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1章 無色透明な習作
終章 無色透明の習作
しおりを挟む「それが惟賀正義の異世界での活躍の全てだ。どう思うね、君の目から見てこれは世間に公表に値すると思うかい?」
「率直に言えば」
勇者の伝記を読み終わった私は渡界人に
「ありきたりだね。これを出版したがる所は無いと思うよ。仮に出版したとしてこれより難題で面白い話はいくらもあるだろうし、結局は書店の肥やしにしかならないと思う。だけど彼はこの伝記でも言っているが幸せだったんじゃないかな」
「そうか。だが僕の仕事とはまさにこの伝記の様な無色透明の習作を作る事にあるのだ」
「無色透明の習作?」
「そうさ。惟賀正義然り、竜田浩平然り、君もだぜ、この世界では大衆だとか群衆とかでひとまとめにされるような人々の中からこれはと思う人材を選び、彼らだけの人生を異世界でだけれど送らせる。誰にも知られることも見られることもないが確かに彼らの生きた証は存在する。その一例を君は目撃した訳だね」
「誰にも知られない・・・無色透明な存在」
そう思うと私は眩暈がした。
「それは君とてそうだろう?」
「もちろん。だからこそ僕はこの仕事をしているのだ」
「なら、君の仕事を記録させてくれないか?僕が異世界に行くためのヒントになるかもしれないからさ。それに記録を出版すれば君の事の宣伝にも繋がる」
「いいとも。だ出版には必ず僕の許可を得る事。それが条件だ」
これが世にも奇妙な異世界関連コンサルタントなる仕事をしている渡界人と私は出会い、彼の仕事に関する記録が始まったのだった。
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