36 / 129
11月15日(4)
しおりを挟む
「わざわざ家まで送ってくれなくても良かったのに」
「夜道を女の子1人で歩くの危ないでしょ?凪沙を1人で帰すと母さんにも怒られちゃうしね」
「涼ちゃんだって女の子なのに……」
最近は随分と日が暮れるのが早くなった。
2人で電車に乗って私の家がある最寄り駅で2人で降りた。今日は一日ずっと涼ちゃんと手を繋いで歩いていて、寒くなった空気で冷たくなる手も右手だけはずっと暖かかった。
住宅街に入って行くにつれて人通りも少なくポツポツとある街灯が暗くなった道を照らして、家までの道標になっている。
涼ちゃんが私の家まで送ってくれるのは何回目だろうか。バイト終わりは毎回涼ちゃんが駅か家の近くまで送ってくれて最近ではそれが当たり前のようになってきている。
美月さんと涼ちゃんの好意に甘えてしまっていて、駅までならまだしもこうして家の近くまで送ってくれるのは申し訳なさも出てくる。それでも涼ちゃんは嫌な顔ひとつせずに毎回送ってくれるのだ。
いつもと違うのはこうして手を繋いでいる事。
普通に2人で映画を観てカフェでおしゃべりするだけだったら、ただのおでかけだったのが今日はずっと2人で歩く時は手を繋いでいた。それが今日はデートだと意識させられる。
家が近づくたびに、ポツポツある街灯を通り過ぎるたびに2人の間に空白の時間が生まれる。
居心地が悪いわけじゃない。ただ今日が終わりに近づいているだけ……
お昼ご飯がクレープでも、ちょっと過激なエッチシーンがある映画も、2人で恋バナや他愛ない話をしたカフェも楽しかった。
涼ちゃんと繋いでいる手が少しキュッと握られる感覚がした。
思わず隣にいる涼ちゃんを見上げると柔らかいく細められた瞳と目が合った。
「今日は楽しかったよ」
「うん。私も楽しかったよ。改めて優勝おめでとう。がんばったね」
今日のお出かけは涼ちゃんががんばった成果によるもので、球技大会で優勝したらデートというお願いを私が受け入れた。多分優勝していなくてもあんなにがんばったところを見ているし、私も涼ちゃんに迷惑をかけてしまったからきっとお出かけはしたと思うけど………
「凪沙。……私の事、意識してくれた?」
「え?」
繋いでいる手が少し強くなった。
「クレープ……私があげたクレープ、食べてどうだった?」
「……あま…かった」
涼ちゃんの眉が少し下がった。
「映画……私と一緒に観てどうだった?」
「………恥ずかしかったかな?」
多分涼ちゃんはそういうことを言っているんじゃないんだと気づいた。
球技大会が終わった後、2人で特別教室で話した時。涼ちゃんの事を恋愛対象としてみているか聞かれた。あれから少し経った今、結局私は答えを出せずに放棄して普通に過ごしていた。
「……こうやって手を繋いでいてどうだった?」
「デート…なんだなって思った……」
繋いでいた手を引かれて人気のない路地裏に連れて行かれる。
背中に塀が当たる。涼ちゃんが私の瞳を覗き込むようにして見つめてくる。
「意識した?」
「わ、わからないよ……恋愛対象として、意識するなんて……どうやったらいいか、わからない」
ずっと放棄していたんだ。わかるはずない。
私は涼ちゃんから瞳を逸らして俯いた。
涼ちゃんはこんなにもがんばってくれているのに……私はそれを考えようともしていなかった。
私の頬を涼ちゃんが優しく撫でてくる。徐々に下がってくる手は私の顎を軽く掴んで顔を上げさせる。
涼ちゃんの被ったキャップで街灯の灯りが遮られた黒い瞳とまた目が合った。
「私の事、みて?」
私はジッと涼ちゃんの瞳を見つめた。
徐々に涼ちゃんの顔が近づいてきているような気がした。
掴まれている顎は離してはくれない。
唇が触れそうな後数センチのところで涼ちゃんは止まった。
「私の事、意識して?」
チュッ
小さく涼ちゃんが呟いた後、唇に柔らかい感触を感じた。
すぐにそれはキスだと気づいた。
「私の事、ちゃんとみて?」
ちゅ、ちゅっと角度を変えながら何度も唇を押し付けてくる。
「ん……りょ……んぁ、ちゃ…」
「な、ぎさ……ん」
下唇を食まれたり、上唇を吸われたり、何度もキスを繰り返す。
女の子の唇ってこんなに柔らかいんだ……それにキスってこんなに気持ちよかったかな……
涼ちゃんが私の感触を楽しむように何度も押し当ててくる。
繋がれたままの右手は絡まるように握られて、いつの間にか顎を掴まれていた手は、私の頬を優しく撫でながら頭の方に移動していく。
「はぁ、りょ………んっ……」
息継ぎもままならない。
頭に移動した涼ちゃんの手が私の頭を優しく撫でた。
「んん!!!」
撫でられたのは頭なのに背中がゾクゾクっと疼いて涼ちゃんの肩を思いっきり押した。
「はっ、はぁ…はぁ……はぁ」
「はぁはぁ……」
涼ちゃんの顔はキャップで影を落としていても、首や耳まで真っ赤になっているのがわかる。私も多分顔を真っ赤にしているんだろう。顔が熱い。
「ご、ごめん……やりすぎた……」
「あ、いや、そうじゃなくて」
拒絶されたと思ったのか、不安そうな瞳を私に向けながら謝ってくる。
背中の謎のゾクゾク感に耐えられなかったとかちょっと説明しにくくて私も濁した返答になってしまった。
涼ちゃんのキスは別に嫌じゃなかった……むしろ気持ち良いくらいで……
私は涼ちゃんのキスが嫌じゃないと感じる自分にも驚いた。
涼ちゃんは顔を隠すようにキャップを深く被り直した。
「でも、凪沙にはちゃんと意識してもらいたくて……」
「う、うん」
「じゃ、じゃあ帰るね!また明日!!」
涼ちゃんは駅までの道を駆けて戻っていった。
涼ちゃんの唇には新色のリップがうっすら移っていた。
「夜道を女の子1人で歩くの危ないでしょ?凪沙を1人で帰すと母さんにも怒られちゃうしね」
「涼ちゃんだって女の子なのに……」
最近は随分と日が暮れるのが早くなった。
2人で電車に乗って私の家がある最寄り駅で2人で降りた。今日は一日ずっと涼ちゃんと手を繋いで歩いていて、寒くなった空気で冷たくなる手も右手だけはずっと暖かかった。
住宅街に入って行くにつれて人通りも少なくポツポツとある街灯が暗くなった道を照らして、家までの道標になっている。
涼ちゃんが私の家まで送ってくれるのは何回目だろうか。バイト終わりは毎回涼ちゃんが駅か家の近くまで送ってくれて最近ではそれが当たり前のようになってきている。
美月さんと涼ちゃんの好意に甘えてしまっていて、駅までならまだしもこうして家の近くまで送ってくれるのは申し訳なさも出てくる。それでも涼ちゃんは嫌な顔ひとつせずに毎回送ってくれるのだ。
いつもと違うのはこうして手を繋いでいる事。
普通に2人で映画を観てカフェでおしゃべりするだけだったら、ただのおでかけだったのが今日はずっと2人で歩く時は手を繋いでいた。それが今日はデートだと意識させられる。
家が近づくたびに、ポツポツある街灯を通り過ぎるたびに2人の間に空白の時間が生まれる。
居心地が悪いわけじゃない。ただ今日が終わりに近づいているだけ……
お昼ご飯がクレープでも、ちょっと過激なエッチシーンがある映画も、2人で恋バナや他愛ない話をしたカフェも楽しかった。
涼ちゃんと繋いでいる手が少しキュッと握られる感覚がした。
思わず隣にいる涼ちゃんを見上げると柔らかいく細められた瞳と目が合った。
「今日は楽しかったよ」
「うん。私も楽しかったよ。改めて優勝おめでとう。がんばったね」
今日のお出かけは涼ちゃんががんばった成果によるもので、球技大会で優勝したらデートというお願いを私が受け入れた。多分優勝していなくてもあんなにがんばったところを見ているし、私も涼ちゃんに迷惑をかけてしまったからきっとお出かけはしたと思うけど………
「凪沙。……私の事、意識してくれた?」
「え?」
繋いでいる手が少し強くなった。
「クレープ……私があげたクレープ、食べてどうだった?」
「……あま…かった」
涼ちゃんの眉が少し下がった。
「映画……私と一緒に観てどうだった?」
「………恥ずかしかったかな?」
多分涼ちゃんはそういうことを言っているんじゃないんだと気づいた。
球技大会が終わった後、2人で特別教室で話した時。涼ちゃんの事を恋愛対象としてみているか聞かれた。あれから少し経った今、結局私は答えを出せずに放棄して普通に過ごしていた。
「……こうやって手を繋いでいてどうだった?」
「デート…なんだなって思った……」
繋いでいた手を引かれて人気のない路地裏に連れて行かれる。
背中に塀が当たる。涼ちゃんが私の瞳を覗き込むようにして見つめてくる。
「意識した?」
「わ、わからないよ……恋愛対象として、意識するなんて……どうやったらいいか、わからない」
ずっと放棄していたんだ。わかるはずない。
私は涼ちゃんから瞳を逸らして俯いた。
涼ちゃんはこんなにもがんばってくれているのに……私はそれを考えようともしていなかった。
私の頬を涼ちゃんが優しく撫でてくる。徐々に下がってくる手は私の顎を軽く掴んで顔を上げさせる。
涼ちゃんの被ったキャップで街灯の灯りが遮られた黒い瞳とまた目が合った。
「私の事、みて?」
私はジッと涼ちゃんの瞳を見つめた。
徐々に涼ちゃんの顔が近づいてきているような気がした。
掴まれている顎は離してはくれない。
唇が触れそうな後数センチのところで涼ちゃんは止まった。
「私の事、意識して?」
チュッ
小さく涼ちゃんが呟いた後、唇に柔らかい感触を感じた。
すぐにそれはキスだと気づいた。
「私の事、ちゃんとみて?」
ちゅ、ちゅっと角度を変えながら何度も唇を押し付けてくる。
「ん……りょ……んぁ、ちゃ…」
「な、ぎさ……ん」
下唇を食まれたり、上唇を吸われたり、何度もキスを繰り返す。
女の子の唇ってこんなに柔らかいんだ……それにキスってこんなに気持ちよかったかな……
涼ちゃんが私の感触を楽しむように何度も押し当ててくる。
繋がれたままの右手は絡まるように握られて、いつの間にか顎を掴まれていた手は、私の頬を優しく撫でながら頭の方に移動していく。
「はぁ、りょ………んっ……」
息継ぎもままならない。
頭に移動した涼ちゃんの手が私の頭を優しく撫でた。
「んん!!!」
撫でられたのは頭なのに背中がゾクゾクっと疼いて涼ちゃんの肩を思いっきり押した。
「はっ、はぁ…はぁ……はぁ」
「はぁはぁ……」
涼ちゃんの顔はキャップで影を落としていても、首や耳まで真っ赤になっているのがわかる。私も多分顔を真っ赤にしているんだろう。顔が熱い。
「ご、ごめん……やりすぎた……」
「あ、いや、そうじゃなくて」
拒絶されたと思ったのか、不安そうな瞳を私に向けながら謝ってくる。
背中の謎のゾクゾク感に耐えられなかったとかちょっと説明しにくくて私も濁した返答になってしまった。
涼ちゃんのキスは別に嫌じゃなかった……むしろ気持ち良いくらいで……
私は涼ちゃんのキスが嫌じゃないと感じる自分にも驚いた。
涼ちゃんは顔を隠すようにキャップを深く被り直した。
「でも、凪沙にはちゃんと意識してもらいたくて……」
「う、うん」
「じゃ、じゃあ帰るね!また明日!!」
涼ちゃんは駅までの道を駆けて戻っていった。
涼ちゃんの唇には新色のリップがうっすら移っていた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。
甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。
平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは──
学園一の美少女・黒瀬葵。
なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。
冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。
最初はただの勘違いだったはずの関係。
けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。
ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、
焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる