33 / 63
第二章 「神に愛されなかった者」
#31.5閑話 ミヤの一日 (挿絵有り)
しおりを挟む
※本編にあんま関係ない閑話です(異世界4日目のミヤ視点)
手元にあるお金を見ながら、ミヤは思う。
「どないしよかな」
休み。それは一日自由ということを意味する。
もちろんトラッキーの看病はしなくてはいけないのだが、付きっきりで看病するほどでもない。
言ってしまえば一日のほとんどが手持無沙汰だということだ。
「トラッキーちょいと出かけてくるで。大人しくしといてな」
少しぶらぶらしようと、ミヤは立ち上がる。
トラッキーが精の付く食べ物を探しついでに、街の探索に行くことにした。
街は相変わらず賑やかだった。特に市場付近は凄い賑わいで人々でごった返している。
それはどことなく、あの球場の雰囲気をミヤに思い出させた。
「タイガースは昨日は勝ったんかな?」
当たり前ではあるが、異世界には野球がなかった。
ミヤにとっては一番の趣味である野球を奪われ、どこか心の中で火種がくすぶっているのも確かだ。
「見るのは無理やろけど、せめてやりたいなぁ」
アキラがピッチャーでうちがバッター。
ヘルラルラ平原とか気持ちいい場所でやれたら最高やろな。
野球をやっている自分たちの姿を想像すると、自然とミヤから笑みが零れる。
「アキラも休めばよかったのにな」
ミヤは自分の言葉にいやいやと首を振る。
彼は間違いなく休まないだろうと、ミヤ自身が一番分かっていた。
無駄に責任感は強く優しいが、不器用な彼。
そしてどこかうちと似てる。
だから馬が合うのだろうとミヤは思うが、これをいったら怒られるだろうともミヤは思った。
「俺がお前と似てるはずないだろ――あー言いそうやわ」
アキラの声真似をしながら、ミヤは苦笑する。
そんな彼は今どうしているのだろうか。無事だろうか。
「ま、大丈夫やろ」
いつかこの世界でも彼と野球をやれることを信じて。
ミヤはいつしか、野球の道具を代用できそうなものを自然と探し始めていた。
* * *
「へー、スライム玉って普通に売ってるんやね」
市場から離れ、雑貨品のようなものが売っている場所へとミヤは来ていた。
そして見つけたのは色とりどりで大きさが異なるスライム玉を売る店。
「これ野球ボールみたいや」
ミヤは結局、白いスライム玉とトラッキーの遊び用に大きいキングスライム玉と呼ばれるものを買うことにした。
「バットはアキラが持っているこんぼうで代用できるやろしな」
その後、その周辺をぶらぶらしたミヤは、野球熱が高ぶっていた事も相まって、虎の置物を買ってしまう。そしたらおまけでその弟子が作ったといわれる変な置物も貰ってしまった。
「……兎ってこれが兎って」
いらないと言えなかったその置物を持ちながら、手に余る品々を一瞥すると、ミヤはようやく本来の目的を思い出す。
「くいもんや!」
ミヤは再び、市場付近へと向かう。
様々な食材が溢れるそこでミヤのお目当ては"肉"だった。
「虎は肉食やからな」
何となくそれを探していると、ミヤはあるいい匂いにつられ、その店の前へ辿り着く。
それは鳥の丸焼きを売る店だった。
鶏より小ぶりなそれはホロホロ鳥というモンスターの食べ物らしい。
「おいしそうやね」
皮の焼ける香ばしい匂いが鼻へと届くと、じゅるりとよだれが出た。
思わず口から溢れそうになったそれを拭こうとすると、右手に持っていたそれの存在に気付く。
それは虎の置物。
そして、目の前に見えるのは鳥。
「――っ」
チカチカと視界と点滅すると、ミヤの脳内にある記憶が呼び起こされる。
それは忌まわしき記憶。あってはならない敗戦。
ミヤにとって、虎党にとって、忘れたいもの。
ネットから消し去りたい、うざったらしいネタ。
「――おじさん、33個くれーな」
雪辱はうちが晴らすと、ミヤは目をギラギラさせる。
とはいえ、こちらはミヤとアキラ、そしてトラッキーを合わせても3。
あの数字通りとはならなかったが、ミヤは雪辱に燃えていた。
「鳥は、うちが、狩ったる」
手元にあるお金を見ながら、ミヤは思う。
「どないしよかな」
休み。それは一日自由ということを意味する。
もちろんトラッキーの看病はしなくてはいけないのだが、付きっきりで看病するほどでもない。
言ってしまえば一日のほとんどが手持無沙汰だということだ。
「トラッキーちょいと出かけてくるで。大人しくしといてな」
少しぶらぶらしようと、ミヤは立ち上がる。
トラッキーが精の付く食べ物を探しついでに、街の探索に行くことにした。
街は相変わらず賑やかだった。特に市場付近は凄い賑わいで人々でごった返している。
それはどことなく、あの球場の雰囲気をミヤに思い出させた。
「タイガースは昨日は勝ったんかな?」
当たり前ではあるが、異世界には野球がなかった。
ミヤにとっては一番の趣味である野球を奪われ、どこか心の中で火種がくすぶっているのも確かだ。
「見るのは無理やろけど、せめてやりたいなぁ」
アキラがピッチャーでうちがバッター。
ヘルラルラ平原とか気持ちいい場所でやれたら最高やろな。
野球をやっている自分たちの姿を想像すると、自然とミヤから笑みが零れる。
「アキラも休めばよかったのにな」
ミヤは自分の言葉にいやいやと首を振る。
彼は間違いなく休まないだろうと、ミヤ自身が一番分かっていた。
無駄に責任感は強く優しいが、不器用な彼。
そしてどこかうちと似てる。
だから馬が合うのだろうとミヤは思うが、これをいったら怒られるだろうともミヤは思った。
「俺がお前と似てるはずないだろ――あー言いそうやわ」
アキラの声真似をしながら、ミヤは苦笑する。
そんな彼は今どうしているのだろうか。無事だろうか。
「ま、大丈夫やろ」
いつかこの世界でも彼と野球をやれることを信じて。
ミヤはいつしか、野球の道具を代用できそうなものを自然と探し始めていた。
* * *
「へー、スライム玉って普通に売ってるんやね」
市場から離れ、雑貨品のようなものが売っている場所へとミヤは来ていた。
そして見つけたのは色とりどりで大きさが異なるスライム玉を売る店。
「これ野球ボールみたいや」
ミヤは結局、白いスライム玉とトラッキーの遊び用に大きいキングスライム玉と呼ばれるものを買うことにした。
「バットはアキラが持っているこんぼうで代用できるやろしな」
その後、その周辺をぶらぶらしたミヤは、野球熱が高ぶっていた事も相まって、虎の置物を買ってしまう。そしたらおまけでその弟子が作ったといわれる変な置物も貰ってしまった。
「……兎ってこれが兎って」
いらないと言えなかったその置物を持ちながら、手に余る品々を一瞥すると、ミヤはようやく本来の目的を思い出す。
「くいもんや!」
ミヤは再び、市場付近へと向かう。
様々な食材が溢れるそこでミヤのお目当ては"肉"だった。
「虎は肉食やからな」
何となくそれを探していると、ミヤはあるいい匂いにつられ、その店の前へ辿り着く。
それは鳥の丸焼きを売る店だった。
鶏より小ぶりなそれはホロホロ鳥というモンスターの食べ物らしい。
「おいしそうやね」
皮の焼ける香ばしい匂いが鼻へと届くと、じゅるりとよだれが出た。
思わず口から溢れそうになったそれを拭こうとすると、右手に持っていたそれの存在に気付く。
それは虎の置物。
そして、目の前に見えるのは鳥。
「――っ」
チカチカと視界と点滅すると、ミヤの脳内にある記憶が呼び起こされる。
それは忌まわしき記憶。あってはならない敗戦。
ミヤにとって、虎党にとって、忘れたいもの。
ネットから消し去りたい、うざったらしいネタ。
「――おじさん、33個くれーな」
雪辱はうちが晴らすと、ミヤは目をギラギラさせる。
とはいえ、こちらはミヤとアキラ、そしてトラッキーを合わせても3。
あの数字通りとはならなかったが、ミヤは雪辱に燃えていた。
「鳥は、うちが、狩ったる」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
