婚約者の為の閨教育なので浮気じゃないらしい

基本二度寝

文字の大きさ
3 / 5

「伯爵、婚約解消を考え直してもらえないだろうか」

「今更なんですか。話し合いの席に一度も現れずに」

言葉が詰まった。
何度か父親から「伯爵家に出向く」と言われていたが、ズーワンはそれを全て無視をした。

女と愉しむ方を優先した。

「…サンシアの気持ちは…」
「娘の気持ちは関係ありません。これは政略的なものですから」

そこに一縷の希望を見出した。
彼女を味方に付ければ。
サンシアはズーワンを愛してくれていた。

「サンシアに会わせてくださぃ」

首を振る伯爵を振り切って、サンシアを探しに走った。

「!ズーワン様!?誰か!止めろ」

伯爵家の従者を躱しながら目的地に到達する。
部屋の前に、いつも連れていたサンシアの従者を見つけ、サンシアがそこに居るのだとわかった。

「サンシアはその部屋か」
「…お引き取りを」

従者は扉の前に立ちはだかり、侵入を許さない。

「話がしたいだけだ」
「お引き取りを」

「話にならない」

従者を押しのけて、ドアのノブに触れた。

「ッッアァァアっ!」

思わずズーワンの身体が硬直した。
叫び声はサンシアのもので間違いがない。
しかしその声は、ズーワンが抱き合う女のものとよく似た、

「ーっ、気持ち、いいっっ」

男の声と、肌を打つ音が交じり、部屋の中の状態を瞬時に理解した。


「貴方のせいですよ」

ズーワンが振り返る。
伯爵がゆっくりとこちらに向かってきた。

「何?私が、」
「ええ」

従者にも伯爵にも睨まれるが、ズーワンには状況の把握が追いついていない。

「『閨教育は貴族の嗜み』などど、…娘は完全に色狂いになってしまいました」

「意味が、わからん」

「娘も『閨教育』を希望したんです。侯爵家に嫁ぐに必要なのだと」

「そんなこと、言った覚えはない」
「寝台の上で、淫婦を抱きながらおっしゃったではないですか」

口を挟んだ従者は、サンシアと一緒に浮気現場を共に踏み込まれた者だと気づいた。

「他人の種の子を、育てる気概があるのなら、サンシアを娶りますか?」


部屋の中から聞こえる男の声は、知っている男の声に似ている気がした。
跡継ぎになれなかった二男の男。
散々見下し、馬鹿にして、男の恋人を寝取ったこともある。

そんな男の子でも我が子として育てられるか。


伯爵の言葉に返事は出来なかった。

ただ、男に強請るサンシアの甘える声が、ズーワンの心をえぐり続けた。

あなたにおすすめの小説

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました

ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。

彼の義妹は、本当に可哀想な子だ。

下菊みこと
恋愛
ダークなお話です。 愛し合う二人、邪魔な義妹。その行き着く果ては? そんなお話です。 小説家になろう様でも投稿しています。

最強魔術師の歪んだ初恋

黒瀬るい
恋愛
伯爵家の養子であるアリスは親戚のおじさまが大好きだ。 けれどアリスに妹が産まれ、アリスは虐げれるようになる。そのまま成長したアリスは、男爵家のおじさんの元に嫁ぐことになるが、初夜で破瓜の血が流れず……?

満月の秘め事

富樫 聖夜
恋愛
子爵家令嬢エリアーナは半年前から満月の夜になると身体が熱くなるという謎の症状に悩まされていた。 そんな折、従兄弟のジオルドと満月の夜に舞踏会に出かけなければならないことになってしまい――?  アンソロジー本「秘密1」の別冊用に書いた短編です。BOOTH内でも同内容のものを置いております。

妹に初恋を奪われ追放された王女、私を捨てた騎士がなぜか二度恋してきます〜迷宮の通信機で再会したら執着が重すぎる〜

唯崎りいち
恋愛
妹を刺した――。 身に覚えのない罪で、迷宮へ捨てられた王女の私。 絶望の中で拾ったのは、スマホに似た『未知の魔導具』だった。 繋がった相手は、見知らぬ「名もなき騎士」。 孤独を癒やしてくれる彼に、私は正体を知らないまま惹かれていく。 「君のためなら、国にだって逆らう」 けれど、再会した彼の正体は……? 「国だって滅ぼす。それくらいの覚悟でここに来たんだ」 通信機から始まる、二度目の初恋と逆転ざまぁ。

公爵令嬢のひとりごと

鬼ヶ咲あちたん
ファンタジー
城下町へ視察にいった王太子シメオンは、食堂の看板娘コレットがひたむきに働く姿に目を奪われる。それ以来、事あるごとに婚約者である公爵令嬢ロザリーを貶すようになった。「君はもっとコレットを見習ったほうがいい」そんな日々にうんざりしたロザリーのひとりごと。