異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

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3章 候補者は4人

21 捜索隊の真実⑧ 最後の関門・最大の悲劇①

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 『私の叫び声に隊長と岡星隊員は眠りから目を覚まされたと見え、物凄い勢いで飛び起きると何事かと周囲を見回しました。私が先ほど見た物を報告すると「森のどこかに彼らの集落があって誤って落ちたのかもしれない」という隊長の意見に私は内心では同意しかねました。あの目は事故で落ちた被害者でなく紛れもない追跡者のものだったと。しかしそれなら何でその場に留まらず流れて行ってしまったのだと言われたら反論が出来ないのでした。
「さあ、降りよう。少しずつだが終わりは近づいている。私はそう信じている」徳長隊長の励ましで私達は再び熱湯の瀑布を降り始めました。滝は陽光に反射してまぶしく銀色に輝き、この世界の神秘から私達の目を背けさせようとしている様でした。それから実に1日かけてようやく私達は滝の終点にたどり着いたのでした。「中に誰かいます!」岡星隊員が私達が入る予定の滝の裏の洞窟の入口を見て小さな叫び声を上げました。私と隊長には見えませんでしたが彼女はそのスキルのおかげで見えるのです。隊長は何人いるか、どの位先にいるのかを詳しく尋ねました。「1人だけのようです。でももう1kmは離されていると思います」その報告で隊長は洞窟への突入を決めました。数の上で有利だと悟ったのでしょう。「そいつの位置を逐次監視するように。では出発!」こうして私達の旅の最後の関門、逆流の地下河川の洞窟へと入って行ったのです』

『この洞窟には一本の大きな川がうねりながら流れているのですがこれが自然の法則を無視して下から上へと氷のような冷たい水を地上へ運んでいるのです。洞窟内は各所に点在する何か未知の発光する鉱石でほの明るく、視界の確保という点では大森林よりはマシでした。といって冷気の立ち込める急な滑りやすい斜面で足を滑らせたら人間など1分で死んでしまうという点で危険である事には変わらなかったのですが』
ここで丹下景勝氏は口をつぐんで俯いてしまった。
「何があったか話したまえ。君はその義務がある。その中かね?それともその洞窟の探検が終わってからかね?3人でのいざこざか何かで君1人が帰ってくる事になったいきさつは?」
真龍警部が叱責とも侮蔑ともあるいはその両方ともいえる声音で景勝氏に話しかける。
「違います!!もっと・・・・・もっと恐ろしい事です!!奴らは最初から、いや、順を追って説明しましょう。岡星隊員や徳長隊長の名誉の為にも」

意を決したように景勝氏は話し始めた

『異変は洞窟を2kmほど歩いたほどの大きく川がカーブしている地点で起こりました。ここまで来ると先ほど言った未知の発光とは別のオレンジ色の光が洞窟の奥から湧きだしていました。その暖かな光を目にした徳長隊長の雰囲気が一変しました。彼はいきなり目の前にいた岡星隊員をその凍える水の中に突き飛ばしたのです。「あっ!何をするんです!」
私は隊長を非難するより岡星隊員を助けようと坂道を駆け上がりました。岡星隊員は少し上流の突き出た岩に引っかかってそれ以上流されませんでしたが短時間とはいえ非常に冷たい水の中にいたのは命の危険に関わる事でした。私は彼女を助け起こそうと手を伸ばししました。が、岡星隊員の両手は私の手ではなく首をガッシリと締め上げてきたのです!!」
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