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2章 渡界人の日報

2-4地上最強の男④ 鮮やかな逃走

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 私は先の衝撃でまだ頭の中を揺さぶられつつも何とか渡の手配したタクシーに乗り込んだ。

その隣に座る渡が恐らく黒野の車のナンバーを伝えそれを追うように指示するのをぼんやりと聞きながら、結局状況を面白がっていてもいざその場面になれば何の役にも立たないという自己嫌悪に私は苛まれていた。

「仕方がないさ。ああいう修羅場は経験しないに越したことはないのだからね」

「そうは言うがただ座っていただけだったんだ。他にやる事はあったのに」

「それに関しては1つ慰めがある」

渡は例のチート回収装置をクルクル回しながら

「こいつは飛んだ食わせ物だよ。なんせ吸い出す能力はランダムときているからね。おかげで消失の能力を吸い出すのに時間を食ってしまった。もし君が勇敢にも飛び出していたらそれこそ今頃あの世だったかもしれん。しかし全属性攻撃魔法や無限収納と言った物も取り返せたので奴の行動はグッと狭まる訳だが」

「だがこれで黒野も終わりだ。流石にナンバーを控えられちゃそこから足がつく。君のお手柄だよ」

「少し調子が戻ったかな。では僕の行動を説明するからそれと君の見た事と合わせて今後の奴の行動を推理してみようじゃないか」

そう言うと渡は話し始めた

『僕があのコンビニと交差点の両方を見れる位置に着いて20分ほどの事だ。明らかに猛スピードで走る車のあの耳をつんざくスキール音が聞こえたと思ったがそれらしい音を出している車はいない。そこで隠れ場所を少し動いてみると光の反射でおぼろげながら白い車がこちらに向かってくるのが見えた。そこでこの装置を向けた訳だが先ほど説明した通り待てども待てども目当ての能力を回収する気配がない。そうこうする内に奴は車ごとコンビニに体当たりし、金を回収して逃げおおせたという事なのだ。急いで君の無事を確認して先程警察に奴の車のナンバーを知らせた訳だが君ならこの状況をどう潜り抜ける?』

ここまで説明された私は

「無限収納を失った以上回収できる金に限度がある訳だから、隠れ家なりに帰るんじゃないか?」

「だが警察を撒かねばならないが」

渡がそこまで言った時私達は黒野の車が猛加速して高速道に繋がる環状道路を駆け上がる。

と同時にその車から風に乗って札束がバラバラと風に乗って飛び出してきた。

その金を拾おうとして道路に多くの人々が飛び出してくる。

犯人を追ってきたであろうパトカーもさすがに逮捕の為にひき逃げをするわけにはいかず一帯は人と車で溢れかえり、文字通りあり1匹抜け出せない状態だった。

更にバキバキという凄い音を立てて例の白い車が高速道の壁を突き破って転落、海へと没した。

「しまった!黒野はSNSで人をあらかじめここに来るよう仕向けていたんだ。これを見たまえ」

渡が私に見せたスマホには本日2時半につかえきれないから皆に現金を配るという内容の書き込みが投稿されていた。
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