異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

文字の大きさ
28 / 125
2章 渡界人の日報

2-1 駆け落ちは異世界で③不審点と調査2

しおりを挟む

「調べるって何を?別に不審な点は無いと思うけど。何にも聞かずに即決した事か?」

「それだけじゃない。こういう場合1人ではなく2人同時に来るものだよ。例え他社との比較をするにしたってね。別行動をとるというのはまずないと言っていい」

「だが現に2人はそう行動している。彼女の言う事が正しいとすればね」

「そうだ。この場合考えられるのは男の方が冷めているか、単にお互いに信用していないだけという可能性もある」

「それは言い過ぎじゃないか?彼女は真剣そのものだったし」

「第一ああいう女性を放っておく男はいない、と言いたいんだろう?今確実に分かっているのはこれが急を要する事でそれがのっぴきならない事情があるという事だけさ」

「ところでどこに行くつもりなんだ?まさか実家に行くのか?」

「いやまずはフム、ここにしよう。君、半日だけ高校生になる気はあるかい?」

「高校生に?」

「そうさ。K大学近くのこのナックへ大学の雰囲気を実際に見に来た高校生へと僕らは変化するのさ」

渡はそう言って試験管を小さく振る。

「最初に大学へ行かないのか」

「先に情報を集めたい。ただ依頼人とその恋人の実家は地元の名士だというからこの手の噂は広まっているだろう。これで僕らのような外部の人間が来たら誰もが警戒する。だが高校生の姿ならば進学希望の大学の雰囲気を見に来たとして周辺をうろついたり大学内を歩いていてもそれほど不自然ではないはずだ」

そう言うと渡は液体を飲み干すと制服姿の高校生へと変わる。

私も続いて赤い液体を飲むと、部屋の巨大な鏡には10数年前の在りし日の私が地元の高校の制服を着て立っていた。



渡界人謹製の特殊液で高校生へと姿を変えた私達は駅とバスを使い、我が国の有名私立大K大学へと向かった。

最寄り駅都市部から郊外へと行くに従い、商店よりも田畑が目立つようになり、その田畑を見下ろす丘の広大な敷地にその学び舎はあった。

この近辺で暇をつぶすとなれば、学生狙いのコンビニと私達が入ったファストフード店くらいしかない。

ここを選んだのには渡曰く

『こういう地域の恋愛絡みの噂話を聞くにはコンビニのフードコーナーやファストフード店に限る。こういう場所には暇な老人が集まって茶飲み話を大概しているからね』らしい。


事実昼時を少し回った店内は以外にも学生より近所の老人のたまり場となっていた。

私達は店の奥まった席に陣取ると近くにいた老人達の噂話が、それも我らが依頼人に関係する内容の下世話な話が聞こえてきた。

内容は彼氏の甲斐性の無い事が話題の中心で仮に旧家同士の因縁という物が無くとも親の立場からすれば娘を任せる気にはならない、といった昔ながらの老人の若者をこき下ろすいつもの口だった。

私は化石の様な考えを滔々とうとうと並べたてる時代遅れの人達の話を聞き流しながら期間限定のハンバーガーをかじりながら渡を見ると彼はアールグレイを飲みながらこの老人らの会話を熱心に聞き入っていた。

やがて飲み物を飲み終わると彼は私に小声で

「大学へ行ってみよう」

というと難しい顔をしながら店を後にした。

「一体何を見に行くんだ?君もあの老人共の噂話を聞いていたんだろ?そんなに深刻な会話だったとは思えないな」

「じゃあ、答え合わせと行こうか。彼らが何を言っていたか教えてくれ」

「彼氏君に甲斐性が無さすぎて結菜嬢は苦労するだろうってだけだろ?ああいうのを聞いていると僕はムカムカしてくるし、途中からはもう半分聞いてなかったよ」

「正確にどう言っていたかは覚えていない訳だね。彼らが3人の登場人物について話していたのをまるで見逃しているというのだな」

「3人だって?」

驚く私に渡は

「重要な所だけ聞かせよう。まず『ミワ君は、あれはあの親父さんでなくてもダメだ』そこは聞いたね」

私は頷く。

「では問題の部分だが『ミワちゃんは立つ瀬がないだろうよ。みーちゃんがああまでなったら』とね。言うまでもなく今の2つの会話は別に人間がそれぞれ言った事だ。だがそうなると話の中に出てきた『ミワ君』と『ミワちゃん』が依頼人かその恋人を指すのか、同じ人物をよしんば指すとしても最後の『みーちゃん』とは何者だろうか?なぜ我々の依頼人はこの人物について一言も言及しない?老人達の話の流れからすればこの人物は中心にいるように見える。見方によっては親ではなくこの人物から逃れる為の駆け落ちともとれる」

「だがそれでも大枠は変わらないぜ」

「そうだ。だがこれ以外にも不審な点は多い。まず彼氏の苗字が不明な点もそうだ。無論もう一緒になった気でいるともとれるが・・・少なくとも当初考えていたような単純な話ではない事は確かなようだ」

そう言うと私達は大学構内へと入っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...