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九 余談
「とまぁ、こんな所ね!」
セイラはケタケタと楽しそうに笑って、出された茶請けをもりもり貪る。
隣国での出来事を話を盛りながら、ミシルに報告がてらのお茶会である。
「ミシルが聖女だったとバラしたときのあの男の顔と言ったらっ!」
ぶぶっと聖女にあるまじき音を発生させる。
「セイラ…」
「大丈夫よ。酷いことはしていないから。ちょっと舌出して親指を地に向けただけよ?」
それはミシルには理解できない所作だけれど、とりあえずセイラが王太子殿下をイジメ抜いてきたのだろう事は理解した。
「水害も解決したし。ミシルの心残りも無いでしょう?」
「ええ。ありがとう、セイラ」
ミシルは優しくセイラに微笑む。
祖国を離れ、緩やかに聖女の力を失ったミシルにはもう国を救う手立てはなかった。
セイラがいなければどうなっていたか。
「それにしても、あのクソ王太子。婚約者だったミシルの名前すら知らなかったとはねぇ。本当にクソ野郎よ」
王太子の目にはミシルの髪色が違って見えているのだろうとセイラには話していた。
「魔女のような黒い色持ち」と言われ続けていたミシルが自分のことを言われているのだと気づくまでには随分時間を要したらしい。
それにしたって、自己紹介の名前を告げた時点で気付かれるだろうと思っていた。
国王陛下もわざわざ「追放された聖女との面会」と前置きしてミシルを呼んだのに、だ。
ちなみにセイラは「隣国からやってきた聖女」と紹介された。
旅をする流れ聖女のセイラはミシルの祖国を横断してこの国に入国したので、間違いではない。
「ねぇセイラ。王太子殿下はセイラと私の区別がついていなかったっていうのは本当なの…?」
王太子には髪色が違って見える程度に思っていたミシルは、セイラの報告でミシルとセイラの顔の見分けがつかないほどだと聞いて驚きを隠せなかった。
天使のように愛らしいセイラと、切れ目で冷たく見える容姿の自分とが同じに見えるなんて、と気に病んでいた。
「そうなの!私とミシルを間違えるほど!ああ!本当にミシルみたいな美人だったら人生勝組なのに!!」
「…セイラ…?」
「あ、いけね。話がそれた。そう、あのバカ王子ね。
多分だけど、聖女の容姿が実際とは変わって見えるんだと思う」
『聖女を見分ける瞳』だとセイラは判断した。
王太子の言動からすれば、かなり歪んだ容貌になっているらしい。
「隣国の水害は古魔具が原因だったって話はしたよね?
恐らく、聖女を国に引き止めて留める為にあえて呼び込んだ災害。
もしかしたら、それに気づいた何代か前の聖女の呪いかもしれないわね」
自分の子孫に聖女を正しく認識させない為の。
「これ以上、むやみに聖女を抱え込ませないように」
見た目で聖女を縛り付ける様な王家なら、見た目で手放すだろうと考えたのではとセイラは考えた。
「…ま、憶測だけどね」
強引に聖女を留めた国で幸せになれた聖女達は少ない。セイラは他国をめぐり、似たような話が他でもあると知っている。
「ウィンダラスも見た目だけでミシルを嫁に選んだのなら、ミシルを攫って一緒に他国へ連れていくつもりだったけど!」
セイラと違い、上品に笑うミシルは首を横に振る。
「立ち寄った村で泥まみれで働いていた私を見初めて下さったから」
「いやぁ…あの男の事だから事実を知っていてわざと…」
夫を疑うセイラに、ミシルは新しい茶菓子を出してやると興味は簡単にそちらに移ってしまった。
セイラはケタケタと楽しそうに笑って、出された茶請けをもりもり貪る。
隣国での出来事を話を盛りながら、ミシルに報告がてらのお茶会である。
「ミシルが聖女だったとバラしたときのあの男の顔と言ったらっ!」
ぶぶっと聖女にあるまじき音を発生させる。
「セイラ…」
「大丈夫よ。酷いことはしていないから。ちょっと舌出して親指を地に向けただけよ?」
それはミシルには理解できない所作だけれど、とりあえずセイラが王太子殿下をイジメ抜いてきたのだろう事は理解した。
「水害も解決したし。ミシルの心残りも無いでしょう?」
「ええ。ありがとう、セイラ」
ミシルは優しくセイラに微笑む。
祖国を離れ、緩やかに聖女の力を失ったミシルにはもう国を救う手立てはなかった。
セイラがいなければどうなっていたか。
「それにしても、あのクソ王太子。婚約者だったミシルの名前すら知らなかったとはねぇ。本当にクソ野郎よ」
王太子の目にはミシルの髪色が違って見えているのだろうとセイラには話していた。
「魔女のような黒い色持ち」と言われ続けていたミシルが自分のことを言われているのだと気づくまでには随分時間を要したらしい。
それにしたって、自己紹介の名前を告げた時点で気付かれるだろうと思っていた。
国王陛下もわざわざ「追放された聖女との面会」と前置きしてミシルを呼んだのに、だ。
ちなみにセイラは「隣国からやってきた聖女」と紹介された。
旅をする流れ聖女のセイラはミシルの祖国を横断してこの国に入国したので、間違いではない。
「ねぇセイラ。王太子殿下はセイラと私の区別がついていなかったっていうのは本当なの…?」
王太子には髪色が違って見える程度に思っていたミシルは、セイラの報告でミシルとセイラの顔の見分けがつかないほどだと聞いて驚きを隠せなかった。
天使のように愛らしいセイラと、切れ目で冷たく見える容姿の自分とが同じに見えるなんて、と気に病んでいた。
「そうなの!私とミシルを間違えるほど!ああ!本当にミシルみたいな美人だったら人生勝組なのに!!」
「…セイラ…?」
「あ、いけね。話がそれた。そう、あのバカ王子ね。
多分だけど、聖女の容姿が実際とは変わって見えるんだと思う」
『聖女を見分ける瞳』だとセイラは判断した。
王太子の言動からすれば、かなり歪んだ容貌になっているらしい。
「隣国の水害は古魔具が原因だったって話はしたよね?
恐らく、聖女を国に引き止めて留める為にあえて呼び込んだ災害。
もしかしたら、それに気づいた何代か前の聖女の呪いかもしれないわね」
自分の子孫に聖女を正しく認識させない為の。
「これ以上、むやみに聖女を抱え込ませないように」
見た目で聖女を縛り付ける様な王家なら、見た目で手放すだろうと考えたのではとセイラは考えた。
「…ま、憶測だけどね」
強引に聖女を留めた国で幸せになれた聖女達は少ない。セイラは他国をめぐり、似たような話が他でもあると知っている。
「ウィンダラスも見た目だけでミシルを嫁に選んだのなら、ミシルを攫って一緒に他国へ連れていくつもりだったけど!」
セイラと違い、上品に笑うミシルは首を横に振る。
「立ち寄った村で泥まみれで働いていた私を見初めて下さったから」
「いやぁ…あの男の事だから事実を知っていてわざと…」
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