取り巻き子息と男爵令嬢の末路

基本二度寝

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「いやですわ。殿下ったら」

今日もは、私の婚約者である、王太子殿下と仲睦まじく過ごしているようだった。

殿下の婚約者としての立場から、何度咎め、忠告を与えてもまったく聞き入れてもらえない。

彼女、男爵令嬢のミリルは最近平民から男爵家の養女となった娘だった。
男爵が産ませた庶子なのか、その美しい見た目を気に入られて養女にしたのかまではわからない。
彼女の振る舞いをみれば、利用価値があると考えて引き取られたのは明白だけれども。

しかし生まれのせいか、彼女の貴族としての常識は欠如している。
ある程度教育されてからこの貴族学園に編入している筈なのだが、殿方との距離は近く、相手に婚約者がいようがいまいが、爵位が高かろうが低かろうが、まるで客引き娼婦のように腕に手を絡めて馴れ馴れしく話しかける。

良識のある多くの殿方は、上面の笑みを浮かべて距離を取って彼女と接している。
貴族は彼女のようにわかり易く感情を顔には出すことはない。
あの男爵令嬢は、多くの殿方に迷惑がられていることにはまるで気づいていないのだろう。

だが、少数の殿方は彼女の振る舞いにも悪い気をしていない。
王太子殿下、騎士団長子息、宰相子息、魔法師団長子息、彼らがその筆頭だ。

王族とそれに仕える重職の方々の子息ばかりが彼女の存在に興味を示した。
…由々しき事態である。

彼らの前に立ち、意見を申し上げられるのは身分的にも、立場的にも私しかいなかった。
男爵令嬢に何度注意しても収まらず、時には手を引いて力ずくで彼らから引き離したが、勝手なことをするなと、こちらが責められる事になった。



「…もうよろしいのではないですか?」

男爵令嬢の取り巻きと化した彼らの婚約者であるご令嬢方は、私に優しく声をかけてくれた。
彼女たちはもうとうの昔に婚約者を諦めていた。

私も、道を外す前にと警告はした。
が、立場はあれど、女一人で立ち向かい続けるのは分が悪い。

もう、無理だと思った。



は生徒会室に篭ったようです」
「そう…」

王太子の婚約者の私に付けられた王家の護衛が静かに、そして重々しく告げた。

「どうやら、無駄だったみたいね…」
「貴方のせいでは」

忠告はした。注意もした。強制的に引き剥がすことさえやった。
貴族であるが故に真意をぼかして伝えたのがよくなかったのか。
しかし、不敬になるような発言を表立っては言えるはずもない。

私にできることは全てやったつもりだ。

「ごめんなさいね。…もう貴方を、見捨てることにするわ」

生徒会室の方を見上げ呟くと、父に報告すべく踵を返して帰路についた。
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