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2章 渡界人の日報
2-4地上最強の男③見えない銀行強盗
しおりを挟む私はニュースサイトの画像を渡に見せた。
そこにはこう書かれていた。
『本日13時に東京都R銀行k支店の車庫にて行員3名が現金輸送車から現金の入ったケースを下ろそうとした所そのケースが彼らの目の前で突如消失し、この不可解な現金消失から数分後に何者かが車で走り去る音がしたことから何らかの方法を使った現金強奪と判明、通報があった』
そこまで見た私達のスマホにそれぞれ通知が入り、同様の現金消失事件が立て続けに都内の銀行やコンビニのATMで起こった事を伝えていた。
以下はその内の一つである。
『本日13時30分に東京都M銀行t支店内の現金自動預け払い機(ATM)1台に突如謎の穴が開きその中から現金1千万が抜き取られると同時に消失した。この不可思議な事件の数十秒後店内の自動扉が開き、続いて車の走り去る音が聞こえたことから現金強奪とわかり』
そこまで読み上げた私に渡は
「君、事件があった場所を教えてくれ。僕が地図で場所を確認するから」
言われて私は関連するであろう事件の記事を次々に読み上げた。
それを聞いて渡が地図アプリにポイントを付けていく。
「よし、僕らはついているぞ。この犯人の次の目星がついた。犯人は真っ直ぐ直線状の銀行やコンビニのATMを数100mおきに襲っている。このままなら今僕たちのいる所から近くのコンビニのATMを狙うに違いない」
そう言って彼は走り出した。
「しかし、いくら常人には計り知れない方法を使うからといってこうも短時間で事件を起こしまくる物かな?」
私達が目星のつけたコンビニの前にたどり着き、息を切らしながら私がそんな疑問を口にする。
「絶対に見つかりっこないという自信とあれだけ不可解な方法を使えばまず通報した人間の方が疑われるだろうという計算があるのさ。それはそうと君、中に入ってATMを見張っていてくれないか。僕は外にいて妙な車がいないかを見ていよう」
同じ距離を全力疾走したというのに渡は息一つ乱さずに私に例の円筒形、つまりスキル回収装置を渡しながら言った。
「使い方はただ相手に、今回は姿が見えないからそこに居ると思う場所に向けてこの円筒形を向けるだけでいい」
渡ももう1つの装置を持ってコンビニの影に姿を隠す。
私も装置をポケットに忍ばせてコンビニへ入った。
犯人のトリックが分かっているという事実が私の心を嫌が応にも興奮させる。
この時数人の客がコンビニ内にいたが恐らく全員が私を見て不審者と思った事だろう。
実際私は件のATMをイートインコーナーの椅子に座って眺めながら犯人の一連の犯行の一部始終を容易に思い描き、それを阻止する場面という一世一代のドラマティックな瞬間を今かいまかと待ち構えている構図はどう見ても私が強盗の計画を練っているようにしか見えなかっただろう。
だから渡が外から『みんな離れろ!!』という声に反応が遅れてしまった。
轟音と共にいきなりコンビニの入り口付近の窓が割れ、近くの新聞スタンドやコーヒーメーカーを置いた台を倒れた。次の瞬間には何かが走ってくる音と同時にATMに穴が空き中の現金が消えると同時にまた足音してその後に突如として姿を現した白い車が走り去っていった。
幸い私が座っていた場所は建物の最も奥まった場所だったので何の怪我もなかった。
だがあまりの出来事に呆然としていると渡が私の顔を叩きながら
「君、君しっかりするんだ。どこも怪我はないだろうね?」
「あ、ああ大丈夫だ。どこもケガはない。ただあまりの事に衝撃を受けていただけさ」
「ならよかった。今からあの車を追う。外でタクシーを待たせているんだ」
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