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七
「なんでなんでなんでだ!」
王太子は従者を部屋から追い出し、荒れた。
二度目は上手くやるつもりだったのに。
一度目と違い、ちゃんとスフィアを妃にするつもりだった。
一度目、スフィアを妃の立場から引きずりおろして失敗した。
執着が過ぎて、国母にすることを拒んだ。
スフィアは民ではなく王太子だけを愛せばよいのだ。
スフィアの代わりに風変わりな平民の女を王妃にするために、スフィアの罪を用意した。
スフィアを飼おうと目論み、罪人にして、地下の牢に囚えた。
王太子だけを愛する女にしたかった。
しかし、スフィアはすぐに牢から姿を消した。
牢番を捕えれば、「奴隷商に売るつもりだった」と言う。
貴族令嬢だから高く売れるかと思ったと言った牢番を痛めつけ、物言わぬ骸になった。
感情的になり過ぎて失態を犯す。
奴隷商の名を吐かせることも、どこにスフィアがいるかということも聞く前だった。
王太子はスフィアを探した。
それは一年にもおよび、スフィアに似た背格好の令嬢を受け取る手はずだった奴隷商を見つけ出し、山賊に襲われ買い取ろうとした令嬢をその賊に奪われたという証言を得た。
令嬢を奪われたというその場所は、古代の森。
そこは山の民が縄張りにしている土地だった。
この国と山の民とは不可侵条約が結ばれている。
互いに領域を侵さないという条約。
まさかと思いつつ、山の民に対話の申し入れをした。
諾の返事が戻ってきたのは、結婚式の当日。
大掛かりな式典の中止は出来ず、外面よく儀式を済ませた王太子は花嫁を放置して、指定された場所に向かった。
山の民は皆、揃いも揃って屈強な男たちだった。
「話とは、なんだ」
男の一人が放つ。
挨拶も手土産も不要。要件を直球で求められた。
「…女を探している。私の、婚約者だった者だ」
「これか?」
男の背後から現れたのは、山の民の民族衣装に見を包んだスフィアの姿。
腕も足も露出が高く、王太子はごくりと唾を飲んだ。
「スフィア…」
ふらりと一歩足を踏み出せば、スフィアは男の身体に抱きついた。
「旦那様」
「スフィ、大丈夫だ。渡しはしない」
男はスフィアの腰に腕を回して抱き上げる。
二人の顔が同じ高さになると、スフィアが男の首に腕を回して、唇を合わせる。
「スフィアっ!」
飛び出そうとする王太子を、近衛が押しとどめる。
王太子が山の民の領域に踏み入れば、命を刈り取られる。
「スフィア!戻ってくるんだ!私の元に」
「嫌です。…気持ち悪い」
スフィアに吐き捨てられ、王太子は蒼白になる。
「気持ち…悪い?」
「なんでわざわざ戻って貴方に飼われないといけないんですか。気持ち悪い」
スフィアは王太子を一瞥すると、抱き上げている男に再び口付ける。
「スフィアっ!?スフィア!」
話は終わったと、山の民達は己の住処に戻るため、踵を返した。
スフィアは山の民の男に抱かれたまま、姿を消した。
王太子は従者を部屋から追い出し、荒れた。
二度目は上手くやるつもりだったのに。
一度目と違い、ちゃんとスフィアを妃にするつもりだった。
一度目、スフィアを妃の立場から引きずりおろして失敗した。
執着が過ぎて、国母にすることを拒んだ。
スフィアは民ではなく王太子だけを愛せばよいのだ。
スフィアの代わりに風変わりな平民の女を王妃にするために、スフィアの罪を用意した。
スフィアを飼おうと目論み、罪人にして、地下の牢に囚えた。
王太子だけを愛する女にしたかった。
しかし、スフィアはすぐに牢から姿を消した。
牢番を捕えれば、「奴隷商に売るつもりだった」と言う。
貴族令嬢だから高く売れるかと思ったと言った牢番を痛めつけ、物言わぬ骸になった。
感情的になり過ぎて失態を犯す。
奴隷商の名を吐かせることも、どこにスフィアがいるかということも聞く前だった。
王太子はスフィアを探した。
それは一年にもおよび、スフィアに似た背格好の令嬢を受け取る手はずだった奴隷商を見つけ出し、山賊に襲われ買い取ろうとした令嬢をその賊に奪われたという証言を得た。
令嬢を奪われたというその場所は、古代の森。
そこは山の民が縄張りにしている土地だった。
この国と山の民とは不可侵条約が結ばれている。
互いに領域を侵さないという条約。
まさかと思いつつ、山の民に対話の申し入れをした。
諾の返事が戻ってきたのは、結婚式の当日。
大掛かりな式典の中止は出来ず、外面よく儀式を済ませた王太子は花嫁を放置して、指定された場所に向かった。
山の民は皆、揃いも揃って屈強な男たちだった。
「話とは、なんだ」
男の一人が放つ。
挨拶も手土産も不要。要件を直球で求められた。
「…女を探している。私の、婚約者だった者だ」
「これか?」
男の背後から現れたのは、山の民の民族衣装に見を包んだスフィアの姿。
腕も足も露出が高く、王太子はごくりと唾を飲んだ。
「スフィア…」
ふらりと一歩足を踏み出せば、スフィアは男の身体に抱きついた。
「旦那様」
「スフィ、大丈夫だ。渡しはしない」
男はスフィアの腰に腕を回して抱き上げる。
二人の顔が同じ高さになると、スフィアが男の首に腕を回して、唇を合わせる。
「スフィアっ!」
飛び出そうとする王太子を、近衛が押しとどめる。
王太子が山の民の領域に踏み入れば、命を刈り取られる。
「スフィア!戻ってくるんだ!私の元に」
「嫌です。…気持ち悪い」
スフィアに吐き捨てられ、王太子は蒼白になる。
「気持ち…悪い?」
「なんでわざわざ戻って貴方に飼われないといけないんですか。気持ち悪い」
スフィアは王太子を一瞥すると、抱き上げている男に再び口付ける。
「スフィアっ!?スフィア!」
話は終わったと、山の民達は己の住処に戻るため、踵を返した。
スフィアは山の民の男に抱かれたまま、姿を消した。
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