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3章 候補者は4人
20 捜索隊の真実⑦ 滝の中の眼
しおりを挟む『私と徳長隊長は元来た道を這い進んで岡星隊員と合流すると、慎重かつ急いでこの場から出来るだけ離れる事を決断しました。私達は一度フォレストキングのいた場所を振り返ると姿勢を低くしたまま森を進んでいきました。暫く進むと轟音と共に暖かい霧が立ち込めてきた時の私達の安堵を何と説明したらいいことやら!少なくとも何者かから害される危険が去った事を意味するのですから。というのはここから先は熱の大河と呼ばれる超高温の川があり、私達のいる地点ではそれは滝となっているのですが、これを降りていく必要があるのです。この死の川にプランクトン以上の生物はいないというのがオリエンテーションでの報告でした。とはいえオリエンテーションで報告されていないトカゲモドキやあの不気味な半透明の原住民に出会った私達ですから、とりあえず可能な限り滝から離れた位置でザイルを使って降りていく事に決めました。もちろん、滝の様子からは目を離さないというのは言うまでもない事でしたが。崖の高さは目も眩むばかりで滝の終点は私達の位置からは見えません。
「落ち着いて訓練通りにやればいい」隊長が励ましてくれたものですから私は、気恥ずかしさから一番乗りを名乗り出て滝を降りて行きました。暫くの間は体の左側が熱湯の熱で温められる以外は特に問題はありませんでした。しかしいくら事前に訓練を受けているといっても体力・気力には限界があります。なんせこちらはこの世界に来てから生きた心地がした事など一度たりとも無かったのといくら降りても一向に滝つぼが見えてこない事への焦りと一種の無力感から3人とも疲弊していました。それにいつ何時滝の中から未知の生物が口を開けて出て来ないとはいいきれないのですから。時折無事を確認する合図の他には水音しかしない孤独と想像を絶する疲弊が頂点に達した時、運よく3人揃って休める程の広さの岩棚を見つけた時、私は心底ほっとして体を横たえたものです。しかし、今考えてみれば死神が私達を見逃すはずが無かったのです。私は心と体の疲労から手足を投げ出して仰向けに寝っ転がって落ちてゆく熱湯の塊を逆さに眺めていました。すると忘れもしない、あのガイコツのような半透明の原住民が大きな落ちくぼんだ目をこちらに向けて右側臥位で頭から流れてゆくではありませんか!!そいつは一瞬で私の視界から消え去りましたが、私の心に言いようのない恐怖と嫌悪感を呼び覚ますには十分でした。私は叫び声を上げ、もう少しで岩棚から落下しそうになりました』
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