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三
王太子は帰城するなり父に呼ばれ、失意のまま国王夫婦の私室を訪れた。
部屋へ入室するなり、母の扇が飛んできて王太子の頬を傷つけた。
「っう」
「…フランシール嬢を投獄したり、連れ出したり…お前は一体何がしたいんだ!!」
卒業式典から、ずっと王太子は両親から雷を落とされ続けている。
フランシールの悪行は、本来罪とは言えぬものだと父は言う。
婚約者に擦り寄る女に立場をわからせる行為は貴族ならば問題視されることはない。
王太子が下手な庇い建てをしなければ、フランシールも対応がエスカレートすることはなかった。
守られて調子に乗った伯爵令嬢は増長した。
悪循環の末、フランシールは暴行に発展して、王太子がその現場を押さえた。
王太子が伯爵令嬢に渡していた守り石が彼女を守り、怪我を負うことはなかったが、伯爵令嬢が大袈裟に騒ぎ、王太子もそれに便乗する形で婚約破棄を狙って事を公にした。
貴族たちのフランシールに対する目が冷めたものだったのは、非道な行為を軽蔑していたと思っていたのだが、そう言うわけではなかった。
『この程度も対処できない』フランシールの力量をみて蔑んでいたのだ。
王太子のお守りもできぬ女だと。
同時にそれは、王太子への嘲りだと国王に説明されるまで気づかなかった。
「ちゃんと連れて帰ったのだろうな!」
「え…」
「フランシール嬢だ!!」
片方の口角を上げ、嘲笑って落ちていく彼女の姿を思い出し、王太子の視線は床に落ちた。
「…なんだその反応は!…まさか」
「口無し渓谷に」
王太子の身体が飛んだ。
痛みより衝撃に驚いた。
世界が反転して、天井が視界に入ったと思ったら頭を踏みつけられた。
「愚か者がっ、愚か者が!!」
王の怒声と、王妃の悲鳴が部屋を覆う。
「侯爵家に賠償金は支払った!!古くからの伝わる宝物を売り払って作った金でな!!
あとはっ、投獄した娘を人質にして、金を回収する算段をつけていたのにっ、貴様はっ!」
王家には金がない。
国王も、過去に公爵家の令嬢と婚約していたが、金より愛を求め当時の男爵令嬢を選び、強引に王妃に据えた。
王妃もかなりの努力を強いられ、なんとかそれなりにはなれたが…後ろ盾にもなれない実家は娘の為に出せた金は多くはなかった。
愛を選んだ国王の結婚式は、下位貴族でも見ないほど、かなり質素な式になった。
愛だけではどうにもならぬこともあるのだと、婚後に国王夫妻はようやく気づいた。
自分たちと同じ過ちはさせぬように、国一の財力を誇る家の令嬢と縁を結ばせたのに、愛する息子は着実に親の後を追う。
自分のことは棚上げして、国王はひたすら息子を殴打し続けた。
部屋へ入室するなり、母の扇が飛んできて王太子の頬を傷つけた。
「っう」
「…フランシール嬢を投獄したり、連れ出したり…お前は一体何がしたいんだ!!」
卒業式典から、ずっと王太子は両親から雷を落とされ続けている。
フランシールの悪行は、本来罪とは言えぬものだと父は言う。
婚約者に擦り寄る女に立場をわからせる行為は貴族ならば問題視されることはない。
王太子が下手な庇い建てをしなければ、フランシールも対応がエスカレートすることはなかった。
守られて調子に乗った伯爵令嬢は増長した。
悪循環の末、フランシールは暴行に発展して、王太子がその現場を押さえた。
王太子が伯爵令嬢に渡していた守り石が彼女を守り、怪我を負うことはなかったが、伯爵令嬢が大袈裟に騒ぎ、王太子もそれに便乗する形で婚約破棄を狙って事を公にした。
貴族たちのフランシールに対する目が冷めたものだったのは、非道な行為を軽蔑していたと思っていたのだが、そう言うわけではなかった。
『この程度も対処できない』フランシールの力量をみて蔑んでいたのだ。
王太子のお守りもできぬ女だと。
同時にそれは、王太子への嘲りだと国王に説明されるまで気づかなかった。
「ちゃんと連れて帰ったのだろうな!」
「え…」
「フランシール嬢だ!!」
片方の口角を上げ、嘲笑って落ちていく彼女の姿を思い出し、王太子の視線は床に落ちた。
「…なんだその反応は!…まさか」
「口無し渓谷に」
王太子の身体が飛んだ。
痛みより衝撃に驚いた。
世界が反転して、天井が視界に入ったと思ったら頭を踏みつけられた。
「愚か者がっ、愚か者が!!」
王の怒声と、王妃の悲鳴が部屋を覆う。
「侯爵家に賠償金は支払った!!古くからの伝わる宝物を売り払って作った金でな!!
あとはっ、投獄した娘を人質にして、金を回収する算段をつけていたのにっ、貴様はっ!」
王家には金がない。
国王も、過去に公爵家の令嬢と婚約していたが、金より愛を求め当時の男爵令嬢を選び、強引に王妃に据えた。
王妃もかなりの努力を強いられ、なんとかそれなりにはなれたが…後ろ盾にもなれない実家は娘の為に出せた金は多くはなかった。
愛を選んだ国王の結婚式は、下位貴族でも見ないほど、かなり質素な式になった。
愛だけではどうにもならぬこともあるのだと、婚後に国王夫妻はようやく気づいた。
自分たちと同じ過ちはさせぬように、国一の財力を誇る家の令嬢と縁を結ばせたのに、愛する息子は着実に親の後を追う。
自分のことは棚上げして、国王はひたすら息子を殴打し続けた。
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