素顔を知らない

基本二度寝

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「国王陛下。恐れ入りますが、私の容姿を王太子殿下に説明していただけますか?」

国王はわけもわからず、言われるがままセイラの容姿を口にした。

「透き通るような金の髪色に、淡い緑の瞳。色白で小柄…」

「…父上。誰のことを言っているのですか」

「お前の目の前にいるセイラ殿の事だ」

王太子は目の前の女に目を向ける。
しかし、国王の語る令嬢など、目の前どころかこの場にいないのだ。

「馬鹿なことを、二人して謀って」

「国王陛下。私と、この国に居た聖女は似ていますか?」

国王は首を振る。

「彼女も美しい令嬢だったが、貴殿とは似ていない。
セイラ殿が天使なら、彼女は女神。落ち着いた雰囲気を持ったひとだったな」

「は…?天使?女神…?国王陛下ちちうえ、前も今もそんな人間など此処にいませんよ」

「おかしいのはお前の目の方だっ」

目の前の女とこの国に居た聖女は違う、そう言われたが、王太子には彼女らの見分けがつかない。
犬や猫の顔を見分けられないように、王太子には同じ顔に見えるのだ。

「陛下。この国にいた聖女の『容姿』を教えて差し上げて下さい」

ー銀の髪に蒼い瞳。
ーとても慈悲深い女性だった。

国王の言葉で王太子は何故か隣国王の美しい妻の事を思い出し、胸が騒いだ。

「陛下。実はこの国の聖女と隣国でお会いしたことがあるのです。国を追放されてもまず困っている方々を助けていらしてー

その中に隣国の王もいらっしゃって。王の熱烈なアプローチの末、二人は結ばれたのです。今はとても幸せそうでいらっしゃいますよ」

「!そうだったのか、…彼女は隣国の王に見初められたのか…。城に囲い込まれた、とはそういう意味だったのだな…」

国王は少し寂しそうにつぶやいた。

「この国の災害問題は解決したのですから、もう聖女に拘る必要がなくなってよかったではないですか」

「確かに…。それについては、感謝している」

「何より、あの方は聖女の力を失いましたから。国に連れ戻されたとしてももう何もできなかったでしょう」

セイラは驚いている国王から目線を王太子に移す。

「聖女では無くなったから、殿下は彼女の素顔を確認できるようになったのでしょうね。
彼女との面会は、まるで初対面のような態度をなさってましたから」

セイラは大きな口を歪めて下品な笑い方をする。
しかし、それは王太子の目から見た姿で実際は口角を僅かに上げているだけ。

「素顔…?」

「この国の聖女いや、元聖女のミシル様ですよ」

今にも吹き出しそうに笑いを耐えている聖女セイラが王太子の目には、悪魔の姿にしかみえなかった。

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