花嫁は忘れたい

基本二度寝

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「仮面舞踏会で出会ったのは、私だ」

男は想い人がいつもつけていた仮面を取り出し、顔に当てる。

(…確かに本人に間違いない)
間近で見ていたレイアは彼の言葉が正しいことを理解した。

でも、ただそれだけだ。

「それで?」
「えっ…?」

男は腕を広げて待っている。なにをしているのかわからない。

「それがどうかしたのですか」
「…君は知っていたのか?相手が私だと。そんなに落ち着いているなんて」

「いえ。今知りました。驚きましたよ」

全く表情を変えずに言った。

「ならば、もっと喜ぶべきでは?恋い焦がれた相手だぞ」

「何故」

「何故って…」

男はわけがわからないと頭を振る。

「結婚後は家に愛人を入れ、妻を締め出し、愛人の子しか認めない、と私の頭を押さえつけて署名捺印させた男が、身を焦がし愛した男だと知って落胆しました。
己の見る目のなさに」

「それは、」

レイアの言葉に男はひきつった。
男は、自分の行動を改めて言葉で表現されるとなんと鬼畜の所業かと思う。

「その契約は無かったことにしよう。愛人とも切れた。私は君を愛している」

「お断りします」

「お、おい」

レイアは腰を折って深く礼をした。

「それでは私はこれから別宅に移動いたします。よい夜を」

レイアの優しい微笑み。
別宅に行くつもりがない事実を告げるつもりはない。

「待て」

男の伸びてきた腕を躱し、レイアは控室の外へと出ていった。

彼女を追おうと飛び出したが、執事に捕まり爵位の高い招待客が呼んでいると言われ、散々悩んで客のもとへ行った。

後で別宅に行けば良いと思っていた。
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