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2章 渡界人の日報
2-3 盗まれたチート①前代未聞の失態
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我が隣人渡界人の仕事である『異世界総合コンサルタント』という仕事の主たるものは異世界転生及び異世界転移「業務」である。
だが総合コンサルタントの名が示す通り、時には全く毛色の異なる仕事を引き受ける事もままある。
その当時この業界に激震の走った今回記すチート盗難事件もまた彼のその例外業務の一つにして代表的な物の一つであろう。
それはある夏の午後だった。
うだるような暑さにも拘らず渡はカセットコンロの上に鍋を置き、彼にしか分からない製法の特殊液を煮たてていた。
少しの気温差も命取りという理由で部屋は閉め切られてクーラーさえ点ける事を禁じている中での作業である。
「それは今やらなくちゃいけないのか?見ているだけで熱くなるんだが」
私の抗議に渡は目も上げず
「なら自分の部屋に戻りたまえ。僕は忙しい」
「そうするか。こんな日は依頼なんかもないだろうし」
私が立ち上がった直後この部屋の巨大な古い鏡に女性の姿が映し出された。
「渡界人はいますか?」
その言葉に渡は作業を停めて鏡の前の椅子へ座る。
「渡界人は私です。あなたは異世界ダイレクシオンの転生神ネイですね?」
「我らが世界と我が名を知っているとは流石と言おうか。貴殿を見込んで極秘かつ迅速にある仕事を遂行してもらいたい」
とそこまで言って女神は私を見る。
「ああ、彼は僕の友人で記録係をしている男です。信用してくださって大丈夫ですよ。それで深刻な問題のようですが、確かダイレクシオンは数年前の人類の最大の毒は文明であるとする過激な秘密結社の起こした『原始戦争』以降は平穏そのものだとききましたが?あれは一部の宗教組織とも結びついて世界戦争ともなりましたが、最終的にはそちらの満足にいく結末を迎えたと聞きました」
渡はこの手の問題で無視されがちな私のフォローをしながらダイレクシオンの説明をしてくれる。
「ええ、地上世界はね。ですが事は我らがダイレクシオンの天界での出来事なのです。ではお二人を信用して話しましょう。今回の醜聞を」
女神ネイはそれでも何かためらうような仕草を見せたが意を決したのかこう言った。
「我らが持つ神々の秘法が刻まれた石板が何者かによって持ち出されたのです」
これを聞いた渡は椅子から腰を浮かした。
一方の私は事の重大さをよく飲み込めなかったが渡が小声で
「君の大好きなチートの説明書が盗まれた、というのだよ」
という説明でようやく深刻さに気が付いた。
椅子に座りなおした渡は鏡の中の女神に
「では事の経緯を最初から話していただけますか?」
と人間の依頼人と同じいつもの態度で話を聞くのだった。
だが総合コンサルタントの名が示す通り、時には全く毛色の異なる仕事を引き受ける事もままある。
その当時この業界に激震の走った今回記すチート盗難事件もまた彼のその例外業務の一つにして代表的な物の一つであろう。
それはある夏の午後だった。
うだるような暑さにも拘らず渡はカセットコンロの上に鍋を置き、彼にしか分からない製法の特殊液を煮たてていた。
少しの気温差も命取りという理由で部屋は閉め切られてクーラーさえ点ける事を禁じている中での作業である。
「それは今やらなくちゃいけないのか?見ているだけで熱くなるんだが」
私の抗議に渡は目も上げず
「なら自分の部屋に戻りたまえ。僕は忙しい」
「そうするか。こんな日は依頼なんかもないだろうし」
私が立ち上がった直後この部屋の巨大な古い鏡に女性の姿が映し出された。
「渡界人はいますか?」
その言葉に渡は作業を停めて鏡の前の椅子へ座る。
「渡界人は私です。あなたは異世界ダイレクシオンの転生神ネイですね?」
「我らが世界と我が名を知っているとは流石と言おうか。貴殿を見込んで極秘かつ迅速にある仕事を遂行してもらいたい」
とそこまで言って女神は私を見る。
「ああ、彼は僕の友人で記録係をしている男です。信用してくださって大丈夫ですよ。それで深刻な問題のようですが、確かダイレクシオンは数年前の人類の最大の毒は文明であるとする過激な秘密結社の起こした『原始戦争』以降は平穏そのものだとききましたが?あれは一部の宗教組織とも結びついて世界戦争ともなりましたが、最終的にはそちらの満足にいく結末を迎えたと聞きました」
渡はこの手の問題で無視されがちな私のフォローをしながらダイレクシオンの説明をしてくれる。
「ええ、地上世界はね。ですが事は我らがダイレクシオンの天界での出来事なのです。ではお二人を信用して話しましょう。今回の醜聞を」
女神ネイはそれでも何かためらうような仕草を見せたが意を決したのかこう言った。
「我らが持つ神々の秘法が刻まれた石板が何者かによって持ち出されたのです」
これを聞いた渡は椅子から腰を浮かした。
一方の私は事の重大さをよく飲み込めなかったが渡が小声で
「君の大好きなチートの説明書が盗まれた、というのだよ」
という説明でようやく深刻さに気が付いた。
椅子に座りなおした渡は鏡の中の女神に
「では事の経緯を最初から話していただけますか?」
と人間の依頼人と同じいつもの態度で話を聞くのだった。
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