如月真理はまだ知らない

高崎彩

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如月真理はまだ知らない

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 家の扉が開く音がした。今の時間ということはお姉ちゃんが帰ってきたのだろう。わたしはお帰りと今帰ってきたばかりの姉に声をかけた。姉もただいまと返す。けれど今日の姉の様子はいつもと何かおかしい。姉の笑顔がまぶしい。これは何かあったに違いない。そう考えごとをしているとお姉ちゃんが私を見てきた。何か言いたそうな笑顔で。この笑顔は私が翔さんにした顔と似ている。自分の顔を見てそういっているのではない。これは自分でわかることなのだ。だからこの笑顔は何かある。だって何か聞いてほしそうな顔をしている姉がそこにいるのだから。これは聞くしかなさそうだ。
「お姉ちゃん、なんか今日機嫌いいね」
「わかる~?」
「それで、何かあった? あ、わかった翔さんがらみでしょ?」
「ピンポーン、正解」
これは重症だ。こんなに機嫌がいい姉は久しぶりだ。
「翔がね、『かわいい』って言ってくれたんだ」
おっとマジか。あの翔さんがお姉ちゃんに。翔さん頑張ったな。これは何か裏がある。
「お姉ちゃんが言わせたんじゃないの? 」
明らかに反応した。どうやらそうらしい。でもお姉ちゃんに言ってくれたんだ翔さん。私の言ってくれたことを覚えてくれたんだ。とてもうれしい。でも言われたお姉ちゃんはとてもうれしそうだ。
 お姉ちゃんは知らない。お翔さんがお姉ちゃんにかわいいって言わないのか。彼氏である翔さんもお姉ちゃんのことをきれい系であると思っているはず。だから私は翔さんにお姉ちゃんが『かわいいって言ってくれない』と言っていたことを伝えた。でもこれが問題ではない。お姉ちゃんはきれいと言われても喜ぶだろう。でも彼氏にはかわいいと言ってほしかったということだろう。これで翔さんの意識は少し変えることができたと思う。でもやはりそこが問題ではない。私はあることがきっかけでそれが分かった。ではどういうことか。簡単なことだ。翔さんは『くだらないこと』といっていた。確かにそうかもしれない。けれどそれが翔さんのキャラに合わないから、私は勘違いをしていたのかもと最初は思った。けれど翔さんをみてそれは違うと思った。私にはかわいいという翔さんが彼女であるお姉ちゃんにかわいいといわないのか。結論を言う、本当に好きな彼女相手では恥ずかしくて言えない。これが答えだ。
 このことをお姉ちゃん、如月真理はまだ知らない。
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