聖女の専属護衛は婚約破棄を受け入れる

基本二度寝

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五 

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シャラリーゼは王城に顔を出していた。

聖女様は王城に滞在している。
ならば、ガルウィングも彼女のそばに居るはずだ。

話がしたい。
もし、聖女様の一方的な想いでガルウィングを縛り付けているのなら、国王陛下おじさまに抗議して、護衛職をやめさせれば良い。

「一週間部屋から出てこられなかった」
「無茶をなさる…」
「時々謝罪の声が聞こえてきて、」
「お労しい…」

女中の会話を耳にして、シャラリーゼは憤っていた。
聖女様はその立場を利用して、ガルウィングに酷い仕打ちをしているのだ。

聖女様の人権侵害は道理に反する。

これを理由にすれば、ガルウィングは自由になれる。
王城内を歩き回り、ガルウィングと聖女を探し回っていた。


シャラリーゼが中庭の渡り廊下を歩いていたその時に声が聞こえた。

「も…許して」

すすり泣く声は女のもの。

「あれ程教えたのに、まだリノはわかっていないのか」

男の声には覚えがある。
シャラリーゼは動けない。

「リノ」

こんなに甘く優しく囁く声など婚約時に聞いたことなどない。

「俺のすべてはリノのものだ」

女の悲鳴が上がる。
姿は見えない。
それでも激しく肌を打つ音が断続的な悲鳴に交じる。

サドルに情事を教えてもらった。
それとは比べ物にならないほどの熱量。

次第に追い詰められた女の声が、愛してると繰り返し、唐突に声は止んだ。

そこから動けなかったシャラリーゼは、しばらくして中庭の影から出てくる男と目があった。

気を失っている女性を横抱きで抱えた状態で、婚約者だった男は「あぁ、どうも」と感情のない顔で声をかけてきた。

「ガル、ウィング」
「どうかされましたか」

先程までの甘さを一切消した声色。
同一人物かと耳を疑うほどの変わりよう。

「私は、貴方を、助けに」

ガルウィングは首を傾げる。
「別に助けなど求めていませんが」
「だって、聖女様に無理やり」

「聖女様無理やり、ですね。どちらかといえば」

そういって腕の中の女性に目を向け、優しく微笑んでいた。

…そんな顔、知らない。

ガルウィングはシャラリーゼの横を通り過ぎる。

「ああ。ここ最近、貴女は俺を探し回っていたようですね。元婚約者が彷徨いているって、リノが、聖女様が気にしていて、かわいい嫉妬を向けられました」

ガルウィングの口が緩む。

「どうもありがとうございました」


シャラリーゼは初めてガルウィングに微笑んでもらえた。

そうしてようやく気づいた。

シャラリーゼはガルウィングに愛されていなかったのだと。
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