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3章 候補者は4人
15捜索隊の真実② 恐怖の森
しおりを挟む『私達の入った大森林はこの異世界オーストラムを象徴するものと言えるだろう。地球で言うところのシダ類がここではブナとか杉の巨木並みの高さまで生えていてそれらの葉が完全に天を覆い隠し地上を完全な闇に染め抜いていた。そこでは岡星レナ隊員の探知能力が不可欠だった。彼女は前方を照らす、ライトさえ見渡せぬ距離と範囲をその探知能力で逐一探知して安全の確保に努めてくれていた。彼女を先頭に探索隊は東へと慎重に進み続けた。どれほど進んだだろうか。シダの葉の葉擦れの音以外しなかった森の奥、それも私達の進行方向から何かの物音が確かにした。音そのものは3秒ほどで聞こえなくなったが私達は一様に緊張し身構えた。音のした方を探知するレナ隊員の『ひっ』という声はこれから起こる事態が良くないものであることを暗示させていた。「音の正体はなんだ?岡星隊員?」彼女は徳長隊長の問いかけにも青い顔をして詳細は言わない、いや言いたくないといった風でただ「大丈夫だと・・・思います。・・・・・刺激しなければ」とか細い声でやっと絞り出すように報告した。この真相はすぐにわかった。この一件で私達は隊長の指示でライトを消しレナ隊員の探知能力のみを頼りに先へ進んでいた。異常な長さの青白く光るゲジゲジかムカデのような奇怪な虫が私達の目の前に垂れ下がるシダの葉にからみついて反対側の巨木を渡っていたのだ。その姿を詳細に記そうとは思わない。そいつは人間の生理的嫌悪感その他の人間の本能に刻まれたタブーを激しく刺激するモノだったからだ。そしてこの感情はこの地上での行動に適していると思われる生き物がなぜ、こんな移動方法を取っているかという生存の為の思考を私達から奪ってしまっていた。その嫌な虫は真ん中あたりから青白い血か汁のような物を吹き出した。その飛び散った汁は地面から2mほどの空間に滞空し、別の生物の、それも明らかに捕食生物の残忍な眼と牙だらけの口を浮かび上がらせていた』
この後から数日に渡って通信文が途絶え、帰還して暫くはその間何があったのか景勝氏は語ろうとはしなかった。だが妹である灯里嬢や渡の暖かい献身と励ましのおかげでとぎれとぎれに混乱した口ぶりながら空白の期間、探索隊に起こった恐るべき事態について語ってくれた。
『そいつは今の地球には存在しない、まさしく化け物でした。先程私が皆さんに語ったあの嫌な虫もそいつに比べればはるかに親近感が湧くという物です。そいつは・・・・カエルとかサンショウウオといった両生類とヘビいや、トカゲを合わせたようなおぞましい姿をしていました。多分子供の頃皆さんも図鑑で古代生物の復元図を見たと思います。あれの100倍は忌まわしい、茶色の6本足の肘の曲がった足で透明な体をくねらせながら(これは後で岡星隊員が聞かせてくれたことです)信じがたいスピードで近づいてくると前から2番目にいた徳長氏を捕食しようとそのギラギラ光る牙だらけの口を開いた。私はとっさに彼に覆い被さりその窮地を救った。私達の2人の体をヌメヌメした感触が這いまわり、奥の木立から嘲笑う様な眼光に私達はマヒさせたかの様に指一本動かせぬまま佇んでいました』
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