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十五
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「ルシィ」
「レオ!」
アルシオーネは派遣先より戻ってきた婚約者に抱きついた。
「怖い思いをしたって?」
「大丈夫。おじ様と護衛についてくれていたギアのおかげで怪我も何もなかったから、でも…」
「うん?」
「レオの言葉通りだと思った。ああいう、変わった人って居るのね…」
「俺の周りには変なやつばっかだよ」
レオネルの軽口に思わず笑う。
始めに頭に浮かんだのはおじ様だったことは、レオネルには言えない。
「ルシィ。任務報酬に休みとったから何処か出かけよう」
「なら、観劇したい!今、婚約破棄が流行ってて!」
「…不穏なものが流行るんだね…」
「婚約破棄された令嬢が故郷で幼馴染と再会して、結婚するってお話があるんだって」
「ふーん」
「似てるなって思って」
「…どこらへんが?」
レオネルの眼光が一瞬鋭くなったことに、演劇で頭がいっぱいのアルシオーネは気づけない。
「幼馴染と結婚するところ!って、そこだけしか共通点ないじゃない」
くすくすとアルシオーネは楽しそうに笑っている。
「レオとは昔から婚約してたしね」
「そうだね」
レオネルは嬉しそうに目を細めて、アルシオーネを見つめていた。
男は馬車の中にいた。
何処かに連れて行かれるのだろうけれど、よくわからない。
処罰は奉仕活動だと言われたのだけれど、どんな罪を犯したのかも覚えていない。
自分に家族がいたのかも、名前すら男にはわからなかった。
処罰を終えれば、何処に行っても良いと言われた。
何処に、行けば良いのだろう。
ぼんやり幌の染みを見つめていると、御者の会話が聞こえた。
ちょっとー聞いてくれる?
私って暇そうに見える?
冗談ではなくて本当に偉い役職についてるんだよ?
護送馬車の御者補助に乗らされる立場じゃないんだけど。
いや、笑い事じゃなくて。ホントだからね?
最後まで見届けろってさぁ。
自分は…とデートで忙しいんだと!
なにそれ、だよね。
功労者の私とデートさせるべきじゃない?
ん?違う?
この護送馬車って地方の領地で、環境整備の仕事をさせられる罪人だけだよね。
数週間でお勤め終えたらどうなるの?
運が良ければ現地で雇ってもらえるのか。へぇ。
にしてもさぁ。ほんと大変だったんだからね。
…爵家の兄の方がさぁ全っ然、弟の記憶食いの承諾得られなくて。
最終的に、家か弟かって選択させたのよ。うちの息子。
鬼だよね。怖ぁ。
『承諾得られないなら、お前の記憶をすべて食うだけだ。
お前が廃人になろうがどうでも良い。お前の親父の代で家が終わろうが問題ない』とかいってー!
家宝だという書物を侯爵から借りて、兄に叩きつけたんだ。
うん。鬼だよね。
でも、兄の方は最後まで足掻いたよ?
取調室でなら、暗示は一回きりだ、とか注文つけてね、あの部屋魔法阻害施してるからね、催眠も魔法も使えない。
あの部屋なら忘却魔法や催眠にかからないと誤解していたねぇ。
ごめんねーうちらのコレ、魔法でも暗示でもないんだよね。ただの食事で食った記憶の返却はできないし。
あと思考も筒抜けだからさ。なんかホント…気の毒で。
信用ならないからって契約書まで交して。
トルクトの記憶に携わる契約なんて…記憶食ったら忘れるのに…。
粘ってたよねぇ。
頑張ったよねぇ。
食うのは一瞬だったけど。
あれだけの粘りが嘘だったかのように、すっきりした顔で帰っていったよね。
大事に書物抱えて。
弟?弟の方はもう承諾なしに食い散らかしたって。
兄で交渉疲れして、面倒だったからばくっといったみたい。
酷いよね。でも面倒くさくなった気持ちはわかるかも。
あの子の記憶だけ食うつもりが、弟の方も抵抗してね。
じゃあもういいや(笑)って。
自分の名前もわからなくなった状態で、この馬車に突っ込んだんだって。
え?なにそんな驚いてるの。
ああ、自分にそんなこと言っても大丈夫なのかって?
大丈夫だよ。
だって君もう、私の独り言、忘れてるし。
…ね?
あーあ。あとどれくらいで着くのかなぁ。
現地で美味しいご飯食べたいなぁ。
「レオ!」
アルシオーネは派遣先より戻ってきた婚約者に抱きついた。
「怖い思いをしたって?」
「大丈夫。おじ様と護衛についてくれていたギアのおかげで怪我も何もなかったから、でも…」
「うん?」
「レオの言葉通りだと思った。ああいう、変わった人って居るのね…」
「俺の周りには変なやつばっかだよ」
レオネルの軽口に思わず笑う。
始めに頭に浮かんだのはおじ様だったことは、レオネルには言えない。
「ルシィ。任務報酬に休みとったから何処か出かけよう」
「なら、観劇したい!今、婚約破棄が流行ってて!」
「…不穏なものが流行るんだね…」
「婚約破棄された令嬢が故郷で幼馴染と再会して、結婚するってお話があるんだって」
「ふーん」
「似てるなって思って」
「…どこらへんが?」
レオネルの眼光が一瞬鋭くなったことに、演劇で頭がいっぱいのアルシオーネは気づけない。
「幼馴染と結婚するところ!って、そこだけしか共通点ないじゃない」
くすくすとアルシオーネは楽しそうに笑っている。
「レオとは昔から婚約してたしね」
「そうだね」
レオネルは嬉しそうに目を細めて、アルシオーネを見つめていた。
男は馬車の中にいた。
何処かに連れて行かれるのだろうけれど、よくわからない。
処罰は奉仕活動だと言われたのだけれど、どんな罪を犯したのかも覚えていない。
自分に家族がいたのかも、名前すら男にはわからなかった。
処罰を終えれば、何処に行っても良いと言われた。
何処に、行けば良いのだろう。
ぼんやり幌の染みを見つめていると、御者の会話が聞こえた。
ちょっとー聞いてくれる?
私って暇そうに見える?
冗談ではなくて本当に偉い役職についてるんだよ?
護送馬車の御者補助に乗らされる立場じゃないんだけど。
いや、笑い事じゃなくて。ホントだからね?
最後まで見届けろってさぁ。
自分は…とデートで忙しいんだと!
なにそれ、だよね。
功労者の私とデートさせるべきじゃない?
ん?違う?
この護送馬車って地方の領地で、環境整備の仕事をさせられる罪人だけだよね。
数週間でお勤め終えたらどうなるの?
運が良ければ現地で雇ってもらえるのか。へぇ。
にしてもさぁ。ほんと大変だったんだからね。
…爵家の兄の方がさぁ全っ然、弟の記憶食いの承諾得られなくて。
最終的に、家か弟かって選択させたのよ。うちの息子。
鬼だよね。怖ぁ。
『承諾得られないなら、お前の記憶をすべて食うだけだ。
お前が廃人になろうがどうでも良い。お前の親父の代で家が終わろうが問題ない』とかいってー!
家宝だという書物を侯爵から借りて、兄に叩きつけたんだ。
うん。鬼だよね。
でも、兄の方は最後まで足掻いたよ?
取調室でなら、暗示は一回きりだ、とか注文つけてね、あの部屋魔法阻害施してるからね、催眠も魔法も使えない。
あの部屋なら忘却魔法や催眠にかからないと誤解していたねぇ。
ごめんねーうちらのコレ、魔法でも暗示でもないんだよね。ただの食事で食った記憶の返却はできないし。
あと思考も筒抜けだからさ。なんかホント…気の毒で。
信用ならないからって契約書まで交して。
トルクトの記憶に携わる契約なんて…記憶食ったら忘れるのに…。
粘ってたよねぇ。
頑張ったよねぇ。
食うのは一瞬だったけど。
あれだけの粘りが嘘だったかのように、すっきりした顔で帰っていったよね。
大事に書物抱えて。
弟?弟の方はもう承諾なしに食い散らかしたって。
兄で交渉疲れして、面倒だったからばくっといったみたい。
酷いよね。でも面倒くさくなった気持ちはわかるかも。
あの子の記憶だけ食うつもりが、弟の方も抵抗してね。
じゃあもういいや(笑)って。
自分の名前もわからなくなった状態で、この馬車に突っ込んだんだって。
え?なにそんな驚いてるの。
ああ、自分にそんなこと言っても大丈夫なのかって?
大丈夫だよ。
だって君もう、私の独り言、忘れてるし。
…ね?
あーあ。あとどれくらいで着くのかなぁ。
現地で美味しいご飯食べたいなぁ。
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