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2章 渡界人の日報
2-5悪人転生⑦異世界更生プログラム2
しおりを挟む私としてはこのまま帰っても誰も待っている者はいないし、この異世界更生プログラムという渡界人個人が介入できそうもないプロジェクトに何の用があるのかという疑問を聞きたくてたまらなかったのでその場に残って彼と真龍警部の会談が終わるのを警視庁内の廊下にある長椅子で待っていた。
「君はあの真龍警部をどう見たね?」
真龍警部と渡は2時間半たっぷりと話し合った後、渡は帰りの電車のボックス席で私にそう尋ねた。
「いけ好かない人間だよ。更生プログラムとやらも本当に異世界に送っているのか?彼の態度を見れば囚人を非合法な実験室送りにしているといっても驚かないよ」
「手厳しいね。だが君の印象は間違いじゃないが彼のプログラムは文字通りの事業だよ。そこは安心したまえ。実際事情聴取自体は5分で終わってしまったからね。後は彼の仕事へのアドバイスをちょっとね」
だが渡とそれなりの長い付き合いをしている私にはその『ちょっと』が喧々諤々の互いの主張の応酬だったことは容易に想像ができるのだった。
「そうだ、彼は自分の異世界パートジュールでの活躍について何か説明したかい?」
「いいや何も。ただ召喚されて本人は詳しくは言わなかったが魔王やらなんやらを倒して帰って来たとしか話さなかった」
「そう。問題はそのやり方だったのさ。君に彼について変な偏見を与えたくは無かったので言わなかったのだが彼はバリバリのキャリア組という奴でね。やり方はともかく今も昔も警察官としての使命に燃えているのは本当さ。ところで君に質問だがそんな人物がいきなり異世界召喚されたらどう行動すると思う?」
「ぼくなら帰りたがると思うが。けど帰れないんだろう?だとすると・・・・ウーム」
真剣に考え込む私を見て噴き出す渡
「悪い悪い。そんなに真剣に考えこむとは思わなくてね。奴は魔王とその側近の四天王だけを倒して帰って来たのさ。それで魔王軍は総崩れになり、向こうの時間で既に50年が立とうというのに未だに後継者争いをしている始末さ。だがこれの何が問題かわかるかい?」
「まさか、魔物だか魔族の襲撃自体は終わっていない?」
「その通り。軍隊が総崩れになったとは言ったがその実は各地域の魔族が独自行動を取っているというだけにすぎない。君の大好きなRPGでいう所のラスボスとその1つ前に出てくるボスキャラだけを倒して、いわゆる中ボスやイベントボスといった手合いは一切無視して帰って来たんだ。これで向こうの人間達の復興が進むわけはない。そこで真龍警部が考えたのが例の異世界更生プログラムという奴だよ」
「次更剛士はどうなるのだろう?」
「彼は恐らく最も危険な魔族討伐隊の一員として送られるだろうね。ちなみにこれに送られた囚人で無事に帰って来たのはまだ1人もいない」
「酷い話じゃないか!」
私は思わず声を荒げてしまった。
「おや。君なら自業自得だの我々の血税で養う犯罪者が減ってよかっただのと言うかとおもっていたが」
「いやさ、さすがに量刑に応じた罰は受けるべきだと思うよ。でもこれは死刑いや処刑と同じじゃないか」
心底驚いたという顔をする渡に私は先程の声を荒げた事を恥ずかしく思って小声で言った。
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