「宗教名0世界、教祖と会えるのはカーインだけ、その他は希にしか対面できない、噂だとかなりの長寿らしい」
 宗教0世界、カーインを崇拝する謎の組織、何を企んでいるのかはさっぱり分からない
「世の中、情報を知るのは戦う上で重要なことだけど、知らない分からないって、平和に生きる一つの術だよね」
「楪さん?」
「難しい話しちゃったね、今日はもう休みな」
「はっ、はい!」
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