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2章 渡界人の日報
2-2 ドラゴン転生④書店の秘密
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瘋癲堂の広さは下手なショッピングモール並みの広さがある。
中央の総合案内センターから見て左側がフードコートやマンガ喫茶のあるアミューズメント施設と右側が書店となっている。
今渡は案内センターで受付係の女性に
「黒崎美鈴さんはいらっしゃいますか?」
「アポは取っておられますか」
無愛想な対応だが、ここの職員は多かれ少なかれこんな感じである。
それに気を悪くした様子もなく渡は
「いいえ。ですが渡界人が来たと言えば会ってくれると思いますよ」
その答えに受付係はどこかへ内線をかける。
数十秒後係は渡に針が一方向しかない方位磁石の様な物を渡すと
「その針の示す所に向かって下さい」と相変わらず無表情で説明した。
その針の指し示す先は書店内の奥だった。
だが渡は書店の入り口で立ち止まり、何かを探すように店内を見回す。
「何を探しているんだ?」
「君、日之出氏が読むものってどんなものだと思う?少なくともこういう系統の物は趣味だとは思えないのだがね。彼なら歴史ものとか架空戦記物とかの方が似つかわしいと思う。その彼が心惹かれるような本は・・・・」
「だが頭を使わない、心が疲れている時はこういうのが一番いいよ。小難しい物は何だが自分が馬鹿にされている気がするんだよ。もちろんそうじゃないと後から気が付くのだけれど」
「なるほど、心の癒しか。だがこうしたジャンルに詳しくないとすれば少しでも趣味や興味に沿うようにするはずだから、これか」
渡が手に取ったのは本のタイトルは『マイダル・イージ戦記~砕かれた帝国を再統一した女騎士』とあった。
「イラストの女騎士を見たまえ。何か気が付かないか?」
「彼の夢の中に出てきたという紋章の入った盾を持っているね」
「そう。彼は恐らくこれに何かを感じ取って転生、それもドラゴンになろうと考えた」
「それは」
「まだその決定を下すには情報が足りなすぎる」
私の言葉を遮った渡はカウンターへと足を運ぶ。
その本を買い求めた渡は磁石の針に従って奥へ進む。
「そうだ。君に言っていなかったが、これから会う黒崎美鈴は僕と同じ仕事をしているんだ。ただ一つ僕と違うのは書店を経営し、異世界に送った自分の顧客の活躍を本にして出版しているという点だ。君ももしかしたら気が付いているかもしれないがここには他の出版社が出していない独自の書籍があるのはそういう訳なんだ。実は僕の扱う案件を本にして出版しないかと何度か誘いが来ているが断っているがね」
そう言いながら私達は針が『STAFFONLY』の扉を指しているのに気が付いた。
他にドアや入れる場所はない。
渡はノックもせずにその扉を開けて中に入った。
中は人がかろうじて2人入れる程のがらんどうの小さな部屋があるだけだった。
すると磁石が淡い光を放ち、私はエレベーターに乗った時の様な浮遊感を感じた。
浮遊感が収まると勝手にドアが開きまるでホテルの様な通路が私達の前に現れる。
「平屋って1階しかない建物のことだよな?何で2階があるんだ?」
「招かれざる者の立ち入れない秘密の部屋という事だろう。こっちの様だ」
渡は通路左奥の『オーナー室』と書かれた扉をノックした。
中央の総合案内センターから見て左側がフードコートやマンガ喫茶のあるアミューズメント施設と右側が書店となっている。
今渡は案内センターで受付係の女性に
「黒崎美鈴さんはいらっしゃいますか?」
「アポは取っておられますか」
無愛想な対応だが、ここの職員は多かれ少なかれこんな感じである。
それに気を悪くした様子もなく渡は
「いいえ。ですが渡界人が来たと言えば会ってくれると思いますよ」
その答えに受付係はどこかへ内線をかける。
数十秒後係は渡に針が一方向しかない方位磁石の様な物を渡すと
「その針の示す所に向かって下さい」と相変わらず無表情で説明した。
その針の指し示す先は書店内の奥だった。
だが渡は書店の入り口で立ち止まり、何かを探すように店内を見回す。
「何を探しているんだ?」
「君、日之出氏が読むものってどんなものだと思う?少なくともこういう系統の物は趣味だとは思えないのだがね。彼なら歴史ものとか架空戦記物とかの方が似つかわしいと思う。その彼が心惹かれるような本は・・・・」
「だが頭を使わない、心が疲れている時はこういうのが一番いいよ。小難しい物は何だが自分が馬鹿にされている気がするんだよ。もちろんそうじゃないと後から気が付くのだけれど」
「なるほど、心の癒しか。だがこうしたジャンルに詳しくないとすれば少しでも趣味や興味に沿うようにするはずだから、これか」
渡が手に取ったのは本のタイトルは『マイダル・イージ戦記~砕かれた帝国を再統一した女騎士』とあった。
「イラストの女騎士を見たまえ。何か気が付かないか?」
「彼の夢の中に出てきたという紋章の入った盾を持っているね」
「そう。彼は恐らくこれに何かを感じ取って転生、それもドラゴンになろうと考えた」
「それは」
「まだその決定を下すには情報が足りなすぎる」
私の言葉を遮った渡はカウンターへと足を運ぶ。
その本を買い求めた渡は磁石の針に従って奥へ進む。
「そうだ。君に言っていなかったが、これから会う黒崎美鈴は僕と同じ仕事をしているんだ。ただ一つ僕と違うのは書店を経営し、異世界に送った自分の顧客の活躍を本にして出版しているという点だ。君ももしかしたら気が付いているかもしれないがここには他の出版社が出していない独自の書籍があるのはそういう訳なんだ。実は僕の扱う案件を本にして出版しないかと何度か誘いが来ているが断っているがね」
そう言いながら私達は針が『STAFFONLY』の扉を指しているのに気が付いた。
他にドアや入れる場所はない。
渡はノックもせずにその扉を開けて中に入った。
中は人がかろうじて2人入れる程のがらんどうの小さな部屋があるだけだった。
すると磁石が淡い光を放ち、私はエレベーターに乗った時の様な浮遊感を感じた。
浮遊感が収まると勝手にドアが開きまるでホテルの様な通路が私達の前に現れる。
「平屋って1階しかない建物のことだよな?何で2階があるんだ?」
「招かれざる者の立ち入れない秘密の部屋という事だろう。こっちの様だ」
渡は通路左奥の『オーナー室』と書かれた扉をノックした。
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