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3章 候補者は4人
2 足取りを追って
しおりを挟む渡はテーブルに着くと依頼員に切り出した。
「2つ質問を。まずは最後にお兄様と会われたのはいつですか?その時この広告の事や異世界がどうのと言っていたりはしましたか?」
「いいえ、全く。ただ・・・・昔の様に暴力的で仕事がうまくいってなくてやめようかと話していたのです。それが4か月前の事です。私達は年3回会う事にしておりました」
「では最後に、お兄様は昔ヤンチャをしていたようですが具体的には何をしていたのですか?」
「それはその・・・・いえ話します。こちらからお願いするのですから包み隠さず話すのが筋です。兄はその昔関東を席巻していた暴走族『エターナルフレイム』のリーダーでした」
エターナルフレイムの悪行は世間一般に疎い私でも知っているほど酷いものだ。場所を選ばぬ暴走行為に破壊行為や車上荒らしまでするとんでもない集団だった。こんな連中でも一応生き物を故意には傷つけないというポリシーがあってこの手の愚連隊特有の潔癖さでそれを守っていた。
「そう言えば、ひき逃げでリーダーが掴まってから解散したって聞いたけど」
「そうです。その時掴まったのが兄でした。兄は自ら作った掟を破ってしまったのを苦にしてチームを解散して、逮捕されたのです。それで両親とは絶縁しましたが私だけは何とか繋がりを持っています」
「そのお兄様の事件を担当した人物を覚えておいでですか?」
「いいえ。当時は色々と大変でしたので」
「そうでしょうね。いえつまらぬことを聞いて申し訳ありません。明日、僕らはこのチラシの関係者に会いに行きます。何か分かったら連絡を差し上げるので電話番号を」
「ええっ!兄が何処にいるのかもうわかったんですか!?どこですか?私も一緒に」
丹下灯里嬢はテーブルに身を乗り出し熱っぽい目で懇願してくる。
「そこがどんな事になっているかは分かりません。つまりお兄様がどうしているかが分かるとは限りませんよ」
「それでも何も手掛かりが無いよりかはマシです。ああ良かった。これで少しは希望が持てます」
「では明日10時にここへ。念を押しますがお兄様の行方を突き止められるかはお約束できませんよ」
「君は何か知っているのか?この件に関していやに確証のある口ぶりだったけど」
依頼人が帰った後で私は渡に尋ねた。
「君は警視庁の真龍弾警部に会った事があるだろう。あのチラシに描かれていたのは彼の携帯の番号だ」
その言葉に私は目が点になった。
「公僕があんなチラシで人を集めてるってのか!?とんでもない陰謀の匂いがするねえ」
「どうかな。だが彼が関わるという事はそれなりに危険があるという事でもある」
「君も知らない?」
「そうだ。秘密裡に処理したい何かがあると見ていい。恐らく彼女の兄のような更生したか更生の見込みのある前科者に目を付けたんだろう。世間一般に見て彼らは厄介者だからな」
翌日
私達3人は電車に揺られ東京郊外のある駅で降りるとそこからタクシーで目的の場所へと向かった。
道中灯里嬢は一言も口を利かず、ただ唇をギュッと噛みしめて下を向いていた。
タクシーは駅前のごみごみした街並みを抜けると川の流れる土手上の道を走る。
「すいません!車を停めて!早く!!君、警察と救急車を!!」
渡が普段滅多に見せない焦った表情と緊迫した声で運転手に怒鳴る。
車が停車すると同時に渡は川にかかる橋に向けて走り出した。
この時やっと私を含めた渡以外の人間はその川にかかる橋から飛び降りようとする人影に気が付いたのだった。
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