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10月27日(8)
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涼ちゃんが勢いよく手を合わせた。
「ご馳走様でした!!今日も美味しかったよ」
「うん。ありがとう」
「ううん。お弁当作ってきてくれてありがとう」
ニコニコと嬉しそうに私にお礼を言ってくれる。
ペットボトルのお茶を一口飲んで私たちの間に沈黙が訪れた。
アイスノンで冷やされた左手はだいぶ痛みも落ち着いてきていたけど、涙で濡れた顔は多分まだ泣いた後の顔をしているだろう。
私は覚悟を決めて涼ちゃんに話しかけた。
「あ、あの……やっぱりごめんね。いっぱい練習したのに……」
「………」
「……頑張ったのに…無駄になって………」
『頑張るだけ無駄』それは涼ちゃんが言った言葉だった。それを私が否定した。
なのに今私は頑張っても無駄だったと言っている。1番私が言ってはダメな言葉だ。
でも、実際無駄だったじゃないか……練習をいっぱいしてきて、みんなを巻き込んで……それなのに怪我をして私が全部ダメにしたんだ。A組は棄権してB組との試合もできなくて、1勝もできないで球技大会は終わった。無駄だった!!
私が打ち壊した!!
私はボロボロと勝手に溢れてくる涙をそのままにして俯いた。感情がぐちゃぐちゃになって歯を食いしばって右手はギュゥと握りしめていた。
「凪沙。顔上げて?」
ブンブンと首を横に振った。
涼ちゃんに申し訳なくて……私が頑張っても無駄じゃないって否定したのにそれを今私は無駄だったと言った。
最低な人間だと思う。
涙はずっとボロボロと流れて止まる気配はない。
「凪沙……」
涼ちゃんの手が私の頬に触れて俯いていた顔を涼ちゃんの方に向けられる。
猫目で少し上がった目が細められて笑顔で私を見つめてくる。
タオルを顔に優しく押し当て流れてる涙を堰き止めた。
「可愛い顔が台無しだよ?」
声が漏れそうなのを堪えて、それでも喉がなって、とめどなく流れてくる涙でタオルが濡れていく。
私は今酷い事を言ったのに涼ちゃんはずっとずっと優しくタオルで涙を抑えてくれる。
「無駄じゃないよ?」
涼ちゃんが柔らかい口調で話し始めた。
「凪沙が頑張ってきたのは無駄じゃない。凪沙が頑張ってるから私も頑張ってるんだよ?今までで1番楽しい球技大会だよ。凪沙のクラスと試合ができなかったのは残念だけど、練習から楽しかった」
だからさ……と涼ちゃんは私の目元を抑えていたタオルを外した。
「無駄だなんて言わないで?」
「りょう……ちゃ……」
よしよしと頭を撫でられる。優しい涼ちゃんにまた涙が出た。
「でも……私のせいでA組は棄権することになっちゃったんだよ!?私が!!怪我なんてするから!!」
「怪我は仕方ないよ…凪沙が無理して試合に出る方が私は嫌だな」
「それじゃ……今まで…頑張ってみんなで練習してきたのが……無駄になっちゃう………」
涙が止まらなくて袖で目元を抑えた。涼ちゃんの言ってることはわかる。ちさきちゃんや亜紀ちゃんがもし怪我していたら無理してまで試合に出てほしくない。でも、私はみんなを練習に誘って、一緒に頑張ろうって言ってきたんだ。
それを私が壊しちゃったんだから……だから………
涼ちゃんが目元に当てていた私の腕を引っ張った。
優しく引き寄せられて、涼ちゃんのもう片方の手が私の頭に添えられ体ごと涼ちゃんの方に倒れ込んだ。
気づいた時には抱きしめられていた。
背中に回された手がぎゅっと強くなる。
「無駄じゃない。頑張ったのは無駄じゃないんだよ」
耳元で優しく諭すように語りかけてくる。
『頑張るだけ無駄』って言っていたあの時とは逆の立場になって、今は涼ちゃんが“頑張ったのは無駄じゃない“と言ってくれている。
私はそれだけでも救われた気がした。涼ちゃんの気持ちが少しでも変わってくれているのを実感できたから……
流れていた涙が涼ちゃんの肩を濡らした。
「見ててよ!!絶対優勝するから!!凪沙といっぱい練習して頑張った成果を見せるから!!」
そう言って涼ちゃんは私を力強く抱きしめた。
多少落ち着いた頃、左手に使っていたアイスノンを目元にあてて指並みに腫れていた目元の腫れを抑えていた。
「泣き腫らした顔で戻れないよぉ」
「そこまで気にならないよ?」
顔を上に向けて目元にアイスノンを乗っけていた私を覗き込んできた。
腫れが多少引いたとしても、目の赤みは消えない。
「本当に?」
「うんうん。多少赤いけどサングラスかければ大丈夫」
「サングラスなんてないし学校でかけてる人いないよぉ!!」
いつになったら戻れるのかわからなくてため息をついた。
「そういえば、涼ちゃんって次の試合何時からなの?」
「お昼終わってすぐかな?」
「えっ!?」
時計を見ればあと10分ほどでお昼休みが終わる時間だった。
「ごめんね。涼ちゃん……試合見にいけなくて……」
「えっ!!いや、大丈夫だよ本当に!!」
「ごめんね……最後の試合には間に合わせるから……」
「サングラス無くても全然大丈夫だから!!だから見にきてよーー!!」
10分じゃ目の赤みまでは取れないだろうけど、目立たない遠くからなら大丈夫かな……
お昼休みのチャイムが鳴るまで私はアイスノンを目元に当てていた。
「ご馳走様でした!!今日も美味しかったよ」
「うん。ありがとう」
「ううん。お弁当作ってきてくれてありがとう」
ニコニコと嬉しそうに私にお礼を言ってくれる。
ペットボトルのお茶を一口飲んで私たちの間に沈黙が訪れた。
アイスノンで冷やされた左手はだいぶ痛みも落ち着いてきていたけど、涙で濡れた顔は多分まだ泣いた後の顔をしているだろう。
私は覚悟を決めて涼ちゃんに話しかけた。
「あ、あの……やっぱりごめんね。いっぱい練習したのに……」
「………」
「……頑張ったのに…無駄になって………」
『頑張るだけ無駄』それは涼ちゃんが言った言葉だった。それを私が否定した。
なのに今私は頑張っても無駄だったと言っている。1番私が言ってはダメな言葉だ。
でも、実際無駄だったじゃないか……練習をいっぱいしてきて、みんなを巻き込んで……それなのに怪我をして私が全部ダメにしたんだ。A組は棄権してB組との試合もできなくて、1勝もできないで球技大会は終わった。無駄だった!!
私が打ち壊した!!
私はボロボロと勝手に溢れてくる涙をそのままにして俯いた。感情がぐちゃぐちゃになって歯を食いしばって右手はギュゥと握りしめていた。
「凪沙。顔上げて?」
ブンブンと首を横に振った。
涼ちゃんに申し訳なくて……私が頑張っても無駄じゃないって否定したのにそれを今私は無駄だったと言った。
最低な人間だと思う。
涙はずっとボロボロと流れて止まる気配はない。
「凪沙……」
涼ちゃんの手が私の頬に触れて俯いていた顔を涼ちゃんの方に向けられる。
猫目で少し上がった目が細められて笑顔で私を見つめてくる。
タオルを顔に優しく押し当て流れてる涙を堰き止めた。
「可愛い顔が台無しだよ?」
声が漏れそうなのを堪えて、それでも喉がなって、とめどなく流れてくる涙でタオルが濡れていく。
私は今酷い事を言ったのに涼ちゃんはずっとずっと優しくタオルで涙を抑えてくれる。
「無駄じゃないよ?」
涼ちゃんが柔らかい口調で話し始めた。
「凪沙が頑張ってきたのは無駄じゃない。凪沙が頑張ってるから私も頑張ってるんだよ?今までで1番楽しい球技大会だよ。凪沙のクラスと試合ができなかったのは残念だけど、練習から楽しかった」
だからさ……と涼ちゃんは私の目元を抑えていたタオルを外した。
「無駄だなんて言わないで?」
「りょう……ちゃ……」
よしよしと頭を撫でられる。優しい涼ちゃんにまた涙が出た。
「でも……私のせいでA組は棄権することになっちゃったんだよ!?私が!!怪我なんてするから!!」
「怪我は仕方ないよ…凪沙が無理して試合に出る方が私は嫌だな」
「それじゃ……今まで…頑張ってみんなで練習してきたのが……無駄になっちゃう………」
涙が止まらなくて袖で目元を抑えた。涼ちゃんの言ってることはわかる。ちさきちゃんや亜紀ちゃんがもし怪我していたら無理してまで試合に出てほしくない。でも、私はみんなを練習に誘って、一緒に頑張ろうって言ってきたんだ。
それを私が壊しちゃったんだから……だから………
涼ちゃんが目元に当てていた私の腕を引っ張った。
優しく引き寄せられて、涼ちゃんのもう片方の手が私の頭に添えられ体ごと涼ちゃんの方に倒れ込んだ。
気づいた時には抱きしめられていた。
背中に回された手がぎゅっと強くなる。
「無駄じゃない。頑張ったのは無駄じゃないんだよ」
耳元で優しく諭すように語りかけてくる。
『頑張るだけ無駄』って言っていたあの時とは逆の立場になって、今は涼ちゃんが“頑張ったのは無駄じゃない“と言ってくれている。
私はそれだけでも救われた気がした。涼ちゃんの気持ちが少しでも変わってくれているのを実感できたから……
流れていた涙が涼ちゃんの肩を濡らした。
「見ててよ!!絶対優勝するから!!凪沙といっぱい練習して頑張った成果を見せるから!!」
そう言って涼ちゃんは私を力強く抱きしめた。
多少落ち着いた頃、左手に使っていたアイスノンを目元にあてて指並みに腫れていた目元の腫れを抑えていた。
「泣き腫らした顔で戻れないよぉ」
「そこまで気にならないよ?」
顔を上に向けて目元にアイスノンを乗っけていた私を覗き込んできた。
腫れが多少引いたとしても、目の赤みは消えない。
「本当に?」
「うんうん。多少赤いけどサングラスかければ大丈夫」
「サングラスなんてないし学校でかけてる人いないよぉ!!」
いつになったら戻れるのかわからなくてため息をついた。
「そういえば、涼ちゃんって次の試合何時からなの?」
「お昼終わってすぐかな?」
「えっ!?」
時計を見ればあと10分ほどでお昼休みが終わる時間だった。
「ごめんね。涼ちゃん……試合見にいけなくて……」
「えっ!!いや、大丈夫だよ本当に!!」
「ごめんね……最後の試合には間に合わせるから……」
「サングラス無くても全然大丈夫だから!!だから見にきてよーー!!」
10分じゃ目の赤みまでは取れないだろうけど、目立たない遠くからなら大丈夫かな……
お昼休みのチャイムが鳴るまで私はアイスノンを目元に当てていた。
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