異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

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2章 渡界人の日報

2-2 ドラゴン転生③謎めいた書店へ

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渡はその本を開くと

「ここには僕が過去依頼人を送った異世界とそれに関わる事柄を記述してある。アイアンハックへはまだ送った事は無いがその周辺国ヘドーロックには送った事があるからね」

「君と知り合ってすぐの奴だね」

「その通り。アイアンハックはヘドーロックとは狭い海峡を挟んでいる大陸の北側にある軍事国家だ。しかしこの国の第一の仮想敵はヘドーロックではなく、同じ大陸の南と東の国だ。それが異世界マイダル・イージ随一の文化大国カーテシニアと天然のジャングルや砂漠の要害に守られている自然国家ネッケンだ。この三国は元々一つの帝国だったのだが各地に封じられた皇族らの自立で3つに分かれてしまった。鉄騎公国の名の通り国民は武器と呼べる物の最低1つは習熟する事と国民皆兵の義務がある。ただ夢の戦闘の場所が問題だな」

「どうしてだ?」

「その場所はダイウォ―ル山脈でここでの戦闘行為とこの地の領有は禁止されているんだ。もし破った場合他の2か国から同時攻撃を受ける事になる。ちなみにこの山脈には大宝物が眠っているという伝承が各国に伝わっている」

「とんでもない被害を出すかもしれないドラゴン相手にのんき過ぎやしないか?」

私は呆れた声を上げる。

「ところが問題はもう一つあって、マイダル・イージの生態系にドラゴンその他のファンタジー系のいわゆる魔物は存在しない。あくまで我々の世界にいる生物と大差ないんだ。最もヘドーロックでこういう生物を作ったというならまた話は違ってくるがね」

「そうなると同じ夢を何度も見るというのは何を意味するんだ?」

「まさにそこだ。アイアンハック側にいる神様連が何かを企んでいるのか?それとも夢自体が僕に転生させるための作り話なのか?調査の最初はそれを確かめねばならない。君も一緒に行くかい?」

「何処へ?」

「本屋だよ。もしかしたら君の御用達かもしれん」

そう言うと渡は外出用の服に着替える。

「本屋にアイアンハックに関する本があるのか?」

渡と共にアパートを出た私は首をひねる。

「ま、そこは着いてから話すよ。君、瘋癲ふうてん堂を知っているかい?」

「もちろんだとも。あそこにない異世界本は無いと言い切れるよ」

瘋癲堂は私達の住む町の中心地からやや離れた場所にある大きな平屋の書店である。

瘋癲(正常でない事)の意の通りこの書店は他と違う書棚の構成をしていた。

とにかく異世界関連の本がジャンル別に所狭しと並び、一般書や雑誌の類は建物の片隅に追いやられているのである。

さらに言えば扱う異世界関連本も他の書店では見たことも聞いたことも無いようなタイトルの物があり、私は密かにこの書店がどこかの出版社もしくは小説サイトの運営会社によって経営されているのではないかと疑っている。

私達はそんな書店に足を踏み入れた。
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