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「次の婚約者はこちらで決める。一応、候補は数名いる」

陛下は、候補者の書類を王太子に渡す。
それだけに呼ばれたようだ。

「…マルシアは…」
「ん?あの犬か?商会で可愛がられているだろう」
「犬…?」
「ああ。王家の犬だ。言い得てるだろう?」

にやつく父に嫌悪感が走る。

「あの男が誰かわかったか?」
「…商会頭の、子息、かと」
「おっ勉強したか、さすが我が息子。ではその商会はうちにとってどんな存在だ?」
「他国からはこの国の代名詞になるほどの…大店です」

ダナリムは護衛の言葉を頼りに調べた。
さすがにあんな反応をされたら癪に障る。

簡単に調べはついた。
それくらいこの国はあの男の商会に依存していた。
王都の税収の四割が商会、または関連企業の納めたものだった。
この国の柱といっても過言ではない。

ただ、わからないのはその商会の子息とマルシアの繋がりだ。
陛下も知っていたのなら、浮気などではなかったはずと、結論づけた。
なのに、今、マルシアは婚約者から退けられた形となっている。

「マルシアは国のためによく動いてくれている。商会から情報を得ようとマルシアでハニートラップを仕掛けさせた」
「…は?」

この国にとって商会の動向を知ることは重要だった。
簡単に他国に拠点を移られるわけには行かない。

商会の規模が大きくなったのは、会頭の子息は若いのに父とおなじく商売の才があった。
他国からも引く手はあまただ。
そして子息は平民も貴族も女は選びたい放題だった。

ただ、そんな男でも唯一手に入らない女がいる。

王太子の婚約者。

この国で最も優れた令嬢。
それはけして、手に入らない高嶺の花。
手に入らない者ほどああいう輩は欲しがるものだ。

マルシアはその為だけに作り上げられた婚約者だったのだと父は笑った。

ダナリムは言葉を失った。

マルシアは何年もかけて妃教育を修了している。
だがそれも、一人の男を籠絡させるためのもの。
彼女も知った上で、励んでいたという。

彼女が将来ダナリムの隣に立つことはないと知らされたのは、己の真の使命を聞かされたのは、丁度、彼女が変わったとダナリムが感じていた時期だった。
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