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二
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「国内の視察…ですか」
「まぁ表向きはね。当然、視察もするよ」
ヴェロージオは番を探す許可を王から取った。
もちろん王太子としての公務は行う。
時間を作って、視察という名目で国内をくまなく回る。
その事を、婚約者のグリシアに伝えた。
三年。
捻出した時間で国内をすべて周りきれるギリギリの時間。
職務の名目で出向くのだから、それなりの成果も求められる。
番を求める事を許してもらえたのだから、王太子としての仕事も熟さねばならない。
「そうなのですか」
「だから、申し訳ないが夜会の参加も減る事になると思う」
「それは致し方ありませんね」
もちろん必要な、重要な催しは抑えている。
それ以外のもの、重要度の低いものの参加を見送る。
「殿下も番探しにいよいよ動き出されるのですね」
何処か楽しげなグリシア。
何がそれほど嬉しいのかとつい、勘ぐる。
「私が側にいない事が、君にとって喜ばしいことなのかな?」
刺々しい言葉を選んでしまい、すぐに後悔した。
グリシアを責めるのはお門違いもいいところだ。
「殿下…?」
「いや、今のは私の言葉が悪いな…」
「いいえ。お気になさらずに。喜ぶべき事なのは、殿下の番への情熱ですから。殿下のお言葉を聞いて、私も励まねばと思いましたの」
グリシアはニコリと微笑む。
「差し当たって、殿下が番様を伴って帰還する可能性も考慮して、妃教育は保留にしていても構いませんか?」
「保留…?」
「はい。王家の、国の機密を知れば、妃になれない私は毒杯を賜る事になります。
公爵家の令嬢が毒杯を賜ることで、妃に選ばれる番様に反感を持つ者が出ることを未然に防ぎたいのです」
グリシアの意見を聞き、ヴェロージオは唸る。
番は確かに貴重な存在だが、全ての貴族や民が番至上主義と言うわけでもない。
グリシアに婚約解消と毒杯を与えることで、公爵家と対立する未来もあり得る。
「…確かに。グリシアの言い分は最もだと思う。
三年後、私が番を探し出せなかった後に妃教育を終えてくれたら構わない」
「ありがとうございます」
微笑むグリシアにつられてヴェロージオも片笑んだ。
ヴェロージオは番を探す。
グリシアと共にいる時間を削って探すのだ。
それと伝えたのに、グリシアは喜んで見せるだけで悲しみも、嫉妬も見せなかった。
貴族令嬢として、王太子妃になる者として、内面の感情をうまく隠すのは必要な能力の一つだが、ヴェロージオの前なら心の内を見せてくれても良かったのにと思う。
とはいえ、大げさに泣かれても困惑したに違いない。
だから、あっさりと了承を得て安堵したものの、自分勝手だが僅かな物足りなさもある。
ヴェロージオは、ほんの少しだけグリシアの態度に不満に感じた。
「まぁ表向きはね。当然、視察もするよ」
ヴェロージオは番を探す許可を王から取った。
もちろん王太子としての公務は行う。
時間を作って、視察という名目で国内をくまなく回る。
その事を、婚約者のグリシアに伝えた。
三年。
捻出した時間で国内をすべて周りきれるギリギリの時間。
職務の名目で出向くのだから、それなりの成果も求められる。
番を求める事を許してもらえたのだから、王太子としての仕事も熟さねばならない。
「そうなのですか」
「だから、申し訳ないが夜会の参加も減る事になると思う」
「それは致し方ありませんね」
もちろん必要な、重要な催しは抑えている。
それ以外のもの、重要度の低いものの参加を見送る。
「殿下も番探しにいよいよ動き出されるのですね」
何処か楽しげなグリシア。
何がそれほど嬉しいのかとつい、勘ぐる。
「私が側にいない事が、君にとって喜ばしいことなのかな?」
刺々しい言葉を選んでしまい、すぐに後悔した。
グリシアを責めるのはお門違いもいいところだ。
「殿下…?」
「いや、今のは私の言葉が悪いな…」
「いいえ。お気になさらずに。喜ぶべき事なのは、殿下の番への情熱ですから。殿下のお言葉を聞いて、私も励まねばと思いましたの」
グリシアはニコリと微笑む。
「差し当たって、殿下が番様を伴って帰還する可能性も考慮して、妃教育は保留にしていても構いませんか?」
「保留…?」
「はい。王家の、国の機密を知れば、妃になれない私は毒杯を賜る事になります。
公爵家の令嬢が毒杯を賜ることで、妃に選ばれる番様に反感を持つ者が出ることを未然に防ぎたいのです」
グリシアの意見を聞き、ヴェロージオは唸る。
番は確かに貴重な存在だが、全ての貴族や民が番至上主義と言うわけでもない。
グリシアに婚約解消と毒杯を与えることで、公爵家と対立する未来もあり得る。
「…確かに。グリシアの言い分は最もだと思う。
三年後、私が番を探し出せなかった後に妃教育を終えてくれたら構わない」
「ありがとうございます」
微笑むグリシアにつられてヴェロージオも片笑んだ。
ヴェロージオは番を探す。
グリシアと共にいる時間を削って探すのだ。
それと伝えたのに、グリシアは喜んで見せるだけで悲しみも、嫉妬も見せなかった。
貴族令嬢として、王太子妃になる者として、内面の感情をうまく隠すのは必要な能力の一つだが、ヴェロージオの前なら心の内を見せてくれても良かったのにと思う。
とはいえ、大げさに泣かれても困惑したに違いない。
だから、あっさりと了承を得て安堵したものの、自分勝手だが僅かな物足りなさもある。
ヴェロージオは、ほんの少しだけグリシアの態度に不満に感じた。
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