異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

文字の大きさ
42 / 125
2章 渡界人の日報

2-3 盗まれたチート②異世界へ

しおりを挟む


「まずはダイレクシオンの神々は不死ではありますがその力には限界がある、という事を説明しなければなりません。私達は力を振るえば振るう程その力を消耗していき最後には別の神にその役職を引き継がなければなりません。力を使い果たした神々は休眠期間を経て再び役職に戻るもよし、後任を作り悠々自適に暮らすも自由です。それは神々を統括する大神でさえも例外ではありません。大神の交代時は我々神々全体の力が弱まる時期なので事は慎重に運ばなければならないのですが今回の事件はまさにその大神の交代の間隙をついて行われたとしか思えません」

「その交代の時期と引継ぎはどの位の期間でしょう?まさか力が衰えたからすぐにとはいきますまい」

渡の質問に女神は

「人間の感覚で言えば1年ほどでしょうか。半月後には交代の儀式をするのですがその準備のために3日前に宝物庫を開けたら石板が無くなっていたのです。とは言えそれ以前にも既に私達の力は弱まっていましたから警備の目をすり抜ける事さえできれば石板を守る結界は殆ど機能していない状況ですから取ろうと思えば取れる状況ではあるのです」

「その警備はどのような物でしょうか?」

「まず宝物庫へ行くまでに私達の住む館を通り抜けなければなりません。そこには常時200人の警備兵が詰めています。そして館と宝物庫を繋ぐ道は特に腕と信頼のおける兵が館側と宝物庫側に10名ずつ配置されています。そして石板は物が物なので宝物庫の最奥部に位置しています。この最奥部の扉を開くには大神の他2柱つまり計3柱の神が管理する鍵を使わなければ開ける事は出来ません。そしてそこを開けたとしても石板を収めた箱を開ける鍵が無ければいけません」

「その鍵を持っているのはどなたですか?」

「大神です」

「つまり大神は宝物庫と箱の2つの鍵を管理している訳ですね?その鍵の管理はどうなっていますか?」

「実は特定の鍵を持っている訳ではないのです」そう女神は言う。

「鍵を持つ3柱の神は鍵穴と鍵を自在に変える事が出来ます。その為普段は錠前はレリーフ以上の意味を持ちません」

「宝物庫の錠が壊されていましたか?」

「いいえ。全くの無傷でした」

渡はそこで暫く考え込み

「その石板にはどんな秘法が記されているのでしょう?そしてこれを持っていく事で利益になる者の心当たりはありますか?」

「奪われたのは転生や転移者といった人間相手に使うモノです。例えば無限の魔力を得るだとかあらゆる武器の達人になるとか。相当に強力で使い方によっては神さえ滅ぼしかねないので厳重に保管していたつもりだったのですが・・・それと心当たりはありすぎると言っていいでしょう。あの中には異世界の扉を開いて任意の者を召喚する秘術もあります。それを使って強力な手駒を揃える事など苦も無くできますから」

「大神を倒す事も可能ですか?」

「その者の素質にもよりますが可能だと思います」

そう言うと女神は嘆息した。

「神界には異変はまだないのですね?」

「ええ」

「そうなると不思議ですね」

渡は立ち上がると鏡の前に立つ。

「事を起こせば確実に神界の秩序が変わるというのにそれをしないというのは?3日あればそれくらいの事は出来そうなものでしょうにね。石板に刻まれている文字を読めない神がいますか?」

「生まれたてでもない限りは読めると思います」

「そうなると全く別の目的か、単純にいたずらという可能性もないとは言えない。最も後者の可能性は現状では限りなく0に近いですがね」

「別の目的って?」

私が口を挟む。

「分からん。君がそれを調べてくれたまえ。僕はこの仕事をするにあたっての協約上異世界へはいけないのだ。だから君にお願いするしかないのだ」

「そんな・・・僕に務まるかどうか」

突然の大役に私は面食らった。

「では女神ネイ、彼を調査に送ります」

「分かりました。可能な限り便宜を図りましょう。期待していますよ」

だがこの女神の微笑みを見て断るという選択肢を取るほど私は愚かではなかった。

こうしていささか予定は違うが憧れの異世界へと私は足を踏み入れる事になったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

処理中です...