アナグラムの勇者 ~異世界を書き換えるリライトスキル~

ぎゃもーい

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第二章 「神に愛されなかった者」

#31.5閑話 ミヤの一日 (挿絵有り)

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※本編にあんま関係ない閑話です(異世界4日目のミヤ視点)


 手元にあるお金を見ながら、ミヤは思う。

「どないしよかな」

 休み。それは一日自由ということを意味する。
 もちろんトラッキーの看病はしなくてはいけないのだが、付きっきりで看病するほどでもない。

 言ってしまえば一日のほとんどが手持無沙汰だということだ。

「トラッキーちょいと出かけてくるで。大人しくしといてな」

 少しぶらぶらしようと、ミヤは立ち上がる。
 トラッキーが精の付く食べ物を探しついでに、街の探索に行くことにした。

 街は相変わらず賑やかだった。特に市場付近は凄い賑わいで人々でごった返している。
 それはどことなく、あの球場の雰囲気をミヤに思い出させた。

「タイガースは昨日は勝ったんかな?」

 当たり前ではあるが、異世界には野球がなかった。
 ミヤにとっては一番の趣味である野球を奪われ、どこか心の中で火種がくすぶっているのも確かだ。

「見るのは無理やろけど、せめてやりたいなぁ」

 アキラがピッチャーでうちがバッター。
 ヘルラルラ平原とか気持ちいい場所でやれたら最高やろな。

 野球をやっている自分たちの姿を想像すると、自然とミヤから笑みが零れる。

「アキラも休めばよかったのにな」

 ミヤは自分の言葉にいやいやと首を振る。

 彼は間違いなく休まないだろうと、ミヤ自身が一番分かっていた。
 無駄に責任感は強く優しいが、不器用な彼。

 そしてどこかうちと似てる。
 だから馬が合うのだろうとミヤは思うが、これをいったら怒られるだろうともミヤは思った。

「俺がお前と似てるはずないだろ――あー言いそうやわ」

 アキラの声真似をしながら、ミヤは苦笑する。
 そんな彼は今どうしているのだろうか。無事だろうか。

「ま、大丈夫やろ」

 いつかこの世界でも彼と野球をやれることを信じて。
 ミヤはいつしか、野球の道具を代用できそうなものを自然と探し始めていた。


 * * *


「へー、スライム玉って普通に売ってるんやね」

 市場から離れ、雑貨品のようなものが売っている場所へとミヤは来ていた。
 そして見つけたのは色とりどりで大きさが異なるスライム玉を売る店。

「これ野球ボールみたいや」

 ミヤは結局、白いスライム玉とトラッキーの遊び用に大きいキングスライム玉と呼ばれるものを買うことにした。

「バットはアキラが持っているこんぼうで代用できるやろしな」

 その後、その周辺をぶらぶらしたミヤは、野球熱が高ぶっていた事も相まって、虎の置物を買ってしまう。そしたらおまけでその弟子が作ったといわれる変な置物も貰ってしまった。

「……兎ってこれが兎って」

 いらないと言えなかったその置物を持ちながら、手に余る品々を一瞥すると、ミヤはようやく本来の目的を思い出す。

「くいもんや!」

 ミヤは再び、市場付近へと向かう。
 様々な食材が溢れるそこでミヤのお目当ては"肉"だった。

「虎は肉食やからな」

 何となくそれを探していると、ミヤはあるいい匂いにつられ、その店の前へ辿り着く。

 それは鳥の丸焼きを売る店だった。
 鶏より小ぶりなそれはホロホロ鳥というモンスターの食べ物らしい。

「おいしそうやね」

 皮の焼ける香ばしい匂いが鼻へと届くと、じゅるりとよだれが出た。
 思わず口から溢れそうになったそれを拭こうとすると、右手に持っていたそれの存在に気付く。

 それは虎の置物。
 そして、目の前に見えるのは鳥。

「――っ」 

 チカチカと視界と点滅すると、ミヤの脳内にある記憶が呼び起こされる。

 それは忌まわしき記憶。あってはならない敗戦。
 ミヤにとって、虎党にとって、忘れたいもの。
 ネットから消し去りたい、うざったらしいネタ。

「――おじさん、33個くれーな」

 雪辱はうちが晴らすと、ミヤは目をギラギラさせる。

 とはいえ、こちらはミヤとアキラ、そしてトラッキーを合わせても3。
 あの数字通りとはならなかったが、ミヤは雪辱に燃えていた。

かもめは、うちが、狩ったる」

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