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辺境で一部隊長を任されているランディは、若くしてその地位にいた。

侯爵家の三男坊ランディは上の兄たちと違い、継げる爵位はなかった。
せめてもと、両親が騎士養成の学園へ入れてくれたものの、王都の騎士ではなく辺境の兵士となって居るのは、在学中の実践研修で派遣されたこの地で頭角を現し、辺境伯からスカウトされたからだ。

まだ、騎士の資格も獲得していなかった養成中の騎士候補でしかなかったランディの実力を辺境伯は認めてくれた。

その頃にはすでに学園でも発生していた派閥争いに辟易していたし、同期で騎士団長の子息だというアドリからの妬みによる嫌がらせにもウンザリだった。

学園を卒業して王宮騎士になれたとしても、アドリからの嫌がらせは、親の立場を利用して更に酷い状況になるだろうことは目に見えていた。
両親からは、三男の将来のために卒業後に与えられる騎士の資格だけでも、と説得されたが、ランディは学園を中退して辺境行きを決めた。

生まれも育ちも関係ない。
侯爵家の人間だからと遠慮されることも気を回される事もない。
実力だけが物を言うこの土地を気に入り、たった数年で部隊を預かるまでになった。

そのランディに、王都から婚約の打診があった。
正しくはランディの実家の侯爵家経由ではあったが、爵位も持たない、辺境に身を置く男に何故。

相手を知り、益々理解ができなかった。

王太子の婚約者の公爵令嬢レンニアーネ。雲の上の存在だ。

学園時代にお見かけしたことがあった方。
側近候補を選びに来たのではと噂された騎士学園の視察に、王太子と共に来られた彼女を拝見した。

思えばあの時からアドリは、王太子殿下に傾倒し始めたように思う。
純粋な憧れとは言い難い、薄ら寒い物をアドリから感じ取った。

結局その正体を、知ることはなかったけれど。

ーーー

辺境から動くことが難しいランディの為に、態々レンニアーネ嬢が王都から出向くとは思わず、魔物や野盗の前でも隙を見せない男は動揺した。

この婚約の打診の不審さを怪しんだ親代わりの辺境伯からは、裏を聞き出せと言われていたにもかかわらず、いざレンニアーネと対峙したランディは、片膝をついて彼女に求婚した。

以前見かけた時よりも、更に煌めきを増したその彼女の姿に、ランディは裏があろうがなかろうが、レンニアーネの手を取ると本能で決めた。

さすがの辺境伯も打ち合わせと違うランディの行動に、開いた口が塞がらず、頭を抱えたようだったが。

辺境伯の調査とランディの勘を以て、レンニアーネには思惑は無いと結論を出した。
王太子との婚約を解消され、王都には居づらいので地方に住む貴族との婚約を望んでいるという理由をランディは言葉通りに受け入れた。

レンニアーネや公爵家はランディを辺境から引き抜くつもりはなく、彼女がこの地に嫁ぐのだ。

ならば辺境伯も否やはない。

こんな土地に好き好んでやってくる令嬢などいない。
侯爵家出身のランディならば、家格にも問題はない。

公爵家の支援も考えれば、辺境にも悪い話ではない。

できるだけ早く公爵令嬢を取り込めと命じるまでもなく、ランディは辺境に滞在するレンニアーネに時間があれば少しの時間でも侍り続け、貴族の婚約の定石である一年後の結婚どころか、予定した半年後の婚姻も、若干早まる結果になった。


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