【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

文字の大きさ
3 / 129

10月13日(1)

しおりを挟む
「ちさきちゃん!!」

私は亜紀ちゃんと2人で登校してきたちさきちゃんに詰め寄った。

「おはよー凪沙」
「あ、おはよう。ちさきちゃん亜紀ちゃん」
「おはよう凪沙さん」
ハッ、つい挨拶を返してしまった。いや、挨拶は大事だからそこはいい。

「じゃなくて!!ちさきちゃん知ってたでしょ!?なんで教えてくれなかったの!?」
「何が?」

ちさきちゃんは鞄を机の横に引っ掛けて席について振り返ってきた。

「美月さんが悠木さんのお母さんだって!」
「言ってなかったっけ?」

あまり気にした風でもなく答えてくる。なんでこうもみんな教えてくれないのか…

「言ってないよぉ!知り合いの喫茶店ってしか聞いてない」

ペシペシとちさきちゃんの肩を叩きながら不満を漏らす。

「うん。だから悠木涼が知り合いだからね」
「悠木さんと友達だったの?」
「私がって言うより、亜紀がね。その繋がりで仲良くなったっていうか。それで喫茶店にもお邪魔したりして店長とも知り合いなんだよね。」

亜紀ちゃん繋がりで悠木さんとも知り合いだなんて意外な繋がりだ。そもそも亜紀ちゃんと悠木さんってどういう関係なんだろう?

「あれ?もしかして亜紀ちゃんと悠木さんって…1年の時」
「そうそう!同じクラスで委員が一緒で話すようになったらしいよ」
「1年の時も図書委員だったっけ?」
「そうだよ。悠木涼も結構本読むみたいで話が合ったんだって。あたしは本とか読まないから同じ趣味の仲間が嬉しかったんじゃないかな?」

悠木さんも読書好き?休憩室では漫画を読もうとしてたのにそれも意外だと思う。悠木さんの事は噂で聞く程度でしか知らなかったし、あの時初めて話をしたからまだ何も知らないようなものだけど…
もう少しお喋りしようかと思ったけれどチャイムが鳴り先生が教室に入ってきてしまったので朝の雑談は終わった。


お昼休みは珍しく亜紀ちゃんとちさきちゃん3人で食べる事になった。珍しいのはいつもは亜紀ちゃんは別の友達と食べているので普段はちさきちゃんと2人で食べている事が多かったからだ。

私と亜紀ちゃんはお弁当でちさきちゃんはメロンパンだった。私のお弁当はいつも自分で作ってきていて昨日の残り物とか冷凍食品も使ったりするけど、学校ある日は毎日のように作っているのでお弁当は美味しく作れるようになってきたと思う。
朝作った卵焼きを一口食べてふとこの後の授業について思い出した。

「そういえばこの後のLHRは球技大会のチーム決めなんだって、何やるか決めた?」
「あー、女子はバレーボールとソフトボールで男子がバスケとサッカーだったっけ?」

10月の後半には球技大会が開催されて、バレーとソフトボールどちらも1チーム作ってクラス対抗で試合が行われる。どちらかには参加しなければならなかった。
運動は得意ってわけじゃないけど、外でやるソフトボールよりは室内のバレーボールの方が良いなぁ。日焼けしたくないし…

「私は外より体育館が良いからバレーボールにしようかな?2人は?」
「じゃぁ、あたしもバレーボールにしようかなぁ。亜紀もそれで良い?」
「ちさきがそれで良いなら」

2人が当たり前のように同じ種目を選んで、バレーが6人でソフトボールが9人だから~とか考えていると、お弁当のブロッコリーがケチャップまみれになっていた。いつの間に……
これはバイト先を紹介してくれたお礼として!お礼として!(決して朝の不満ではない)ちさきちゃんにケチャップまみれのブロッコリーを食べてもらおう!
ちさきちゃんにズイッとケチャップまみれのブロッコリーを差し出すと、ビックリしつつもパクッと食べてくれた。口元が笑っているので美味しかったのだろう、私はそのままおにぎりを食べすすめた。

「ちさきちゃんと亜紀ちゃんと私とあと3人でひとチームかな?被ったりしないと良いんだけど…」

せっかくなら3人一緒のチームになって勝ちたいし、きっと楽しい球技大会になると思う。
亜紀ちゃんがちさきちゃんの口の中に卵焼きを突っ込んでる。急な卵焼きにビックリしつつもちさきちゃんの口元が緩んだので美味しかったみたいだ。プチトマトも食べさせてあげたりして亜紀ちゃんはこうしてたまにちさきちゃんに対していたずらっ子のような事をしている。それを見るのが私は好きだったりする。ちさきちゃんには内緒だ。

先にお弁当を食べ終えて2人にトイレに行ってくるねと席を立って廊下に出た。
お昼休みも終わりに近づいていて教室以外で食べていたり、外で遊んでいたりした生徒たちが戻ってきたりしていて人の多い廊下を進んでいると、私が向かう先の職員室やトイレがある方から早足に歩いている2人の女生徒がいた。

「先生の話長すぎ!お弁当食べてる時間ないじゃん!」
「ゆっくり食べてる時間はないかもね」

短めの黒い髪を靡かせて急足で歩いている背が高い女の子が猫目な瞳をこちらに向けた。
悠木さんだ。もう1人も身長が高いけど知らない女の子だな。

「天城さん!」

ニコニコと目を細めてこっちに向かって来た。一緒にいた女の子も悠木さんと一緒についてきて、私より身長の高い2人に迫られると圧がすごい…

「やっぱり学校で会えたね!」
「そりゃ、同じ学年だしすれ違うくらいあると思うけど…」

そんなに嬉しいのか笑顔で言ってくる彼女は親しみやすい人柄なのだろう。

「えっ!?涼くんって天城さんと友達だったの!?」

友達から『涼くん』って呼ばれてるのか…確かに身長高いし顔が整ってるしイケメン寄りだから『くん』呼びが似合うとは思う。

「そう!ウチの喫茶店にアルバイトで入ったんだよ」
「何それ!天城さんのメイド姿めっちゃ見たい!行く!次いつバイトですか!?」

まだ名前も知らない子がグイグイくる……コミュ力高い
あと、メイド喫茶ではない。ただ地味なエプロンつけてバイトしてるだけなんだけど…

「えっと、今日バイトだよ」
「そうなんですね!じゃぁ、部活終わったら行きます!!」

グイグイくる圧に押される…凄い…陽キャってこういう子の事を言うんだろうか…

「ちょっと、天城さん困ってるって」

悠木さんが窘めてくれた。助かる

「あ、ごめんなさい!私涼くんのクラスメイトで同じバスケ部の山川結(やまかわ ゆい)って言います!天城さんに知り合えてめっちゃ嬉しいです!よろしくお願いします!」

素直に謝って頭を下げて全力でお願いされた。いい子っぽい…いや、この子すごくいい子だ!確信した!
私の事知ってるみたいだけど、やっぱり学校内の有名人ってホントなのだろうか…

「天城凪沙です。こちらこそよろしくね?」
「私のことは結って呼んでください!」
「じゃぁ、私の事は凪沙でいいよ。結ちゃん」

交友関係が広がるのは素直に嬉しいので結ちゃんと握手をすると顔を赤くしながら嬉しそうに微笑んでくれた。

「私のことは涼って呼んでよ。凪沙」

隣でやりとりを見ていた悠木さんが急に便乗してきて呼び捨てになった。別に良いんだけど、ちょっと頬を膨らませているような気がする…

「わかった。よろしくね!涼ちゃん!」
「う、うん…」

ちょっと照れたような表情をする涼ちゃんはイケメンなのに可愛いって思った。カッコカワイイってやつかな?

私は『くん』呼びではなく『ちゃん』にした。女の子にはみんな『ちゃん』呼びで呼んでいるので、悠木涼もイケメン寄りでみんなから『くん』呼びされていても女の子だし『ちゃん』呼びがいいと思った。

廊下で新たな交友関係が生まれていたら、チャイムが鳴った…
2人はお弁当食べる時間無くなった!って言いながら走って教室に戻って行った。
私もトイレ行く時間が無くなって仕方なく自分の教室に入ろうとすると『美味しかったよ!!』というちさきちゃんの叫び声が廊下まで響いてて亜紀ちゃんと何かあったんだろうなって思って笑った。


球技大会のチーム分けは滞りなく決まって無事に3人でバレーボールを選択できた。残り3人のメンバーも仲が良い3人組でお互いに「よろしくね!」と挨拶をして勝つぞー!おー‼︎!!!!みたいなやる気に満ち溢れてるメンバーになった。亜紀ちゃんはクールだったけど…
割とA組ってノリが良い子が多い。今年の球技大会は楽しくなりそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...