異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

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3章 候補者は4人

14 捜索隊の真実①

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 異世界から驚異の冒険をただ一人成し遂げて帰って来た丹下景勝氏は現世に帰還後、真龍警部らの施設から外に出て来なくなった。私達が彼の帰還を知らされたのは真龍警部の「温情」だったのだ。実際妹の丹下灯里嬢を伴った私達が景勝氏に面会したのは彼が異世界オーストラムから帰還して実に2か月が過ぎてからなのだった。

「会って話を聞くかね?尤も今の彼は恐怖に神経をすりつぶされて殆どまともにしゃべれる状況ではないが」

それでも兄の無事を確認したい、という灯里嬢たっての願いと特別の配慮で私達も同席を許された。以下は彼自身の話す、とぎれとぎれの話と灯里嬢に送られてきたという通信文を合わせた物語である。


『襲撃は私達が出発する日の朝早く、と言っても深夜と言っていい時間だった。奴らは影の様に侵入し、ダミーの転移機(これは所長たる真龍警部の用心の賜物だったと感心する)を破壊して去って行ったかに思われた。だが敵の中にも知恵者がいたか、施設内にスパイがいたかそれは私達探索隊には分からずじまいではあったが本物の転移機で出発する直前再度連中の襲撃があり、真龍警部は私達を異世界へ飛ばす事を優先して機械を動かす事を優先したのだった。光と共に地面に吸い込まれる中最後に見た光景は全身黒づくめに奇怪なマスクを着けた侵入者に機械が壊され火花を上げる様と奴らにスタッフが倒される光景だった。
こうして私達探索隊はその初動から暗い影が差していた。転移してきた場所は本来の転移先から大きく逸れた空き地のど真ん中だった。この事に気が付いた隊長の徳長光吉によれば、大森林と北の不毛の大山脈の位置関係から私達は30キロほど西にズレた大森林の北のはずれに転移したという。その後徳長氏と本部との通信によって私達は食料その他の事情から予定の3倍以上の距離を大森林の中で過ごさねばならないという事態に見舞われたのだった。この事は本部が無事だった喜びよりもこれから事前に説明を受けていた大森林内にいる恐るべき生物と例のダーハムなる邪神のカルト共の襲撃もしくは追跡をうけることになるという緊張と不安を隊内の空気を支配するに十分だった』

『「グズグズしていても始まらない。いつ来るかの不安におびえるより不測の事態に備えて今は先に進むことが不安を払う最善の方法と私は考える。皆はどうか?」徳長氏の深みのある声による説得は隊内の空気を一時であるにせよ冒険への期待と前向きな不安に変える事に成功させた。私は彼が隊長でよかったと心から思え、真っ先に賛意を示した。私に続いて他のメンバーらも賛成の意を示して、探検隊は異世界への冒険を待つ暗い森のの中へと入って行った』
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