ハーレムエンドを目の当たりにした公爵令嬢

基本二度寝

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蛇足

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ー主人公は男女の選択可能
ー主人公の行動や選択によって相手の好感度が変化する
ー二人以上の同時エンドは難易度が高い

箇条書きに書き出した文章を目で追う。

「三人、なんて上々の結果じゃない…?」

女は満足げに頷いた。


王太子の秘密を目の当りにした事もあり、男爵令嬢は社交界への出入りを禁じられた。
王家から警護という名の監視も付けられて、外出もままならず屋敷に籠るしかない。
王子の秘密を守るため。修道院行きも認められなかった。
自由を奪われた。
それでも男爵令嬢は幸せだ。

「乙女向けのゲームだったけど、主人公の性別を選べる仕様は良かったなぁ」

遠い記憶にある自分は常に男主人公を選んだ。
騎士に守られるのも、宰相に甘やかされるのも、魔法士を甘えられるのもどれも違っていて良い。

が、彼らに愛されている姿を見るのが良いのだ。

男爵令嬢の自分の立場は、男主人公【王太子】のサポートキャラクターに当たる。
今回その役割を、存分に果たした。

当人が望むとか望まないとかは関係ない。
そうしたまでだ。

アドリは最初から王太子に惚れていたし、遠縁でもあったザイルは本人に気づかれないように殿下に想いを寄せるように誘導した。
カーグは王太子に対して好意、というよりも、承認欲があったので利用した。

攻略対象は他にもいたが、隣国王子や王弟殿下と繋がるすべはなく、男爵令嬢の関われる人物は三人が限界だった。

性別を女に選んだ場合の主人公になる、レンニアーネに婚約破棄を言い渡す事で、恋愛エンドルートに入り、主人公のそれまでの好感度で相手が決定する。

好感度を数値で可視化出来なかったので、誰のエンディングを迎えるのか期待していたが…まさか三人同時とは思いもしなかった。
嬉しい誤算だ。

彼らは今後も王太子殿下の側近として侍り続ける。

『殿下が望むならこの身を差し出しても良い』と、三人は国王に奏上した。

どんなに殿下が『違う』『彼らの方が悪いのだ』と王に訴えたところで、カーグの催淫魔法で色に狂った王太子の都合のよい部分だけ切り取った別の映像と音声を証拠物として提出しているし、それを確認した者は皆、王太子が加害側だと認めている。

王太子に従順だった彼らが、主を裏切るわけがないという外野の声も三人を助けた。

「…またあの宴に呼んでくれないかなぁ」

ザイルと連絡をとれればよいのだけど。

でもまぁ…無理かなぁ?

推しの泣き顔はたまらなかった。
それはきっと彼らも同じで。

今も城の一角で殿下は愛されているのだろうと思いを馳せた。


茶会など開けるわけもなく、外部からの噂話も入ってこないので、男爵令嬢は父が読んでいる日刊の情報紙を手に取った。

そこには、

「…ええ?嘘」

レンニアーネが辺境へ嫁ぐと書かれている。

「辺境…、英雄ランディ?」

その名は物語の端々で出てきていたが、一度も顔を見せることのなかった幻のキャラクター。

それがまさか、此処でその名が出てくるとは思わなかった。

王太子に婚約破棄された公爵令嬢は、救済として何処かに嫁いだという記述は恋愛エンドを迎えた後にある。
その一文でしか彼女の行方を知ることはない。
相手がまさか、だ。

英雄ランディ。

それまで討伐不可と言われた赤竜を倒して龍玉を手にしたという英雄。
略歴には騎士学園中退とあり、時期を見てもアドリと被る。

「…アドリに聞いた事あるけど、そんな奴知らないって言っていたのに」

この世界に存在するなら会ってみたいと思っていた人物。

男爵令嬢は窓外を見る。
屋敷を見張る男は、王宮の騎士だろう。

外出の希望を出した所で、面識もない辺境への遠出は認められないだろう。
国境も近いし。
国外逃亡を疑われたら命が危うい。

あんな風に婚約破棄をしたせいで、レンニアーネからは良い印象を持たれていない男爵令嬢が、結婚式に呼ばれるはずも無い。

「ランディ…会ってみたいっ、のに」

ずっと明かされなかったその姿。
彼の所在がわかったというのに、身動きの取れぬ我が身。

己の欲を消化させたはずが、諦めたはずの欲望が芽吹き、男爵令嬢は苛まれた。
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