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六
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「…父上、今なんと」
国王は、軽く息を吐く。戸惑う息子の姿に、聞こえていないはずはないだろうが、もう一度復唱してやった。
「グリシアの番が見つかった」
「そ、んな…」
「番が見つかった以上、婚約は解消となる…」
ヴェロージオは膝をついた。
番が見つかった。
とても喜ばしい報告なのに、ヴェロージオは大きなショックを受けている。
ー…番の存在の大きさは国法でも認められている。
いつか、己が発した言葉が息子に返っている。
「…違う、そんなはずはない」
「ヴェロージオ」
国王の呼びかけにヴェロージオは伏せていた顔を上げた。
「グリシアの番は私です」
「ヴェロージオ。今更それは無理があるだろう?」
今更グリシアを惜しんでも遅い。
後ろ盾の公爵家を失えば、ヴェロージオの立場は心許ない。
国王の代は、先王の妃つまり国王の母親の実家からの支援があったから、何とかなった。
国王は元いた婚約者を捨て、選んだ令嬢の爵位は微妙で、それでも妃にと望んだ結果だ。
母が息子を溺愛していたから、母の実家の支援を受けることができた。
流石に二代続けて決まっていた婚約を、私欲で解消するような王家なら母の実家も愛想を尽かす。
グリシアに番が見つかったことによる婚約解消にはなるが、ヴェロージオが始めた番探しは貴族の中でも広まっていた。
ヴェロージオ本人が隠していなかったからだ。
国王は息子の為に、次の世のために、ヴェロージオが見つけたグリシアを番だと思い公爵家の養子にとねじ込んだのに。
番相手ならば己のように婚約者を捨て、他の令嬢に目移りすることもないと思っての行動だった。
しかし、国王の思いなどヴェロージオは気づかない。
今更、グリシアが番と言われた所で、「番探し」は何だったのかという話だ。
たった今、番の本能が現れた、と言い訳にしてもお粗末すぎる。
もう、グリシアは番を見つけているのだから。
ただ、王はずっとグリシアがヴェロージオの番だと思っていた。
幼いヴェロージオを地方視察につれていき、グリシアを見つけた。
じゃれ合う二人の姿に、いつか見た番を得た者の振る舞いが重なったのだ。
すぐに女児を引き取って力ある公爵家、まだ当主になって浅い貴族に押し付けることにも成功したのに、婚約者同士になった二人の仲は、年が経つ毎に何故か冷めていった。
それでも、二人の番としての自覚が生まれるのを待っていたのに、ヴェロージオの【番探し】の発言で、王は自分の思い違いを知る。
王妃もヴェロージオとグリシアの番への自覚を待ち望んでいたのに、ひどく落胆していた。
彼女の場合は、公爵家という後ろ盾を失うかもしれない不安を抱えていたからかもしれない。
ヴェロージオの今の落ち込み方はは王妃のそれ以上だったが。
国王は憂う。
支援なくした王家の未来を。
国王は、軽く息を吐く。戸惑う息子の姿に、聞こえていないはずはないだろうが、もう一度復唱してやった。
「グリシアの番が見つかった」
「そ、んな…」
「番が見つかった以上、婚約は解消となる…」
ヴェロージオは膝をついた。
番が見つかった。
とても喜ばしい報告なのに、ヴェロージオは大きなショックを受けている。
ー…番の存在の大きさは国法でも認められている。
いつか、己が発した言葉が息子に返っている。
「…違う、そんなはずはない」
「ヴェロージオ」
国王の呼びかけにヴェロージオは伏せていた顔を上げた。
「グリシアの番は私です」
「ヴェロージオ。今更それは無理があるだろう?」
今更グリシアを惜しんでも遅い。
後ろ盾の公爵家を失えば、ヴェロージオの立場は心許ない。
国王の代は、先王の妃つまり国王の母親の実家からの支援があったから、何とかなった。
国王は元いた婚約者を捨て、選んだ令嬢の爵位は微妙で、それでも妃にと望んだ結果だ。
母が息子を溺愛していたから、母の実家の支援を受けることができた。
流石に二代続けて決まっていた婚約を、私欲で解消するような王家なら母の実家も愛想を尽かす。
グリシアに番が見つかったことによる婚約解消にはなるが、ヴェロージオが始めた番探しは貴族の中でも広まっていた。
ヴェロージオ本人が隠していなかったからだ。
国王は息子の為に、次の世のために、ヴェロージオが見つけたグリシアを番だと思い公爵家の養子にとねじ込んだのに。
番相手ならば己のように婚約者を捨て、他の令嬢に目移りすることもないと思っての行動だった。
しかし、国王の思いなどヴェロージオは気づかない。
今更、グリシアが番と言われた所で、「番探し」は何だったのかという話だ。
たった今、番の本能が現れた、と言い訳にしてもお粗末すぎる。
もう、グリシアは番を見つけているのだから。
ただ、王はずっとグリシアがヴェロージオの番だと思っていた。
幼いヴェロージオを地方視察につれていき、グリシアを見つけた。
じゃれ合う二人の姿に、いつか見た番を得た者の振る舞いが重なったのだ。
すぐに女児を引き取って力ある公爵家、まだ当主になって浅い貴族に押し付けることにも成功したのに、婚約者同士になった二人の仲は、年が経つ毎に何故か冷めていった。
それでも、二人の番としての自覚が生まれるのを待っていたのに、ヴェロージオの【番探し】の発言で、王は自分の思い違いを知る。
王妃もヴェロージオとグリシアの番への自覚を待ち望んでいたのに、ひどく落胆していた。
彼女の場合は、公爵家という後ろ盾を失うかもしれない不安を抱えていたからかもしれない。
ヴェロージオの今の落ち込み方はは王妃のそれ以上だったが。
国王は憂う。
支援なくした王家の未来を。
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