ハーレムエンドを目の当たりにした公爵令嬢

基本二度寝

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公爵はどうにか婚約の破棄を取り消せぬかと急いだ。
交した婚約破棄の同意書が、撤回不可能な精霊の契約だとはまだ知らなかったから。

王からの知らせはない。殿下の一存なら、まだなんとかなるはずだと信じて、公爵は殿下との面会を望んだ。

殿下の私室へ向かう廊下で、人払いを申し付けられていると面会を断る近衛の制止を振り切って廊下を走り、王太子の私室の扉を開けた。

そこで見た光景に、公爵は言葉を失った。

男に跨っているのは、娘に面立ちの似た王子。
薄ら笑いのままこちらに目を向け、口を開いた。

「たす、けて」

それは、王太子の声ではなく、殿下にまたがられていた男が発した。

「公爵、様っ、助けてください」
「殿下を、止めてください」

続いて他の二人の裸の男が公爵の前に駆け寄ってきた。

「我々ではもう、殿

「一体…これは何があったというのだ」

公爵は目の前の事に混乱した。
レンニアーネとの婚約破棄の事など頭から抜け落ちるほど。

交互に救済を訴える宰相の子息と騎士団長の子息。
王太子の下で藻掻くのは涙目の魔法士団長の子息だった。

驚愕に目を見開く王太子の姿を、公爵は見逃した。


王太子の部屋にいた貴族の子女ら四人。
子息三人と令嬢一人から個別に話を聞き、出た結論に公爵は頭を抱えた。


ー…王太子殿下が求めたレンニアーネとの婚約破棄は、その身を守る純潔の制約から逃れたかった若い肉欲のせいか…。

殿下は、男色の傾向にあったのだ。
公爵は全く気がつかなかった。
王はご存知だったのだろうか。

現場にいた四人の証言は一致している。
違うそうではない、と否定し続けていたのは王太子殿下。
しかし、公爵は見てしまった。

扉を開けた時、男に跨り、興奮して腰を振っていたのは王太子の方だった。

『私は被害者だ!』

必死さは演技ではないと思えた。
魔法士団長の子息が隠し撮っていた、側近ら三人を脅しつけている映像を先に確認しておかなければ、殿下の気迫に無実を信じていたかもしれない。

部屋にいた下位貴族の令嬢に、危害は加えられていなかった。
彼女はただ、婚約破棄の道具にされたようだ。

男爵令嬢は、殿下に命じられるまま、男たちとの情事を絵に描かされていた。
スケッチは、様々な体勢で男とじゃれ合う殿下の様子ばかりだ。

それらの証拠を殿下の前に提示すれば、怒りに任せて破損された。

全部偽造されたものだと訴える王太子だが、公爵には証拠隠滅の行動にしか見えなかった。

『偽造された証拠であれば、解析すれば解ることです』
『…!あんなものを他者の目に触れさせるつもりか!』

公爵は哀れんだ。
どうして誰も信じないと叫ぶ王太子の言動が、あまりに普段の姿と違いすぎた。

聴取の際に、騎士団長の子息から渡された婚約破棄の同意書を受け取った。

覆ることのできないその証書を見て、公爵はここに来た目的を思い出し、同時に安堵した。
婚約破棄されていてよかった、と。

このまま成婚したとしても、娘は子を生せぬ妃として侮られたに違いない。
だから、これでよかったのだ。


この後で公爵は国王との面会を希望した。
突然の事なので当然何時間も待たされるだろうが。

王太子の独断での婚約破棄についてと申告しておけば、遅くなろうとも時間は取っていただけるだろう。

公爵は、次を考えている。
できるだけ速やかに娘の結婚相手を探すつもりだ。
都の貴族ではなく、できるだけ王都から離れた貴族がいい。

いくつかの候補の家を頭の中で選び抜く。

婚約者だった王太子の醜態が外部に漏れても、傷つかぬよう耳の届かぬ場所へと願うのは、親心だった。
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