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三
「伯爵、婚約解消を考え直してもらえないだろうか」
「今更なんですか。話し合いの席に一度も現れずに」
言葉が詰まった。
何度か父親から「伯爵家に出向く」と言われていたが、ズーワンはそれを全て無視をした。
女と愉しむ方を優先した。
「…サンシアの気持ちは…」
「娘の気持ちは関係ありません。これは政略的なものですから」
そこに一縷の希望を見出した。
彼女を味方に付ければ。
サンシアはズーワンを愛してくれていた。
「サンシアに会わせてくださぃ」
首を振る伯爵を振り切って、サンシアを探しに走った。
「!ズーワン様!?誰か!止めろ」
伯爵家の従者を躱しながら目的地に到達する。
部屋の前に、いつも連れていたサンシアの従者を見つけ、サンシアがそこに居るのだとわかった。
「サンシアはその部屋か」
「…お引き取りを」
従者は扉の前に立ちはだかり、侵入を許さない。
「話がしたいだけだ」
「お引き取りを」
「話にならない」
従者を押しのけて、ドアのノブに触れた。
「ッッアァァアっ!」
思わずズーワンの身体が硬直した。
叫び声はサンシアのもので間違いがない。
しかしその声は、ズーワンが抱き合う女のものとよく似た、
「ーっ、気持ち、いいっっ」
男の声と、肌を打つ音が交じり、部屋の中の状態を瞬時に理解した。
「貴方のせいですよ」
ズーワンが振り返る。
伯爵がゆっくりとこちらに向かってきた。
「何?私が、」
「ええ」
従者にも伯爵にも睨まれるが、ズーワンには状況の把握が追いついていない。
「『閨教育は貴族の嗜み』などど、…娘は完全に色狂いになってしまいました」
「意味が、わからん」
「娘も『閨教育』を希望したんです。侯爵家に嫁ぐに必要なのだと」
「そんなこと、言った覚えはない」
「寝台の上で、淫婦を抱きながらおっしゃったではないですか」
口を挟んだ従者は、サンシアと一緒に浮気現場を共に踏み込まれた者だと気づいた。
「他人の種の子を、育てる気概があるのなら、サンシアを娶りますか?」
部屋の中から聞こえる男の声は、知っている男の声に似ている気がした。
跡継ぎになれなかった二男の男。
散々見下し、馬鹿にして、男の恋人を寝取ったこともある。
そんな男の子でも我が子として育てられるか。
伯爵の言葉に返事は出来なかった。
ただ、男に強請るサンシアの甘える声が、ズーワンの心をえぐり続けた。
「今更なんですか。話し合いの席に一度も現れずに」
言葉が詰まった。
何度か父親から「伯爵家に出向く」と言われていたが、ズーワンはそれを全て無視をした。
女と愉しむ方を優先した。
「…サンシアの気持ちは…」
「娘の気持ちは関係ありません。これは政略的なものですから」
そこに一縷の希望を見出した。
彼女を味方に付ければ。
サンシアはズーワンを愛してくれていた。
「サンシアに会わせてくださぃ」
首を振る伯爵を振り切って、サンシアを探しに走った。
「!ズーワン様!?誰か!止めろ」
伯爵家の従者を躱しながら目的地に到達する。
部屋の前に、いつも連れていたサンシアの従者を見つけ、サンシアがそこに居るのだとわかった。
「サンシアはその部屋か」
「…お引き取りを」
従者は扉の前に立ちはだかり、侵入を許さない。
「話がしたいだけだ」
「お引き取りを」
「話にならない」
従者を押しのけて、ドアのノブに触れた。
「ッッアァァアっ!」
思わずズーワンの身体が硬直した。
叫び声はサンシアのもので間違いがない。
しかしその声は、ズーワンが抱き合う女のものとよく似た、
「ーっ、気持ち、いいっっ」
男の声と、肌を打つ音が交じり、部屋の中の状態を瞬時に理解した。
「貴方のせいですよ」
ズーワンが振り返る。
伯爵がゆっくりとこちらに向かってきた。
「何?私が、」
「ええ」
従者にも伯爵にも睨まれるが、ズーワンには状況の把握が追いついていない。
「『閨教育は貴族の嗜み』などど、…娘は完全に色狂いになってしまいました」
「意味が、わからん」
「娘も『閨教育』を希望したんです。侯爵家に嫁ぐに必要なのだと」
「そんなこと、言った覚えはない」
「寝台の上で、淫婦を抱きながらおっしゃったではないですか」
口を挟んだ従者は、サンシアと一緒に浮気現場を共に踏み込まれた者だと気づいた。
「他人の種の子を、育てる気概があるのなら、サンシアを娶りますか?」
部屋の中から聞こえる男の声は、知っている男の声に似ている気がした。
跡継ぎになれなかった二男の男。
散々見下し、馬鹿にして、男の恋人を寝取ったこともある。
そんな男の子でも我が子として育てられるか。
伯爵の言葉に返事は出来なかった。
ただ、男に強請るサンシアの甘える声が、ズーワンの心をえぐり続けた。
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