4 / 129
10月13日(2)
しおりを挟む
「凪沙ちゃんテーブル席にお願い」
今日も艶のある長い黒髪をポニーテールにした美月さんがコーヒーをカウンターに乗せて指示を出す。
「わかりましたー」私はすぐコーヒーをテーブル席に運んで「お待たせいたしました。」と笑顔で言い静かにテーブルに置いた。今はディナー帯も終わって割と落ち着いている時間帯だ。あと1時間ほどしたら私も上がりの時間になる。
「凪沙ちゃんもだいぶ慣れてきたね」
カウンターに座る常連のおじさんに話しかけられる。いつも同じ席で難しそうな本を読んでいる。今はアンチ・オイ―――ん?兎に角難しそうな本を読んでいる。
「ありがとうございます!みなさん優しい人ばかりなのですごく働きやすいですよ」
私は笑顔で答えた。
「ちさきちゃんには感謝だよ。こんな可愛くていい子を紹介してくれたんだもん。今度来た時にはコーヒーとケーキをご馳走しなきゃ」
美月さんは目を細めて話に加わってきた。調理の方も落ち着いたらしい。片付けをしながら常連さんとお話を始めた。私も席の片付けや補充を行なっていく。
「こんにちはーーー!!」
扉についた鐘より先に元気な挨拶が店内に響き渡った。
「あ、いらっしゃいませ結ちゃん」
「凪沙ちゃんのエプロン姿可愛い!!写真撮って良い!?あ、ツーショットも撮りたい!」
相変わらずグイグイくる子でちょっとびっくりしてしまう。私が返答に困っていると結ちゃんの後ろから涼ちゃんが現れた。
「結、ここメイド喫茶じゃないから写真とか仕事中はダメでしょ。」
「えーーじゃぁ、あとで隠し撮りさせてね」
私の側によってこそっと言ってくる。言ったら隠し撮りじゃないよね?正直でいい子だけど!
「結ちゃんいらっしゃい。涼もおかえりー」
「ただいま。結が凪沙の働いてるところ見たいって付き添いで来た。」
涼ちゃんは空いているテーブル席に大きいリュックサックを置いて席に着く。結ちゃんも向かいに座って私に手招きした。
「凪沙ちゃん、こっち隣どうぞ」
結ちゃんは自分が座ってるソファの隣をポンポンと叩いて私を呼ぶ。
「結ちゃんまだ私仕事中だからね?ご注文お願いします」
微笑みながら結ちゃんに言うと
「凪沙ちゃん可愛すぎ!!毎日通いたい!カフェラテください!!」
私への褒め言葉と自分の願望と注文を叫んだ。ちゃんと注文を言ってくれるあたりやっぱりいい子だった。私はクスクス笑って向かいに座る涼ちゃんへ視線を向けた。
「涼ちゃんは何にしますか?」
涼ちゃんは私をジッと見ていたけど、ハッとしたような表情をしたあと「ブレンドで」と笑顔で答えてくれた。
私は美月さんにオーダーを通して片付けの続きする。
バシャシャシャシャシャ…………
すごく連写音が聞こえる…
これ全然隠れてないよね。スマホのカメラをこっちに向けて堂々と写真を撮りまくっている結ちゃんを見ると「こっち見たー」と喜びながら連写している…涼ちゃんは呆れ気味に「結、うるさい」と結ちゃんの様子を見ていた。
「カフェラテとブレンド凪沙ちゃんよろしくね~」
「はいー」
結ちゃんの前にカフェラテ、涼ちゃんの前にブレンドを置いて「お待たせいたしました。ごゆっくり」とにこやかに言うと、スマホのカメラをずっとこちらに向けている結ちゃん。連写音が聞こえないけど…
「結ちゃん?」
口の端がちょっと引き攣ってる気がするけど笑顔で結ちゃんの方を見る。
「凪沙ちゃん可愛い………」返事がおかしいよ?
「もしかして動画で撮ってる?」
「はい!涼くんに怒られちゃったので」
てへっと舌をちょっと出して反省の色を出してる。
なんか違う気がするけど…素直に従っているみたいだった。
結ちゃんが「凪沙ちゃんが出してくれたカフェラテ美味しい…」と呟いきながら飲んでたけど、淹れたのは美月さんなので私はホントにテーブルに置いただけで味は同じはずなんだけど…
向かいで涼ちゃんは文庫本を読みながらブレンドをブラックでそのまま飲んでいた。
カッコいい…やっぱりブラックコーヒー飲めるようになろうかな?働き始めにちょっとブラックコーヒーを飲ませてもらったけど、私にはまだ早かったのかあの苦味が苦手だった。
「あ、私帰らないと!――ご馳走様でした!」
しばらくカフェラテを飲みつつ携帯を見てニヤニヤ「可愛い…可愛い…」と呟いていた結ちゃんは時計を見て慌ててお会計をして帰って行った。今日初めて話した結ちゃんは嵐のような子で決して悪い子ではないとわかった。
「凪沙ちゃんも上がっていいわよー」
キッチンで洗い物をしていた美月さんに言われ時計を見ると上がる時間になっていた。休憩室でエプロンを取り学校の制服に着替えて美月さんに「お先に失礼します」と挨拶をしてお店を出ようとする。
「駅まで送っていくよ」
テーブル席にいた涼ちゃんが立ち上がってついてきた。
「大丈夫だよ。いつもこの時間に帰ってるし」
「外暗いから危ないでしょ」
「それなら涼ちゃんだって帰り危ないでしょ?」
「凪沙ちゃん送ってもらいなさいよ。凪沙ちゃん可愛いからいつも心配だったのよ。涼なら大丈夫!たまに男に間違われるくらいだから誰も襲わないって」
「母さん余計な事言わないで」
涼ちゃんは美月さんをちょっと睨んでからこちらに向き直って「母さんもああ言ってるしいいでしょ?」と微笑みながら言ってきた。まぁ、そこまで言われたら断るのも悪いので駅まで送ってもらうことにした。
今日も艶のある長い黒髪をポニーテールにした美月さんがコーヒーをカウンターに乗せて指示を出す。
「わかりましたー」私はすぐコーヒーをテーブル席に運んで「お待たせいたしました。」と笑顔で言い静かにテーブルに置いた。今はディナー帯も終わって割と落ち着いている時間帯だ。あと1時間ほどしたら私も上がりの時間になる。
「凪沙ちゃんもだいぶ慣れてきたね」
カウンターに座る常連のおじさんに話しかけられる。いつも同じ席で難しそうな本を読んでいる。今はアンチ・オイ―――ん?兎に角難しそうな本を読んでいる。
「ありがとうございます!みなさん優しい人ばかりなのですごく働きやすいですよ」
私は笑顔で答えた。
「ちさきちゃんには感謝だよ。こんな可愛くていい子を紹介してくれたんだもん。今度来た時にはコーヒーとケーキをご馳走しなきゃ」
美月さんは目を細めて話に加わってきた。調理の方も落ち着いたらしい。片付けをしながら常連さんとお話を始めた。私も席の片付けや補充を行なっていく。
「こんにちはーーー!!」
扉についた鐘より先に元気な挨拶が店内に響き渡った。
「あ、いらっしゃいませ結ちゃん」
「凪沙ちゃんのエプロン姿可愛い!!写真撮って良い!?あ、ツーショットも撮りたい!」
相変わらずグイグイくる子でちょっとびっくりしてしまう。私が返答に困っていると結ちゃんの後ろから涼ちゃんが現れた。
「結、ここメイド喫茶じゃないから写真とか仕事中はダメでしょ。」
「えーーじゃぁ、あとで隠し撮りさせてね」
私の側によってこそっと言ってくる。言ったら隠し撮りじゃないよね?正直でいい子だけど!
「結ちゃんいらっしゃい。涼もおかえりー」
「ただいま。結が凪沙の働いてるところ見たいって付き添いで来た。」
涼ちゃんは空いているテーブル席に大きいリュックサックを置いて席に着く。結ちゃんも向かいに座って私に手招きした。
「凪沙ちゃん、こっち隣どうぞ」
結ちゃんは自分が座ってるソファの隣をポンポンと叩いて私を呼ぶ。
「結ちゃんまだ私仕事中だからね?ご注文お願いします」
微笑みながら結ちゃんに言うと
「凪沙ちゃん可愛すぎ!!毎日通いたい!カフェラテください!!」
私への褒め言葉と自分の願望と注文を叫んだ。ちゃんと注文を言ってくれるあたりやっぱりいい子だった。私はクスクス笑って向かいに座る涼ちゃんへ視線を向けた。
「涼ちゃんは何にしますか?」
涼ちゃんは私をジッと見ていたけど、ハッとしたような表情をしたあと「ブレンドで」と笑顔で答えてくれた。
私は美月さんにオーダーを通して片付けの続きする。
バシャシャシャシャシャ…………
すごく連写音が聞こえる…
これ全然隠れてないよね。スマホのカメラをこっちに向けて堂々と写真を撮りまくっている結ちゃんを見ると「こっち見たー」と喜びながら連写している…涼ちゃんは呆れ気味に「結、うるさい」と結ちゃんの様子を見ていた。
「カフェラテとブレンド凪沙ちゃんよろしくね~」
「はいー」
結ちゃんの前にカフェラテ、涼ちゃんの前にブレンドを置いて「お待たせいたしました。ごゆっくり」とにこやかに言うと、スマホのカメラをずっとこちらに向けている結ちゃん。連写音が聞こえないけど…
「結ちゃん?」
口の端がちょっと引き攣ってる気がするけど笑顔で結ちゃんの方を見る。
「凪沙ちゃん可愛い………」返事がおかしいよ?
「もしかして動画で撮ってる?」
「はい!涼くんに怒られちゃったので」
てへっと舌をちょっと出して反省の色を出してる。
なんか違う気がするけど…素直に従っているみたいだった。
結ちゃんが「凪沙ちゃんが出してくれたカフェラテ美味しい…」と呟いきながら飲んでたけど、淹れたのは美月さんなので私はホントにテーブルに置いただけで味は同じはずなんだけど…
向かいで涼ちゃんは文庫本を読みながらブレンドをブラックでそのまま飲んでいた。
カッコいい…やっぱりブラックコーヒー飲めるようになろうかな?働き始めにちょっとブラックコーヒーを飲ませてもらったけど、私にはまだ早かったのかあの苦味が苦手だった。
「あ、私帰らないと!――ご馳走様でした!」
しばらくカフェラテを飲みつつ携帯を見てニヤニヤ「可愛い…可愛い…」と呟いていた結ちゃんは時計を見て慌ててお会計をして帰って行った。今日初めて話した結ちゃんは嵐のような子で決して悪い子ではないとわかった。
「凪沙ちゃんも上がっていいわよー」
キッチンで洗い物をしていた美月さんに言われ時計を見ると上がる時間になっていた。休憩室でエプロンを取り学校の制服に着替えて美月さんに「お先に失礼します」と挨拶をしてお店を出ようとする。
「駅まで送っていくよ」
テーブル席にいた涼ちゃんが立ち上がってついてきた。
「大丈夫だよ。いつもこの時間に帰ってるし」
「外暗いから危ないでしょ」
「それなら涼ちゃんだって帰り危ないでしょ?」
「凪沙ちゃん送ってもらいなさいよ。凪沙ちゃん可愛いからいつも心配だったのよ。涼なら大丈夫!たまに男に間違われるくらいだから誰も襲わないって」
「母さん余計な事言わないで」
涼ちゃんは美月さんをちょっと睨んでからこちらに向き直って「母さんもああ言ってるしいいでしょ?」と微笑みながら言ってきた。まぁ、そこまで言われたら断るのも悪いので駅まで送ってもらうことにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。
甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。
平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは──
学園一の美少女・黒瀬葵。
なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。
冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。
最初はただの勘違いだったはずの関係。
けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。
ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、
焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる