異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

文字の大きさ
36 / 125
2章 渡界人の日報

2-2 ドラゴン転生④書店の秘密

しおりを挟む
瘋癲堂の広さは下手なショッピングモール並みの広さがある。

中央の総合案内センターから見て左側がフードコートやマンガ喫茶のあるアミューズメント施設と右側が書店となっている。

今渡は案内センターで受付係の女性に

「黒崎美鈴さんはいらっしゃいますか?」

「アポは取っておられますか」

無愛想な対応だが、ここの職員は多かれ少なかれこんな感じである。

それに気を悪くした様子もなく渡は

「いいえ。ですが渡界人が来たと言えば会ってくれると思いますよ」

その答えに受付係はどこかへ内線をかける。

数十秒後係は渡に針が一方向しかない方位磁石の様な物を渡すと

「その針の示す所に向かって下さい」と相変わらず無表情で説明した。

その針の指し示す先は書店内の奥だった。

だが渡は書店の入り口で立ち止まり、何かを探すように店内を見回す。

「何を探しているんだ?」

「君、日之出氏が読むものってどんなものだと思う?少なくともこういう系統の物は趣味だとは思えないのだがね。彼なら歴史ものとか架空戦記物とかの方が似つかわしいと思う。その彼が心惹かれるような本は・・・・」

「だが頭を使わない、心が疲れている時はこういうのが一番いいよ。小難しい物は何だが自分が馬鹿にされている気がするんだよ。もちろんそうじゃないと後から気が付くのだけれど」

「なるほど、心の癒しか。だがこうしたジャンルに詳しくないとすれば少しでも趣味や興味に沿うようにするはずだから、これか」

渡が手に取ったのは本のタイトルは『マイダル・イージ戦記~砕かれた帝国を再統一した女騎士』とあった。

「イラストの女騎士を見たまえ。何か気が付かないか?」

「彼の夢の中に出てきたという紋章の入った盾を持っているね」

「そう。彼は恐らくこれに何かを感じ取って転生、それもドラゴンになろうと考えた」

「それは」

「まだその決定を下すには情報が足りなすぎる」

私の言葉を遮った渡はカウンターへと足を運ぶ。

その本を買い求めた渡は磁石の針に従って奥へ進む。

「そうだ。君に言っていなかったが、これから会う黒崎美鈴は僕と同じ仕事をしているんだ。ただ一つ僕と違うのは書店を経営し、異世界に送った自分の顧客の活躍を本にして出版しているという点だ。君ももしかしたら気が付いているかもしれないがここには他の出版社が出していない独自の書籍があるのはそういう訳なんだ。実は僕の扱う案件を本にして出版しないかと何度か誘いが来ているが断っているがね」

そう言いながら私達は針が『STAFFONLY』の扉を指しているのに気が付いた。

他にドアや入れる場所はない。

渡はノックもせずにその扉を開けて中に入った。

中は人がかろうじて2人入れる程のがらんどうの小さな部屋があるだけだった。

すると磁石が淡い光を放ち、私はエレベーターに乗った時の様な浮遊感を感じた。

浮遊感が収まると勝手にドアが開きまるでホテルの様な通路が私達の前に現れる。

「平屋って1階しかない建物のことだよな?何で2階があるんだ?」

「招かれざる者の立ち入れない秘密の部屋という事だろう。こっちの様だ」

渡は通路左奥の『オーナー室』と書かれた扉をノックした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

処理中です...