【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

文字の大きさ
1 / 129

10月2日〜

しおりを挟む
頑張る事は好きだ。その分自分に返ってくるしやり甲斐もある。勉強を頑張った結果今通っている進学校に入学できたし、メイクや流行を取り入れたファッションも勉強をして女磨きもかかさなかった結果、何人かの男の子に告白されるくらいの可愛さは手に入れられたんじゃないかと思う。

でも、男の子とは付き合ったりしたものの長続きはしなかった。私は非常に男運がないみたいだった。

ある男の子は二股をしていたし、別の男の子は体目的とわかるくらいグイグイ来られてその場から逃げ出したし、また別の男の子は付き合って数日後に「実はゲイなんだ」と告白された。そういうのは全く偏見はなかったけれど、付き合う前に言って欲しかった。そしたら付き合わなかったけれど…なら何故告白してきて付き合う事にしたんだって話だけど「好きな男の子に振り向いて欲しくて」と逆に私が相談に乗る感じで付き合っていた時より仲良くなってしまった。

「バイト始めようかなぁ…」

お弁当の卵焼きを箸でつまみながら目の前でクリームパンを食べているちさきちゃんに話しかける。ちさきちゃんは不思議そうな表情をした。

「急にどしたの?」
「彼氏にフラれたんだよ」
「えぇ!?彼氏って先月付き合い始めたって言ってた人!?もう別れちゃったの!?!?」

ちさきちゃんは目を大きくして驚いていた。

「ちょっと色々あってね…しばらくは恋愛とかいいやって思って。今更部活始めるのも遅いしだったらバイトかなって」

勉強や自分磨きを頑張ってきた高校生活は恋愛だけはうまくいかなくて、でもこのままじゃダメだと思って新しい事にチャレンジしてみようと思った。高校2年生の10月に部活を始める気にもならなくて、社会勉強にもなるとバイトを始めようかと思っていた。

「凪沙ってこんなに可愛いのにホント男運ないよね。だからって私も無いけどさ」と苦笑しながらミルクティーに口をつけていた。

「ちさきちゃんには亜紀ちゃんがいるじゃん」
「えっ!?亜紀は男じゃないよ!??」

ちさきちゃんには幼馴染の亜紀ちゃんっていう子がいる。私も友達だし今はクラスメイトでもある。


私は高校入学初日の登校中偶然2人の事を見かけた。

――あの2人も新入生なのかな?

私と同じ制服を着た女の子2人。眼鏡をかけて制服のネクタイもキュッと締めた真面目そうな子と髪を明るく染めて制服を着崩したギャルっぽい2人が仲良く話しながら登校していた。見た目が全然違う2人だけどとても仲が良さそうで、眼鏡の子はちょっと頬を朱色に染めつつギャルっぽい子はニカッと笑って人が良さそうな印象を受けた。

そのギャルっぽい子と同じクラスになった。

教室では眼鏡をかけたもう1人の子は居なくて、ギャルっぽい子は頬杖をついて窓の外をつまらなそうに眺めていた。
せっかく同じクラスになれたんだし、朝2人の楽しそうな様子をみてお友達になりたいと思って話しかけてみた。

――私、天城凪沙(あましろ なぎさ)っていうんだ。よろしくね?


あの時勇気を出して話しかけて良かったと、心から思っている。こうしてちさきちゃんとも亜紀ちゃんとも友達になれたし今では1番仲良くさせてもらっていると思っている。

でも、ちさきちゃんと亜紀ちゃんの関係には負ける。亜紀ちゃんがなんとなくちさきちゃんの事が好きなんだろうなって事は見ていたらわかった。登校初日以降も度々目撃はしていた。赤く染まった頬、ちさきちゃんの事を優しく見つめる瞳。あれはきっと恋している目だと私は思った。

なので登下校中に2人のことを見つけても私からは決して声をかけるような事はしなかった。
私の勝手なおせっかいかな?とは思うけど…

だからかな、恋愛って良いなって思ったのかも……優しく見つめあったり、お互いの事を理解して想い合ったり。

―そんな恋愛に憧れていた―

今の私じゃダメなら新しく何かを始めてみようと思った。それがバイトなんだけど…

あ!そうだ!とちさきちゃんがパンっと手を打った。クリームパンは食べ終わったらしい。

「知り合いがお店やっててそこバイト募集してたんだよね!喫茶店でさ、凪沙の可愛さなら即採用だよ!」
っとパチンと片目をつぶってウィンクしてくる。ギャルがやると似合う

「喫茶店のバイトかぁ…」

エプロンをつけてコーヒーを淹れたり?常連さんと楽しく会話したり?なんか良いかも…ちさきちゃんの知り合いなら安心だし。

「じゃぁ、お願いしちゃおうかな?」両手の指先を合わせてお願いポーズをする。
「OK!わかった!面接の日決まったら教えるね!」


――同じ週の日曜日。面接の日はすぐにやって来た。

特に何もいらないって言われたけどよかったのかな?履歴書とか必要なんじゃ…初めての面接、初めてのバイトちょっと緊張してきたかな…と胸の辺りをおさえる。ちゃんとした服装が良いだろうと思って、休日だけど制服を着てきた。濃紺のブレザーに白いシャツとネクタイ、スカートはチェックが入ったよくある高校の制服だ。

落ち着きなく歩いていると小さな看板が見えた。『喫茶みづき』ちさきちゃんから教えてもらった。喫茶店の名前がそこに書いてあった。

茶色い木の扉でレトロな印象をあたえる小さいお店だった。外から中の様子も伺えて4人掛けのテーブルが2つとカウンター席が5席ありお客さんはいないみたいだ。

カランカランと鐘の付いた木の扉を開けると、ふわふわとコーヒーの良い香りが漂ってくる。店員さんらしき人は見当たらず扉の前でキョロキョロしていると、奥の方から「いらっしゃいませ~」とふわりとした明るい声とパタパタと急ぎ気味な足音が近づいてきた。

カウンターの奥の部屋から超絶美人なお姉さんがあらわれた。お店のロゴの入った茶色のエプロンをつけて黒のスラックスを履いているお姉さんは、長い艶のある黒髪をポニーテールにして左右にサラサラと靡かせちょっと猫目の大きな黒い瞳がキラキラとこちらを見つめた。

「あ!その制服!ちさきちゃんのお友達の子?」
「……そ、そうです!バイトの面接で来ました」

あまりの綺麗なお姉さんだったのでつい見惚れてしまった。しっかりしないと!と思考を面接に切り替えるとまた緊張してきた気がする…ドキドキ…

「合格!いつから来れる?」猫目の黒い瞳を細めてニコニコと聞いてきた。

「……えっ!?あの、そんなにあっさり!?」まだ名前も名乗ってないのに…
「ちさきちゃんの友達の時点で断るつもりなかったし、こんな可愛い娘なら大歓迎よ」

お客さん誰もいないからテーブル席座って待っててというお姉さんの言葉で私は奥の4人掛けテーブルに座った。お姉さんはカウンターの奥でコーヒーを淹れてくれているのか、お店に入った時より強くコーヒーの香りが漂ってきていた。

「ミルクと砂糖も置いておくから好きに使ってね」と私の前に白いカップに入ったコーヒーを置いてくれる。ありがとうございますと言って、ブラックコーヒーが苦手な私はミルクと砂糖を多めに入れて飲む。美味しい…

お姉さんも向かいの席に対面で座る。お姉さんのコーヒーはブラックでそのまま飲んでいた。さすが大人の女性って感じでかっこいい。

これから喫茶店でお仕事していくならブラックが飲めるようになった方が良いのかもしれない。原産国とかコーヒーの味の違いとか……今の私はミルクと砂糖たっぷり入れているので味の違いなんてわからないし。

コーヒーを一口飲んでカップをテーブルに置いたお姉さんは襟を正すようにこちらを見据えて

「改めまして、ここの店長をしてます。悠木美月です。これからよろしくね?」と優しく微笑んだ。
「あ、はい!夕ヶ丘高校2年の天城凪沙です。よろしくお願いします」

肩に力が入ってたのか私の肩をぽんぽんと叩いて「そんなに緊張しなくて良いよ~」とフフと口に手を当てて微笑んだ。すごく絵になる人だと思う。

「ちさきちゃんからどんな子か聞いてたんだよね。すごく頑張り屋な可愛い子だって言ってたから楽しみにしてたの。今までいたバイトの子が急に辞めちゃって困ってたからすごく助かるんだ。明日からでもすぐに入ってもらいたいくらいなんだけど、どうかな?」
「はい。いつからでも大丈夫です!」
「ホント!?ありがとう!助かる~」

猫目な黒い瞳を細めてニッコリ笑う笑顔はどこかでみた事あるような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

処理中です...