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1章無色透明な習作
13勇者の伝記2 転生完了
しおりを挟む気が付くと私は真っ白な世界にいた。
目の前にどう見ても女神としか思えない女性がいて、私に話しかけてきた。
「我が名は女神シールト。勇者よ、よくぞきた。我が世界を救って欲しい」
こういう場面お決まりのセリフを言ってきた。
だが私はこの期に及んでもまだ異世界に行くという確信が持てないでいた。
『疑い深過ぎるのが現代人の病』というがその病気に私自身気が使いない内に掛かっていたようだ。
「その要請を受けたいのですが、何分と私は無力でして。適性はあれど実力が無いというのが今の私なのです。ですから向こうの世界でも戦えるような力を授けて頂きたい」
いわゆるチートを授けてみろ、という訳である。
もし目の前の女性にそれが出来るならもはや状況は確定したも同然といっていい。
「・・・少し時間がかかります。この手の事は至高神の判断を仰ぐ必要があります」
そう言って一度女性は消えた。
どの位時間が経ったろうか。昔聞いた、真っ白な壁に人間は長時間囲まれていると発狂するという話を思い出して自分の正気を疑い出した頃あの女性が戻って来た。
「ではあなたに『鋼の意思』なる力を授けます。その使い方はわかるでしょう?どうも彼のいる世界はこういう事に詳しい人間が多いようですからね」
女神は明らかに不機嫌な様子で金色に光る小さな球体を私の体に押し込む。
「では今度こそさようなら。我が世界と民の救済を任せましたよ」
その自分に従って当然という、神にしても頼み方がもう少しあるだろう横柄な態度に文句を言ってやろうかと口を開きかけたところでまた私の意識は暗転した。
再び目の前が明るくなると私は薄暗い建物の中にいた。
そこにはキリスト教風の司祭の様な初老の老人と恐らく王侯貴族の出らしい少女がいた。
匂いや雰囲気からそこは確かに異世界であると感じられる。
「ここが異世界なのか」
目の前の2人に確認するように私は尋ねた。
「その通りです勇者殿。姫様、我らが女神の導きと加護によりこの国は救われますぞ」
「司祭様、早速父に報告へ行きましょう。勇者様、着いて早々でございますがどうか父にこの国の王へ会って下さいませ」
私自身他人にこんな恭しい態度をとられた事は初めてだった。
だから気を良くして城の敷地内にあるこの教会から王の玉座つまり王城へと私は案内された。
まさかこの国いやこの世界がどんなところかも知らずに
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